世田谷区太子堂。三軒茶屋駅を起点に南口の飲み屋が軒を連ねる三角地帯は、若い世代を中心に賑わっている。一方で主に北口に広がる太子堂は、比較的落ち着いた雰囲気を保つ。

北口を出て茶沢通りを少し進むと、左手奥に小さなスナック街が形成されている。

スナックやバーなどが入居するビルがいくつかある
スナックやバーなどが入居するビルがいくつかある

三軒茶屋駅北口にこんな場所があったのか。少し意外に感じながら、今夜はこのスナック街で最も老舗、オープン20年を迎える『M&M』へ足を運ぼう。

多数のウイスキーや焼酎の銘柄を取り揃える

扉を開くと、9席のカウンターの奥に6名ほどが座れるボックス席がある。今宵の美女である控井さんはとまり木に座り、居合わせた御仁と早速盛り上がっている。

控井さんがフレンドリーなのか、店の雰囲気がそうさせるのか、初対面でも会話が盛り上がる
控井さんがフレンドリーなのか、店の雰囲気がそうさせるのか、初対面でも会話が盛り上がる

こちらも追いつこうと、バックカウンターに目をやる。一般的なスナックよりもウイスキーや焼酎のボトルが多く、バックバー一面にキープされている。

すべてボトルキープされているもの。この店が多くの人から愛されているのがわかる
すべてボトルキープされているもの。この店が多くの人から愛されているのがわかる

ハイボールの流行からウイスキーを嗜む客が増え、また入手できれば、できるだけ導入するという真奈美ママの方針でウイスキー・焼酎は各12〜13銘柄を揃えているという。うぅん、迷う。優柔不断になるくらいなら、と控井さんが飲んでいる白州のハイボールに倣う。

「本当はカシスソーダや梅酒などの甘いお酒が好きですが、糖質を考えて、最近はハイボールが多め」と話す控井さん
「本当はカシスソーダや梅酒などの甘いお酒が好きですが、糖質を考えて、最近はハイボールが多め」と話す控井さん

控井さんは月に1度、友人と一緒にスナックに訪れている。1杯目が到着するまで、控井さんがスナックに通い始めた経緯を訊く。

「子どもの頃、父に連れて行ってもらっていたせいか、もともとスナックが好きなんです。若い頃はワインバーとかにも行っていましたけど、肩肘張って疲れちゃうし、カラオケボックスだと味気ない。年齢を重ねてスナックに戻ってきた感じです」

ハイボールを出す真奈美ママ。「ハイボールはサントリーのザ・プレミアムソーダで作るとおいしいのよ」とにっこり
ハイボールを出す真奈美ママ。「ハイボールはサントリーのザ・プレミアムソーダで作るとおいしいのよ」とにっこり

今ではスナックビギナーの友人をデビューさせることもあり、今宵のパートナーとして心強い。

北九州出身の真奈美ママは、元筆耕者

白州のハイボールとともに出されたのが、たくわんと高菜漬け。

本場の高菜漬けは辛味もなく、あっさりしている
本場の高菜漬けは辛味もなく、あっさりしている

真奈美ママは北九州出身で、九州を故郷とする常連も多いため、九州にまつわるお通しを出すようにしていると言う。たくわんを口に運ぶと、甘みが強く、東京で食べるものとは違うと感じる。

北九州出身の真奈美ママが、どうして三軒茶屋でスナックを始めることになったのか、尋ねると意外なエピソードが出てきた。

若々しい真奈美ママ。教えてくれた年齢に驚いた!
若々しい真奈美ママ。教えてくれた年齢に驚いた!

真奈美ママは地元で習字教室の先生や筆耕者として生計を立てていた。

「歌手としてスカウトされた娘が上京して、歌手を目指しながらバーを始めたんですね。一人じゃ大変だから、と私も東京に出て手伝うようになりました」

真奈美ママが上京して3年後、この地に『M&M』をオープン開店する。

店名は真奈美ママと娘さんの頭文字から名付けられている
店名は真奈美ママと娘さんの頭文字から名付けられている

数年して娘さんは帰郷してしまったが、真奈美ママは今も一人で店を切り盛りしている。どうして娘さんと一緒に帰らなかったのだろうか。

「やっぱり娘を自立させなくちゃ、と思って。そうは言いながら、しょっちゅう帰省していますけどね(笑)」

後編では常連グループとカラオケで盛り上がる。

【M&M】

問い合わせ先

  • M&M TEL:03-3795-5564
  • 住所/東京都世田谷区太子堂4-26-2 サンフラワーこしみず101 
  • 営業時間/20:00〜26:00
    定休日/土・日・祝日
    メニュー/チャージ(お通し、アイス、水含む)¥5000、瓶ビール¥1,000、ハイボール¥1,000、焼酎ボトルキープ¥5,000〜、ウイスキーボトルキープ¥6,000〜
この記事の執筆者
フリーランスのライター・エディターとして10年以上に渡って女性誌を中心に活躍。MEN'S Preciousでは女性ならではの視点で現代紳士に必要なライフスタイルや、アイテムを提案する。
PHOTO&MOVIE :
小倉雄一郎