フィレンツェのモザイクは、ヴェネツィア派の作風のように、ガラスの破片を使った作品とは違い、象嵌細工のように、天然石や半貴石を精巧にはめ込む技法を使う。精密さとリアルな色彩で、まるで油絵のように見えることで「石の絵画」ともいわれる、名物的な伝統工芸だ。
マエストロのレンツォさんとレオナルドさんの親子で手がけるスカルペッリ工房は、2009年にオープン。レンツォさんは、13歳で弟子入りし、モザイクづくり50年のフィレンツェを代表する名匠である。
「石の絵画」ともいわれるフィレンツェのモザイクアート
モザイクづくりの工程はこうだ。下絵を描く。下絵に合わせて色石にモザイク状の線を引く。その石を3㎜程度の厚さに切る。切った石を絵柄に合わせて接合する。
言葉にするといかにも簡単だが、石と石の隙間の調整や、そもそも絵に合った色石の選択は、長年の勘に裏打ちされた美意識がなければ、到底成しえない仕事である。それだからか、レンツォさんは、「美しい石を採取したり出合ったときは、最高の気分」という。石の質感や色味に刺激され、さらに制作のエネルギーが湧くそうだ。
唯一無二の石の絵画、ここにあり!
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- PHOTO :
- 仁木岳彦