1906年に創業したリシオ工房は、ビロードとイタリア語でブロッカートという錦を中心に、高級絹織物を手がけてきた。'20年代に、ミラノのマンゾーニ通りにショップを構え、人気を博した。ガブリエレ・ダヌンツィオが暮らした部屋や、ボロメオ家などミラノの貴族の屋敷に飾った緻密な絹織物は、リシオでなければ生産が困難なものばかりだった。

フォンダツィオーネ・アルテ・デッラ・リシオの絹織物、繊細さの極致

椅子のカバー用。手前に並んだ織物のうち、左のネイビーが、メディチ家が好んだ柄を配し、金糸と銀糸を織り込んだ錦。
椅子のカバー用。手前に並んだ織物のうち、左のネイビーが、メディチ家が好んだ柄を配し、金糸と銀糸を織り込んだ錦。
なんと整経(経糸の準備)に1週間かける。
なんと整経(経糸の準備)に1週間かける。

近年、有名ラグジュアリーブランドとコラボレートし、エクスクルーシブの織物をつくるほか、中世から近代までの絹織物や、金銀織り交ぜた錦の復刻版も製造。工房は、フィレンツェ郊外の広い敷地に構え、1800年〜1900年代初頭の希少な機織り機が、今も稼働する。

希少な機織り機によって編み上げられる絹織物

1900年初頭のビロード用の織機。
1900年初頭のビロード用の織機。
ビロード織りは、ひと織りするたびに針金を挟み、盛り上がった緯よこ糸いとをカッターで切り、ビロード状にする。
ビロード織りは、ひと織りするたびに針金を挟み、盛り上がった緯よこ糸いとをカッターで切り、ビロード状にする。
昔ながらの道具で穴を開け、紋もん紙がみ(型紙)を作製。
昔ながらの道具で穴を開け、紋もん紙がみ(型紙)を作製。 

工房には、勤続30年のベテランを筆頭に、10人の職人がいる。依頼に合わせて仕事を分担するが、年季の入った織機のスピードは極めて遅い。ビロードの生産は、1日で20cm程度。ブロッカートは、なんと10cmしか織れないのである。

あまり日常的な商品ではなくなったかもしれないが、椅子やソファのカバーなど、ゴージャスな絹織物は、しっかりと継承されている。 

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2020年春号より
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仁木岳彦