イタリア人が経営するワインバー 中目黒「クランデスティーノ41」

ワイン担当のダニ(左)と料理担当のグラ(右)、そのおもてなしはさすがのイタリア流。
ワイン担当のダニ(左)と料理担当のグラ(右)、そのおもてなしはさすがのイタリア流。

単に語感がいいから「クランデスティーノ」という名前に決めた、というのはオーナーの一人「ダニ」ことフィレンツェ出身のDaniele Greco(ダニエレ・グレコ)。フィレンツェ市内のホテル・バーなどで勤務後来日、輸入業などに携わったキャリアを持ち日本語も堪能だ。もう一人はアレッツォ出身のGraziano De Angelis(グラッツィアーノ・デ・アンジェリス)、通称「グラ」。

このダニ&グラ・コンビが「クランデスティーノ 41」の主役だ。おもにダニがワインを担当し、カウンター奥の厨房で料理を作るのがグラの担当だが、手が空いている時なもちろんグラもカウンターでワインを注ぎ、サーブしてくれる。

メニューからも伝わるイタリアならではのユーモア

イタリアのオステリアでよく見られるベルケル社のスライサーで切り分けるのは麻布十番フィオルディマーゾの生ハムやサラミ。
イタリアのオステリアでよく見られるベルケル社のスライサーで切り分けるのは麻布十番フィオルディマーゾの生ハムやサラミ。
日替わりメニューから、この日はヴェネツィア風盛り合わせ前菜チケーティをチョイス。
日替わりメニューから、この日はヴェネツィア風盛り合わせ前菜チケーティをチョイス。

この日飲んだのはProsecco, Sauvignon Blanc, Sangiovese, Pinot Neroなどだが、クラフトビールやオリジナルスプリッツ(¥800)も充実している。

例えばアマーロ+プロセッコ=Amaritz(アマリッツ)、ランブルスコ+アペロール=Spritz Rosso(スプリッツ・ロッソ) 、アペロールとペローニ=Pero Peroni(ペロ・ペローニ)などなどネーミングも洒落ているではないか。料理のオーダーが入ると、グラはカウンター奥の通右房に向かう。麻布十番フィオルディマーゾのチーズとサルーミをBerkelで極薄にスライスしてくれるタリエレ・ミスト(¥800〜)は、シンプルながらもやはりこうした定番つまみはクオリティが肝心、ということを再認識させてくれる。

中部イタリアの名物、ハーブを詰めた豚の丸焼きポルケッタ(¥1500)もワインにあわないはずがない。だが白眉は自家製の多加水、長時間発酵のピンサだ。

ダニとグラの共同作業による特製のピンサ。さっくりしたクリスピーな生地がなんとも香ばしく、切り分けて一口サイズのフィンガーフードに。
ダニとグラの共同作業による特製のピンサ。さっくりしたクリスピーな生地がなんとも香ばしく、切り分けて一口サイズのフィンガーフードに。

メニューには「ピッツァとピンサの中間のようなクランデスティーノ・オリジナル生地」とある。ピッツァとはもちろんナポリのピッツェリアで名高いイタリア人の大好きなソウルフードだが、ピンサとはローマでよく食べられるよりクリスピーなタイプの生地でピッツァというよりもよく焼きのフォカッチャに近い。

「クランデスティーノ」のオリジナルは、モルトやライ麦、全粒粉をブレンドして多加水、長時間発酵で作るので生地はさくさく、軽くて実に香ばしい。今回試したのはサルシッチャ、スカモルツァ、野菜のマリネのCelafaremo(チェラファレーモ)=俺らでもできるさ(¥1500)。サルシッチャとチーズの組み合わせはフィレンツェのエノテカ・ヴォルポ・エ・ルーヴァの名物クロスティーニを思わせ、これもまたワインに実によく合うのだ。

ランブルスコとアペロールを使ったオリジナルの食前酒スプリッツ・ロッソ。

今回は試していないがタップ・クラフトビールやクラフトジンコーナーにはおなじみイタリアのクラフトジン「Ginepraio(ジネプライオ)」や「Old Sailors Coffee(オールドセイラーズ・コーヒー)」などもある。さらには少量生産、超レアなイタリアのクラフト・ウイスキー「PUNI(プニ)」もあった。

これはトレンティーノ・アルト・アディジェ州、メラーノのさらに奥のスイス国境にあるウイスキー・メーカーで、バーボン、シェリー、マルサラなど異なる樽で熟成させた4タイプがある。

今回試したのはバーボン樽とペドロ・ヒメネスのシェリー樽で4年熟成させた「SOLE(ソーレ)」。香り高く、なめらか、チャーミング、軽いベリーやハチミチ、オレンジのフレーバー。噂通り素晴らしい逸品で、より長いエイジングのVINA、ALBAはWhisky Bible2020でそれぞれ94、95点という高得点をマークしている。

おともはアレッツォのチョコレートメーカー「Vestri(ヴェストリ)」のチョコラティーニ。「クランデスティーノ 41」はイタリアのレア物に出会える確率も高く、今後リピート必至のマイ・ワイン・バー、となるか。

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この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。