このささやかなスナック街で一番の古株となった『M&M』。そもそもどうして三軒茶屋に店を構えようと思ったのだろうか。
この店に訪れる女性客が多い理由
「当時、娘が渋谷でバーをしていたので、その近くにしようと思っていました。三宿は高級感があったので、庶民的な三茶に決めて今に至るって感じですね」
今や三軒茶屋は若者が集まる街という印象が強い。
「確かに三角地帯は若い人が多いですけど、こちらのエリアは大人が多く、棲み分けができていると思います」
真奈美ママが「三茶の並木通り」と笑いながら称するだけあって、このゾーンは落ち着いた雰囲気が漂う。だから、女性一人でも安心して来店できるのだろう、『M&M』には昔から女性の一人客が多いという。女性客は真奈美ママに悩み相談をし、女性客同士が店で仲良くなるのが典型だそうだ。
そのゆったりとした空気感は、若い世代にも伝播している。ママ曰く
「スナックが流行しているせいかしら、最近は20代のお客さんも増えています」
とのことだ。
常連グループに混じって、初めての曲を歌う!?
ママとの話に興じていると、奥にいた常連サラリーマングループに控井さんが手招きされた。物怖じせずに、あっという間に溶け込む控井さんが頼もしい。
これも控井さんの日頃のスナック通いの賜物だろうか、自己紹介などはなく、各々が思いつくまま話し、流れていく。
ひとしきり盛り上がったあと、控井さんに常連の一人からカラオケをリクエストされた。何を歌おうか、迷っている控井さんをよそ目に常連は選曲。画面に現れたタイトルは松山千春の『大空と大地の中で』。
「えっ、歌ったことない!」と、戸惑う控井さんをよそ目に曲は進み、恐る恐る歌い始める。
初めて歌うため、いまいち歯切れの悪い控井さんを見かねて同曲を持ち歌とする常連の御仁が朗々と歌い始める。持ちつ持たれつではないが、押し付け合わないのが大人のスナックの楽しみ方だ。その見本を目の前で見せてもらえた。
控井さんにこの店の魅力を尋ねた。
「ひっきりなしにお客さんが訪れてて、本当に人気店。真奈美ママはすれてなくて、それが新鮮でいい! 女性客が多いから、女一人で遊びに来ても肩身が狭くないですね」
ふと現れる小さなスナック街。若々しい真奈美ママに会いに、遊びに行ってはいかがだろうか。
【M&M】
問い合わせ先
- M&M TEL:tel:03-3795-5564
- 住所/東京都世田谷区太子堂4-26-2 サンフラワーこしみず101
- 営業時間/20:00〜26:00
定休日/土・日・祝日
メニュー/チャージ(お通し、アイス、水含む)¥5000、瓶ビール¥1,000、ハイボール¥1,000、焼酎ボトルキープ¥5,000〜、ウイスキーボトルキープ¥6,000〜
- TEXT :
- 津島千佳 ライター・エディター