本来だったら4月25〜29日に開催されていたスイスを代表する新作時計のエキシビジョン『ウォッチ&ワンダー ジュネーブ』。カルティエ、ヴァシュロン・コンスタンタン、A.ランゲ&ゾーネ、パネライ、IWCなどを擁するリシュモングループが核となる世界で最もラグジュアリーな時計の祭典は、新型コロナウイルスの影響で当然中止となった。

そのため今年はオンラインでの発表となり、各メゾンがこの春に向けて情熱をかけて製作した珠玉の新作の情報が続々と解禁されている。

メンズプレシャスではこれから、メゾンごとに、大人の男の手元に相応しい、或いは芸術的な観点から見逃せないタイムピースをピックアップしてお届けしよう。

どんな状況でも、どんな時代でも、時は誰にでも平等に刻まれていくかけがえのないものだから。

超絶コンプリケーションからデイリーラグジュアリーまで!多彩な顔ぶれの新作を揃えた名門の底力

ヴァシュロン・コンスタンタン『オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン』
ヴァシュロン・コンスタンタン『オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン』

2020年、創業265年を迎えた「ヴァシュロン・コンスタンタン」。そのブランド名にいつも冠されるのは、「世界最古のマニュファクチュール」という枕詞だ。

創業年だけでいえば、1735年に誕生した「ブランパン」の方が歴史が古いということになるが、1970年代、クオーツ時計の誕生によるいわゆる「クオーツショック」の煽りを受けて10年あまりの間、休眠。よって、創業以来一度も時計製造を止めたことがない「ヴァシュロン・コンスタンタン」が、広く「世界最古のマニュファクチュール」として認められている。

ひと口に265年と言うが、その間一度も時計製造を止めず、また、ジュエリーや皮革製品といったプロダクツに手を広げず、ただただ真摯にひとつの道を貫き、いつの時代も超一流であり続けているというのは偉業としか言えない。

前述のクオーツショックはもちろん、何度かの戦争や世界的な不況といった危機を乗り越え今に至ったジュネーブの名門は、2020年、さらなる高みに挑んだ意欲作を揃えた。

洗練のラグジュアリー・スポーツウォッチ・コレクション『オーヴァーシーズ』に、初めてのスケルトンモデルが登場!

『オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン』

ヴァシュロン・コンスタンタン『オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン』 ●自動巻き ●ピンクゴールドケース×ピンクゴールドブレスレット ※アリゲーターとラバーの替えストラップ付き ●ケース径/41.5㎜ ※2020年9月発売予定、ブティック限定モデル 時価 参考価格 ¥13,280,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)
ヴァシュロン・コンスタンタン『オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン』 ●自動巻き ●ピンクゴールドケース×ピンクゴールドブレスレット ※アリゲーターとラバーの替えストラップ付き ●ケース径/41.5㎜ ※2020年秋ごろ発売予定、ブティック限定モデル 時価 参考価格 ¥13,280,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)

「世界最古」の歴史を誇りながら、そこにあぐらをかかず、常に時代に呼応しながら進化を続けている「ヴァシュロン・コンスタンタン」の現在を象徴するのが『オーヴァーシーズ』。

近年のラグジュアリー・スポーツウォッチブームを牽引してきたこのコレクションは、ブレスレットやストラップを簡単に付け替えることができる「インターチェンジャブル」システムを、この分野でいち早く取り入れたことでも大きな話題を呼んだ。

今年はこのコレクションに、初めて、全体的にオープンワークを施したムーブメント自体がデザインの主役を演じるスケルトンモデルを発表! しかも高精度のパーペチュアルカレンダーやムーンフェイズといった複雑機構を搭載したコンプリケーションで、まさに名門の矜恃に溢れる迫力の仕上がりとなっている。

ムーブメント「キャリバー1120QPSQ」
ムーブメント「キャリバー1120QPSQ」

ムーブメントは、極めて高い精度と性能、信頼性を誇る「キャリバー1120QPSQ」を採用。ケースバックもスケルトンで、メゾンの象徴「マルタ十字」を模したローターも大胆にオープンワークにするなど、芸術的なウォッチメイキングの粋を愛でることができる。

西暦2100年3月1日まで、カレンダー表示もムーンフェイズ表示も人為的な修正が全く必要のないパーペチュアルカレンダーを搭載しながら、ケース厚8mmという薄さを実現。

究極のエレガンス・コレクションに、洗練と迫力のコンプリケーションが登場!

『トラディショナル・トゥールビヨン・クロノグラフ』

ヴァシュロン・コンスタンタン『トラディショナル トゥールビヨン・クロノグラフ』●手巻き●ピンクゴールドケース×ピンクゴールドブレスレット●ケース径/42.5㎜ ※2020年8月発売予定 時価 参考価格 ¥22,800,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)
ヴァシュロン・コンスタンタン『トラディショナル・トゥールビヨン・クロノグラフ』●手巻き●ピンクゴールドケース×アリゲーターレザー●ケース径/42.5㎜ ※2020年秋以降発売予定 時価 参考価格 ¥22,800,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)

まさに「伝統」と「革新」が融合した「ヴァシュロン・コンスタンタン」のウォッチメイキング。その「革新」を具現化したのが前出の『オーヴァーシーズ』とするなら、「伝統」を担うのが、その名の通りこの「トラディショナル」コレクションだろう。

1755年から脈々と継承されてきた、ジュネーブの卓越した時計製造の伝統と、類稀なるクラフツマンシップが結実した「トラディショナル」は、時計愛好家の間でも特別な存在として輝き続けている。

今年はこのコレクションから、トゥールビヨンと、リュウズに収められたプッシュボタンひとつで時間を計測することができる「モノプッシャークロノグラフ」をカップリングしたコンプリケーションが生まれた。

時計本来の美が際立つシンプルなフォルムに、12時位置のトゥールビヨンのキャリッジが際立つ静謐な迫力は、「ヴァシュロン・コンスタンタン」ならでは! レイルウェイのミニッツトラック、ドーフィン式の時針と分針など、「トラディショナル」コレクションのデザインコードの美しさを改めて印象づける。

セピアブラウンを纏って新たな表情を宿した、日常に寄り添うクラシカル・モダン

『フィフティーシックス・オートマティック』

ヴァシュロン・コンスタンタン『フィフティーシックス・オートマティック』●自動巻き●ピンクゴールドケース×カーフストラップ●ケース径/40㎜ ※2020年夏ごろ発売予定、ブティック限定モデル 予価 ¥2,040,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)

2020年の新作の多くが「時価」というなか、明確な予価がつけられている『フィフティーシックス』は、現実的な憧憬を誘うクラシカル・モダンなコレクション。

メゾンの豊富なアーカイブの名品、1956年製の歴史的モデルに現代的な解釈を加えたこのコレクションに、セピアブラウンの新色ダイヤルが加わった。

コレクション初年度はシルバー文字盤を発表し、昨年新色として「ぺトロールブルー」が登場。そして今年はブラウンを纏ったことでガラリと表情を一新させた。

このように、基幹となる個性豊かなコレクションから、それぞれ異なるアプローチの新作を発表した「ヴァシュロン・コンスタンタン」だが、最大のニュースは、メゾンの歴史上最も複雑な腕時計となる驚愕のコンプリケーションの開発の成功だろう。

実に24もの複雑機構を搭載した腕時計は、表裏リバーシブル。つまり両A面という非常にユニークな発想により叶えられた。

表ダイアル/●表ダイヤル ●時刻表示 ●クロノグラフ・スプリットセコンド ●パーペチュアルカレンダー
表ダイアル/●表ダイヤル ●時刻表示 ●クロノグラフ・スプリットセコンド ●パーペチュアルカレンダー
裏ダイヤル/太陽時や均時差、日の出・日の入り、昼夜の長さ、月齢と月相の表示などを含む天文表示機能。その他の複雑機構/●トゥールビヨン ●ミニッツリピーター
裏ダイヤル/太陽時や均時差、日の出・日の入り、昼夜の長さ、月齢と月相の表示などを含む天文表示機能。その他の複雑機構/●トゥールビヨン ●ミニッツリピーター

『“ラ・ミュージック・デュ・タン” レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・スプリットセコンド・クロノグラフ−テンポ』

ヴァシュロン・コンスタンタン『“ラ・ミュージック・デュ・タン” レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・スプリットセコンド・クロノグラフ−テンポ』●手巻き●ピンクゴールドケース×ピンクゴールドブレスレット●ケース径/42.5㎜ ※世界限定1本 時価(ヴァシュロン・コンスタンタン)
ヴァシュロン・コンスタンタン『“ラ・ミュージック・デュ・タン” レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・スプリットセコンド・クロノグラフ−テンポ』●手巻き●ピンクゴールドケース×アリゲーターストラップ●ケース径/50㎜ ※世界限定1本 時価(ヴァシュロン・コンスタンタン)

2016年、ある顧客の「世界で最も複雑な時計を」というオーダーに応え、57もの複雑機構を搭載した懐中時計を発表し、大きなインパクトをもたらした「ヴァシュロン・コンスタンタン」。その偉業は3名の時計師からなる専門チームが約8年の歳月をかけて達成された。

その懐中時計よりはるかに小さい「腕時計」にこれだけの複雑機構を搭載するには、同等の技術力と時間を要するだろう。正確な情報はリリースされていないが、2020年の春に発表するために、おそらく何年も前にスタートしたであろうこのプロジェクトは見事に結実した。

世界中の誰も予想ができなかったことが起こっても、「ヴァシュロン・コンスタンタン」のジュネーブ本社では、今この瞬間も未来を見据えて時計製造が続けられている。

美しい時計が、誰かのかけがえのない時間を紡いでいくことを信じて。

問い合わせ先

ヴァシュロン・コンスタンタン

TEL:0120-63-1755

この記事の執筆者
東京都出身。本格時計のムックの編集、執筆を手掛けたことをきっかけに機械式時計の魅力に開眼。日本の女性誌において、機械式時計の魅力を啓蒙した第一人者として知られる一方で、男性誌や専門誌にも数多く寄稿。メンズウォッチを語れる稀有な女性ジャーナリストとして多方面で活躍中。スイスの時計フェアの取材歴は20年と、業界屈指のキャリアを誇る。一方、持ち前の好奇心で、趣味である旅や食に関する執筆もしばしば展開している。