今年2月の『セビリアの理髪師』の公演を終えた後、約8か月にわたって計8演目の公演中止が続いた新国立劇場オペラだが、いよいよ再開の日を迎える。
再開幕公演として、また、新国立劇場オペラ2020/2021シーズンの開幕公演として、10月4日から上演されるのは『夏の夜の夢』。シェイクスピアの同名喜劇を原作とする、ベンジャミン・ブリテン作曲の名作オペラだ。
シェイクスピアの傑作喜劇をオペラで!
20世紀のイギリスを代表する作曲家で、指揮者、ピアニストとしても高く評価されるベンジャミン・ブリテンが、自国の偉大な劇作家シェイクスピアの原作を元に、オペラ『夏の夜の夢』を完成させたのは1960年。作曲家としての成熟を示した作品として知られ、その後、世界各国の劇場で上演されて人気の演目となった。
いわばスタンダードなオペラだが、今回新国立劇場オペラパレスで上演される『夏の夜の夢』は、その“特別バージョン”となる。
心を惹きつけるセンスに満ちた舞台美術や衣装にも注目
今回の公演は新制作で、2004年のクリスマス・シーズンにベルギーのモネ劇場で初演された、デイヴィッド・マクヴィカー演出の『夏の夜の夢』が元になっている。その舞台は、美術と衣装を、ヨーロッパ各地で演劇やミュージカル、オペラのデザインを手掛けるレイ・スミスが担当。美しい中にも毒や棘もある独特なセンスに満ちた世界観が、観客たちを虜にして話題を呼んだ。
コロナ禍での再開にあたり、デイヴィッド・
日本が誇るカウンターテナー、藤木大地の登場に期待が集まる
『夏の夜の夢』は、妖精たち、貴族の恋人たち、職人たちが織り成す不思議な一夜の物語。多数のソリストが登場するが、注目は観客を幻想的な世界へと引き込んでいく、ボーイ・ソプラノによる妖精たちのアンサンブルと、カウンターテナーが演じる妖精の王オーベロン。
その妖精の王オーベロン役で今回の舞台に立つのは、新国立劇場オペラ芸術監督・大野和士氏が「私たちのヒーロー、日本が誇るカウンターテナー」と評している藤木大地。17年ぶりの新国立劇場オペラパレス登場となる。
藤木大地は2017年4月、オペラの殿堂、ウィーン国立歌劇場に鮮烈にデビュー。日本人、そして東洋人カウンターテナーとしても史上初の快挙だった。その後もバロックからコンテンポラリーまで幅広いレパートリーで活動を展開し、2018年には自身のアルバム『愛のよろこびは』をリリースしている。絶えず話題の中心に存在する、日本で最も注目される国際的なアーティストのひとりなのだ。
オーベロンの妻のタイターニア役には、透明感のある歌声が聴く人を魅了するソプラノ平井香織。加えて、但馬由香、村上公太、妻屋秀和など、国内屈指のオペラ歌手たちが登場して、真夏の夜の恋の協奏曲を繰り広げる。
「20世紀オペラで最も華やかで心の底から楽しめる作品をシーズン開幕に」という、大野和士監督のチョイスによる『夏の夜の夢』。その舞台はきっと、私たちの心の扉を開いてくれるに違いない。
新国立劇場 2020/2021シーズンオペラ開幕公演
『夏の夜の夢』[全3幕/英語上演 日本語・英語字幕付]
作曲:ベンジャミン・ブリテン
公演日:10月4日(日)~12日(月)
会場:新国立劇場 オペラパレス/東京都渋谷区本町1-1-1
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- TEXT :
- 堀 けいこ ライター