1937年に創業した、イタリアが誇るラグジュアリーレザーブランド、Valextra(ヴァレクストラ)。伝統のあるブランドであると同時に、アーティストやクリエイターとのコラボレーションなど、革新的なプロジェクトによって高い評価を受ける存在でもあります。
今回は、この夏から冬にかけて発売される6つのブランドとの大型コラボレーション「エクストラ ミラノ」にフォーカス。CEOやデザイナーたちのコメントを織りまぜながら、全ブランドの注目アイテムをご紹介します!
ヴァレクストラ初の、6ブランドとのコラボレーションプロジェクト「エクストラ ミラノ」
「エクストラ ミラノ」は、ヴァレクストラのCEO、サラ・フェレロさんが発起人となってスタートした大型コラボレーションプロジェクト。ミラノを拠点とするブランドのなかから、国籍、年齢、ジェンダーを超えて集結した6つのブランドにより、今年下半期に順次コラボレーションバッグが発売されます。ここでは、サラ・フェレロさんやデザイナーたちのコメントとともに6ブランドの新作をご紹介します。
「ヴァレクストラは、長年に渡って国際的なデザイナーや建築家とコラボレーションを行ってきました。『エクストラミラノ』は、その延長線上にありながら、より新たなステップへと踏み出すプロジェクトです。
このプロジェクトに参加してもらったのは、いずれもクリエイティブな起業家を中心とするブランド。ミラノでは、コミュニティーのなかで自然に人と人とのつながりが形成されていきます。今回も、格式張ったビジネス上のつながりやドライな関係ではなく、自然に、かつそれぞれが高い意欲とモチベーションをもってスタートしたコラボレーションです。ミラノは、こういった温かみのあるつながりがクリエイティブ産業を活性化するユニークな街なのです」(サラ・フェレロさん)
「『エクストラ ミラノ』に参加してもらったのは、ミラノでもっともエキサイティングなファッションデザイナーたち。それぞれ独自の思想とクリエイティビティー、ビジネスマインドの持ち主です。個々のブランドが競争するのではなく協力しあうことで、より高いクリエイティブを目指す…とてもミラノらしいプロジェクトだと思います。また、異なる性別や世代であるという点も意識しました。ミラノのファッション業界の創造性とダイバーシティを表現するプロジェクトになったと自負しています」(サラ・フェレロさん)
それでは、今回コラボレーションした6つのコレクションの詳細をご紹介します。
月ごとに発表される、アートな6つのコレクションに注目
「エクストラ ミラノ」のアイテムは、この夏から11月末にかけて6ブランドのカプセルコレクションが順次、特定のヴァレクストラのショップで限定発売されます。日本ではヴァレクストラ 東京ミッドタウン店と公式サイトでの取り扱い。ここでは、発売順にアイテムをご紹介します。
■1:マトリョーシカに着想を得た、SUNNEI(スンネイ)のジェンダーレスなバッグ
トップバッターは今月販売となったSUNNEI(スンネイ)。ミラノ発の男性デュオによる気鋭のブランド、スンネイ。これまで他ブランドとのコラボレーションにあまり積極的でなかった彼らがヴァレクストラのオファーを即諾した理由は、クリエイティビティーとクラフツマンシップが最高の形で結実する機会だと考えたから。
彼らはヴァレクストラの機能的な人気バッグ「パスパトート」を使い、マトリョーシカに着想を得て入れ子構造のようなコレクションを作成しました。大きな「パスパトート」から始まり、最終的にはウォレット(カードホルダー)へと行き着く、ユニークなラインアップです。
全部そろえてもよし、単品でもよし。スンネイのコレクションにはヴァレクストラのアイコンバッグ「ミニ イジィデ」が登場。こちらもストライプのパターンが特徴です。
■2:着こなしを華やかに演出してくれる、カラフルなLa Double J(ラ・ダブルジェイ)
スンネイに続いて7月末に発売を予定されているのは、La Double J(ラ・ダブルジェイ)とのカプセルコレクション。ファッションジャーナリスト/エディター(自身のブランドに専念するため、ともに現在は休業中)としてコレクションスナップでもおなじみのJ.J. マーティンが手がけるブランドです。
LA出身のJ.J. マーティンがNYでキャリアを積んだのち、ミラノに拠点を移して20年近く。カリフォルニアのオプティミズム、NYで培われたスピーディーな判断能力、イタリアならではのクリエイティビティーと洗練をあわせもつ彼女は、多様性のある今回のプロジェクトにぴったりのデザイナーといえます。
J.J. マーティンが選んだのは、モダンで機能的な「トリックトラック」。「ヴァレクストラのラインアップのなかで、もっともタイムレスかつユニークなバッグ。ヴァレクストラの熟練した職人が誇る伝統的な技術、インターシャ(象眼細工)を使って1970年代のパターンをレザーに落としこむことができ、非常にうれしく思っています」(J.J. マーティンさん)
ラ・ダブルジェイとのコラボアイテムは、横形、縦形の「トリックトラック」のほか「マイクロ イジィデ」と「ミニ イジィデ」も展開(7月末発売予定)。ドッド形のグラフィカルなパターンが着こなしに華やかなアクセントを添えてくれるバッグたちです。
■3:グラフィカルな表現に、ミラノらしさが薫るヴァレクストラのコレクション
「エクストラ ミラノ」に参加するブランドには、発起人であるヴァレクストラも含まれます。そこで登場するデザインは、通常のコレクションとは異なり、このプロジェクトの意図を反映させたもの。アイコンバッグ「イジィデ」と「トリックトラック」に、グラフィカルなパターンをのせたアイテムがそろいます。
「このプロジェクトのための新作では、ミラノの建造物の玄関先の階段をイメージしています。直接的なインスピレーション源は、友人でもあるフォトグラファー、Delfino Sisto Legnaniの写真集『Entryways of Milan』です。友人のアパートでの紹介など、ミラノの身近で起こるソーシャルな出会いの象徴ともいえる玄関先をモチーフに選びました」(サラ・フェレロさん)
グラフィカルでモダンな表現でありながら、タイムレスな魅力を放つヴァレクストラのコレクション。カジュアルな装いからドレスアップまで、幅広いシーンにマッチするバッグです。
■4:思わず笑みがこぼれる、愛らしいイラスト入りのPLAN C(プラン シー)
9月末に登場予定のPLAN C(プラン シー)によるコラボバッグは、このプロジェクトのなかでもひときわ遊び心のあるデザイン。MARNI(マルニ)でスペシャルプロジェクトのクリエイティブディレクターを13年間勤めたカロリーナ・カスティリオーニが手がけるプラン シーは、カラフルかつシックなウエアの宝庫。
カロリーナの愛娘が描くイラストをいかしたアイテムが有名ですが、「エクストラ ミラノ」でもまた、アイコニックなイラストがバッグに取り入れられています。
「とても新鮮なコラボレーションでした。最初はブランドの歴史やスタイルが違いすぎるのではないかと思っていましたが、すぐに価値観やファッションに対する見解が同じだということに気づきました。それが、「イジィデ クロスボディー」のデザインと娘が4歳の頃に描いたイラストが非常にマッチした理由だと思います」(カロリーナ・カスティリオーニさん)。
ヴァレクストラのアイコンバッグ「イジィデ」のなかでもカジュアルで軽やかなクロスボディは、カロリーナさんの言葉通り、愛らしいイラストとベストマッチ。CEOのサラさんも「楽しいイラストによって、バッグに新たな魅力が宿りました」と語ります。上質な素材とクラフツマンシップに、ユーモアのあるイラスト。まさに大人の遊び心を象徴するアイテムですよね。
■5:ミラノの女性たちから着想を得たArthur Arbesser(アーサー アルベッセ)
10月末にカプセルコレクションが登場する予定のアーサー アルベッセは、オーストリア出身の男性デザイナーがミラノを拠点に展開するブランド。ウィーンで生まれ育った彼のデザインには、世紀末にかの地で発展した建築や美術、応用芸術がベースに感じられます。
今回のコラボレーションでは、自国のバックグランドをよりグラフィカルに表現する彼の持ち味がアイコンバッグのひとつ、「ブレラ」に投影されました。「ブレラ」の名前は、ミラノ市街の芸術地区に由来しています。
「私にとってヴァレクストラは、ミラノそのもの、そしてミラノの女性がもつエレガンスを象徴する存在です。ミラノでは見栄を張ることなく、クオリティやスタイルを表現することが重要。それを体現しているヴァレクストラを尊敬しています。ヴァレクストラがうむバッグのラインやフォルムは精巧で緻密。そこに、けして派手や華美に走らない、洗練されたグラフィックをプラスしました。これは、私が常に魅了されているミラノの女性たちにインスパイアされて誕生したバッグです」(アーサー・アルベッセさん)
アーサー アルベッセのカプセルコレクションは、全2色のグラフィックで「ブレラ」のほか「イジィデ」も登場。グラフィカルですが落ち着いた色使いで、大人の着こなしにぴったり。和装にも馴染みそうなデザインです。
■6:隠れた楽しみが潜む、Massimo Alba(マッシモ アルバ)による「セリエ エス」
「エクストラ ミラノ」のフィナーレを飾るのは、Massimo Alba(マッシモ アルバ)。カシミアやレザーなど、最高級の素材を使ったアイテムを得意とする数々の著名ブランドで、デザイナーやクリエイティブディレクターとして20年以上キャリアを積んだマッシモ・アルバが2006年にミラノで設立した自身のブランドです。
上質な素材と向き合ってきた経験から、素材に強いこだわりと深い知見をもつ彼のウェアは、高級な生地、仕立てのよさ、そして非化学薬品による染色で知られています。今回、彼は自身のコレクションのなかでもっともクオリティの高いコートの生地を使うことを考えつきました。そして、その象徴的なアイテムに選んだのが昨年誕生した新アイコンバッグ「セリエ エス」です。
「さらに、私にとって意味のあるパーソナルなディテールをデザインに加えました。これは、私からバッグを購入した方へのプレゼントです。お楽しみに!」(マッシモ・アルバさん)
マニッシュなチェックのコート生地を使ったマッシモ アルバのカプセルコレクションは、「PERFECT IS BORING」(完璧は退屈)という文字と大ぶりのチャームもポイント。「セリエ エス」のほか、「イジィデ」も登場します。
今回は、この夏から年末にかけて順次展開される大型プロジェクト「エクストラ ミラノ」の参加デザイナーとキーアイテムをすべてご紹介しました。サラ・フェレロCEOが発起人となって始まったこのプロジェクトは、ミラノのクリエイティブ業界を象徴する、温かみのある有機的なコラボレーションといえます。
「ヴァレクストラは、美しさや品質、機能性、先進性を追求するだけでなく、システムやコミュニティに貢献することを重視しています。『エクストラ ミラノ』は、ただ単に美しいアイテムをうむということに留まらないプロジェクトです。尊敬する人々をサポートし、彼らと対話することに意義があります。
これは、ヴァレクストラとそれぞれのブランドのコラボレーションではなく、6組のコミュニケーション。最終的には各自のノウハウやコネクションを共有していけたらと考えています。今後も、こういったプロジェクトやコレクションを通してクリエイティブなコミュニティと密接に関わっていきたいですね」(サラ・フェレロさん)
数々の意欲的なコラボレーションを行ってきたなかでも、今回はより明確に、ミラノのクリエイティブ業界におけるカルチャーやヴァレクストラの革新性を表すプロジェクトといえるでしょう。バッグに宿るヴァレクストラのマインドとクラフツマンシップ、そしてそれぞれのデザイナーの個性は、きっと着こなしに奥行きと品格を与えてくれることでしょう。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 門前直子
- EDIT :
- 石原あや乃