テスラ「モデル3」は、2013年から日本で発売されている「モデルS」の下に位置する小型のEV。メルセデス・ベンツ「Cクラス」などと同じDセグメントに属する5ドアセダンだ。使いやすいサイズ感とリーズナブルな後輪駆動モデルなどの投入により、テスラを代表する売れ筋モデルとなっている。  

ソフトウェアバージョン10.0による最大規模のアップデートの中身

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エンジンがないぶん、ボンネットはとても低い。
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ボンネット下のトランクは大容量。居住性や積載能力において、EVのアドバンテージは圧倒的だ。

「モデル3」の構成は、後輪駆動の「スタンダードレンジプラス」(511万円)、4WDの「ロングレンジ」(655万2,000円)、そして同じく4WD(テスラではAWDと呼ぶ)の高出力モデルの「パフォーマンス」(727万3,000円)の3グレード。ちなみにこの設定は日本のみ。アメリカでは、後輪駆動も充実している。

日本で受注を開始してから、ようやく1年ほどになる「モデル3」、やはり中心的存在といえばデュアルモーター搭載(前後に2個)の4WD、それも最上位の「パフォーマンス」モデルだ。その動力性能は0~100KM/h加速が3.4秒、最高速が261km/h。1回の充電での航続は最大560km(WLTP推定値)。

今回のテスト車両で一番の注目点は、ソフトウェアがバージョン10.0(以下vr10.0)にアップデートしている点だろう。このvr10.0は“これまでで最大規模のバージョンアップ”として昨年の9月に発表、導入された。もっとも強化されたのはエンターテイメントや音楽など。テスラシアターはセンターディスプレイにNetflixやYouTube、Huluなどを表示することも可能で、映画を始めとした多くのコンテンツを視聴できる。

さらにvr10.0は、オートパイロットも進化させた。例えばクルマを駐車スペースにナビで誘導したり、目的の場所に呼び寄せることもできる「スマートサモン」という機能が追加されている。「モデル3」に限らず、テスラの車は現在のオートパイロット機能を少しずつアップデートしていき、その積み重ねによって完全なる自動運転機能に対応できるハードを備えている点が大きな魅力だ。

第一級のスポーツ性能を備えたセダン

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15インチの大型センターモニターにあらゆる操作を集約。
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シートはとても座り心地がよく、ホールド力も高い。自動車メーカーのエンジニアリングをかなり研究しているのではないだろうか。
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そしてもう一点、クルマとしての走りのパフォーマンスも大きな魅力。テスラのその強烈な加速性能を初めて経験したのは、上のクラスである「モデルS」の「P100D」だった。その0~100KM/h加速は確か2.5秒といわれていたから、ブガッティのハイパーカー「ヴェイロン」と同等。もちろん「モデル3」はさすがにパフォーマンスモデルであっても、そこまでは無理。それでも0~100KM/h加速はポルシェ「911カレラS」(992型)やランボルギーニ「ウラカンLP580-2」といった超一級のスポーツカーに肩を並べる。

高速道路では本線に合流し、フル加速するとあっと言う間に法定速度に達する。加速フィールも独特で、トルクが徐々に立ち上がっていくガソリンエンジンとは違い、一気に最大トルクを発生するモーターのフィーリングは、強烈そのもの。おまけに4輪でしっかりとトラクションを確保しながらの加速には安心感が伴っているから、実に快適なスポーツドライブとなる。

ただし、このモーター特有の加減速の走行感覚は、慣れないと同乗者が車酔いすることもありうる。あくまでも慣れの問題につき、神経質になる必要はないが、はじめは少々抑え気味で走ることをおすすめしたい。もちろん、おとなしく走らせているかぎり、シームレスで滑らかな加減速は、同乗者にもこのうえないラグジュアリーな味として歓迎されるだろう。

快適という点でいうともう一点、コーナリングは重心が低いこともあり、ノーズフラット感を保ちながら、ステアリングを切るとレスポンスよくノーズが切れ込んでいってくれる。このクイックな感じはスポーティな走りばかりではなく、低速走行の市街地などでも実に心地いい感触となって伝わってくる。そしてトラクションの効いたコーナーの立ち上がりでアクセルを踏んでいくと、スムーズに加速態勢に移り、気持ちよくコーナーをクリアできる。速さだけでなく、コーナーも楽しめる第一級のスポーツセダンなのだ。

ただし、あまり楽しんでばかりいると、航続可能距離が思いのほか早く減っていくことには十分に注意しなければいけない。

【テスラ「モデル3 パフォーマンス」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,694×1,849×1,443mm
車両重量:1,847kg
駆動方式:4WD
最高出力:未公表
最大トルク:639Nm
価格:¥7,273,000(税込)

問い合わせ先

テスラ ジャパン

TEL:0120-982-428

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
PHOTO :
尾形和美