最高の自己演出は一枚の「白シャツ」から!
時代を超えて愛される白シャツは、着る人自身のキャラクターを色濃く反映するもの。ファッションジャーナリストの藤岡篤子さんが、時代の気分を取り入れた一枚から、記憶に残る白シャツ美人まで考察します。
ラッフルを大胆にあしらった美しい存在感を放つ白シャツ。定番アイテムだからと、シンプルなデザインだけに縛られず、この春は、おしゃれの新境地へと導いてくれる、個性豊かな白シャツを味方につけたいものです。
時代の空気を取り入れた白シャツをさらりとまとえば、自分らしさが浮かび上がる
白いシャツが究極の一枚であることはいうまでもないだろう。だれでも一枚はもっており、おしゃれを目指す女性が最初に袖を通す一枚でもあり、モードの達人が着る最後の一枚であるかもしれない。
トラッドな定番デザインから最近はバラエティが広がり、チュニック丈など長めの丈を外に出してアウター風に着こなしたり、逆にショート丈をウエストから浮かしてはおってみたり、ブラウスとの垣根を取り払うように、フリルやボウタイ使いもよく目にするようになった。
装飾化が進むなかで、ドレスシャツに見られるようなピンタックや、ミニフリルのバリエーションなどなじみのある飾りは、もはや定番となった。何をもってしても「白いシャツ」は普遍の「白シャツ」の魅力を放つのだ。
清潔で、みずみずしく、キリッとした品がある。その一方で、そでをまくり、第一ボタンを外すなどの、ラフな着こなしには、健康的でグラマラスな魅力が漂う。
ジェンダーレスという言葉が一般的になる前から、シャツは「男前」の、つまりハンサムウーマンが着るシンプルベーシックの代表であり、メンズから借り着しても、その大きさが、ときにはセクシーに、このうえもなく女っぽさを強調したりするのだ。だから着こなし上手な女性はシャツを自分のものにしている。
故ダイアナ元妃は、チノパンと合わせ、サングラスを胸元に垂らして、さりげなく、カジュアルに。まさに自分スタイルだ。往年の女優たちにも愛されてきた。それは、甘いフェミニンなドレスで女らしさをアピールする以上に、シャツ姿は、親しみやすさとともに、賢明さや、知性まで感じさせたからだ。
亡くなってしまったが、ジョン・F・ケネディJr.の妻キャロリン・ベセットがイブニングに選んだ白シャツ姿が忘れられない。夫のブラックタイ姿と寄り添うように、白いシャツと黒のボトムを選んだキャロリンは、カラフルに飾り立てたイブニングドレスが集うなかで、どれだけ輝いて見えたことだろう。
白黒の研ぎ澄まされたシャープさとブロンドの華奢なたたずまいとの極上のマッチング。醸し出されるモダンな美しさを、スポーティなアメリカンエレガンスとはこのことかと、しばらく見惚れてしまったことを思い出す。
白いシャツは、シンプルであるだけに、だれにでも公平な存在である。だけどその奥行きとキャラクターの陰影を引き出すのは、着る人しだいだ。まるで演じ手が身につける衣装のように、これほど着る人によって表情を変えながら、その人そのものになってくれる服はほかにはないのではないだろうか。
今なお色褪せない…タイムレスな魅力が宿る白シャツで記憶に残る美しさを
■1:キャロリン・ベセット=ケネディ(Carolyn Bessette-Kennedy)
白シャツや黒のタートルネックニットなど、シンプルなアイテムを愛したキャロリン。カシュクール風に白シャツを着こなし、デコルテを大胆にのぞかせれば、ジュエリーをつけずとも華やかです。
■2:ローレン・ハットン(Lauren Hutton)
『VOGUE』の表紙を幾度も飾り、モデル&女優として、精力的に活動する彼女。ワーク風の大きめポケットがあしらわれた白シャツをさらりと着こなすスタイルに、自信というオーラが際立って。
■3:ダイアナ・フランセス(Diana Frances)
白シャツをまとい、ベージュでまとめた上品なカジュアルが、彼女の聡明な眼差しを引き立てます。胸元にあしらったサングラスや、袖口を無造作にたくし上げた、ダイアナ流の着こなしが素敵。
※掲載した商品は税抜です。
問い合わせ先
- TEXT :
- 藤岡篤子さん ファッションジャーナリスト
- BY :
- 『Precious5月号』小学館、2020年
- PHOTO :
- 唐澤光也(RED POINT)
- STYLIST :
- 髙橋リタ
- EDIT&WRITING :
- 川口夏希、遠藤智子・古里典子(Precious)
- 写真提供 :
- AFLO