2020年で第90回を迎えたジュネーブ自動車ショー。今回はショーが開かれず、オンラインでの発表のみと、かなりユニークな形態になった。変わらないのは、場所がらもあって、ずっとラテン系の自動車メーカーの参加が多いことだ。

BEVスポーツカーにも注目!

今回興味ぶかかったのは、スポーツカーと電動車、というふたつの大きなトレンドを、イタリアとフランスのメーカーがしっかり押さえていたこと。

ジュネーブ自動車ショーの例年の特徴ともいえるのが、小さな規模のメーカーの出展だ。“こんなクルマがあるんだ!”と会場を歩き回りながらの発見がまことに楽しいショーである。

今回はあいにく、オンライン化ゆえに小さなメーカーの発表はごく限られてしまったものの、BEV(バッテリー駆動電動車)スポーツカーの出展がいくつもあったのがおもしろかった。

アルファロメオはサーキット志向の「ジュリアGTA」なるスポーツセダンを発表。1965年のレースモデル「ジュリア・スプリントGTA」から採ったモデル名だ。

最高出力は540馬力もあるいっぽう、車名の「A」が「Alleggerita(軽量)」を意味しているとおり、車重はベースモデルの「ジュリア・クワドリフォリオ」より約100キロ軽量化されている。「GTAm」にいたっては(4ドアなのに)2シーターだ。

情熱のジュリア!

「アルファロメオ・ジュリアGTA/GTAm」は500台限定生産
「アルファロメオ・ジュリアGTA/GTAm」は500台限定生産
「ジュリアGTA」のレーシーなイメージのダッシュボード
「ジュリアGTA」のレーシーなイメージのダッシュボード

スポーツカーでは、1940年代にスタートしたイタリアのスポーツカーメーカー「バンディーニ」の名を復活させたBEV「ドーラ」がある。デザインと企画はGFG。ジョルジェットとファブリッツィオのジュジャーロ親子が立ち上げた会社だ。

いっぽう、ジュジャーロと同様、カロッツェリアからメーカーへと転身をはかるのがピニンファリーナだ。デザイン部門と分かれたアウトモビリ・ピニンファリーナは、2019年のジュネーブで、創業者のファーストネームをとったBEVスポーツ「バティスタ」をローンチした。

1000馬力を超えるこのモデルに、20年はわずか5台限定という「バティスタ・アンニベルサリオ」を追加発表。1900馬力で最高速350キロというバティスタを、よりエアロダイナミックに仕立てたボディが特徴である。

モダン・スポーツのコンセプトカー

1950年代のバンディーニのスポーツカーのコンセプトを現代に、とジュジャーロの指揮で開発されている「バンディーニ・ドーラ」は90キロワット時のバッテリーによる全輪駆動のBEVコンセプト
1950年代のバンディーニのスポーツカーのコンセプトを現代に、とジュジャーロの指揮で開発されている「バンディーニ・ドーラ」は90キロワット時のバッテリーによる全輪駆動のBEVコンセプト

わずか5台のスペシャルなピニンファリーナ

アウトモビリ・ピニンファリーナが150台生産予定のBEVバティスタ・シリズで5台だけ限定生産される「バティスタ・アンニベルサリオ」
アウトモビリ・ピニンファリーナが150台生産予定のBEVバティスタ・シリズで5台だけ限定生産される「バティスタ・アンニベルサリオ」

かわいいフィアットも最新型に!

電動車の分野では、フィアットが「チンクエチェントBEV」を欧州でお披露目。大きく開くソフトトップという特長を持ったモデルで、スタイリングコンセプトは従来型から大きく離れてはいない。中身がとりわけ新しいのだ。

電気でトコトコ元気に走る!

42キロワット時のバッテリーを搭載するフィアットのBEVが新型「チンクエチェント」として登場
42キロワット時のバッテリーを搭載するフィアットのBEVが新型「チンクエチェント」として登場

もう1台の電動車が、グループPSA(プジョー)参加のDSが発表したラグジュリーセダン「DS9」である。3ボックススタイルのオーソドクスなフォルムながら、随所でツイストのきいたデザインが観られるところが新しい。

DSの高級ラインといえば、それこそ1955年のシトロエンDSを連想するが、グローバル市場を考えると、おおきな冒険は出来なかったのかもしれない。ダッシュボードはDS7クロスバックなどでおなじみのデザインテーマが採用されている。

プレステージ性を強めるDS

全長4930ミリと余裕あるサイズのセダンとして「DS9」が発表された(中国工場で生産予定)
「DS9」のインテリアは従来のDS7クロスバックなどを彷彿させる
「DS9」のインテリアは従来のDS7クロスバックなどを彷彿させる

アルピーヌには新しい色の選択が!

「A110」のパーソナライズ化を進めるアルピーヌは「カラーエディション2020」を発表した
「A110」のパーソナライズ化を進めるアルピーヌは「カラーエディション2020」を発表した
この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。