ポルシェ「911」は万能のスポーツカーだ。プラス2のシートを備え、ボディ後部にエンジンを積む代わり、ボンネットの下には広大なトランクをもつGTとしての素養。抜群のトラクション性能は、スプリントレースだけでなく、ラリーにも活用されてきた。そんな頼もしいクルマのキャラクターを、新鮮でどこか懐かしい雰囲気に仕立てたのが、「ルーフ」のコンセプトカーだ。
ラリーでも活躍した1970~80年代の「911」のイメージが重なる
RUF(以下、ルーフ)オートモビルといえば、ポルシェの持てるポテンシャルを、極限まで研ぎ澄ませ、ストイックなまでに究極の走りを追求するメーカーとして、世界中のスポーツカーファンに知られた存在だ。なにしろここから生み出されるクルマには、ポルシェではなく、ルーフというブランド名が与えられる。創立から81年が経過し、ドイツの自動車工業会メンバーであり、自動車メーカーとして認められているのがルーフなのだ。
そんなルーフにとって、初めてのコンセプトを取り入れたのが、「RUFRodeo Concept」(以下、「ロデオコンセプト」)だ。これまでルーフから登場したコンプリートカーといえば、サーキットを始めとしたオンロードでの走りを極めることを目指したモデルばかり。その点、「ロデオコンセプト」はオフロードの走りでも頂点を目指そうというのが新しい。
オフロードのポルシェといえば1986年のパリ〜ダカール・ラリーを制覇したポルシェ「959」や70年代に活躍した「911 SCサファリ」などがある。意外なようで、実はしっくりくる組み合わせなのだ。
ベースはルーフ「SCR」。見た目は空冷エンジン時代の964型「911」風だが、当然中身は最新。「SCR」のエンジンは自然吸気の4L水平対向6気筒で、最高出力510馬力、最大トルク470Nmを発揮する。さらにミッションは6速MT、車両重量は1250kgという軽量ボディだ。ただし、このスペックが「ロデオコンセプト」も同等であるかは、現時点では不明。
さらにオフロードに対応するために、4WDシステムと前後サスペンションのロングストローク化、そして全地形対応のオールシーズンのタイヤを組み合わせている。まだまだスペック面では不明な部分の多いコンセプトカーだが、外観のデザインは明確にオフロードの雰囲気を確立している。
ラギット仕上げのカーボンボディ
先にも述べたが、見た目は964型風ながら、そのボディは「SCR」と同じカーボンモノコックシャシ-を採用し、いい具合にクラシカルな雰囲気とラリーカーのたたずまいを融合させている。この外観の雰囲気は、アメリカの西部開拓時代をイメージしたもので、ラルフ ローレンに影響を受けたという説明もある(車名そのものはロデオドライブにある路面店にちなむもよう)。
4つの補助灯やスキッドバー、グリルガードなどのオフロード向けパーツを装備したフロントまわり。さらにフェンダーをカバーするようなボディパーツなど、ラギットなイメージを巧みに表現している。その外観の仕上がりは、ルーフの新たな魅力として十分に成立するだけ上質感と雰囲気を持っている。
この、実に魅力的なコンセプトカー、本来であれば、今年のジュネーブモーターショーでコンセプトを発表される予定だった(今季のジュネーブショーは中止)。ルーフはこれまで、発表から発売までの時間がそれほど長くはなかった。ということは、近々正式デビューの可能性大。プライスは? 走りは? その興味は尽きない。
- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター