世界的に注目を集めてきた、国際デザインコンペティション「LEXUS DESIGN AWARD 2020」のグランプリが、2020年9月1日に発表された。

世界79カ国/地域から集まった2042点の応募の中から6組の”ファイナリスト”が選ばれ、そこからグランプリが決定される同デザインアワード。2020年のグランプリは、「Bell Tower」による「Open Source Communities」だった。

ケニアのデザイン事務所である「Bell Tower」の応募作が注目された理由は、おおきくいって二つのようだ。

サステナビリティに主眼をおいたプロジェクト

LDAグランプリに選出された「Open Source Communities」のルーフには太陽光発電システムが組み込まれる。
LDAグランプリに選出された「Open Source Communities」のルーフには太陽光発電システムが組み込まれる。
2014年に設立されたBell Towerのジョン・ブライアン・カマウ氏。
2014年に設立されたBell Towerのジョン・ブライアン・カマウ氏。

ひとつは、オープンソースのソフトウェアを活用し住宅設計を行った点。オープンソースとは、理解しやすいプログラミング言語で書かれたコンピュータプログラム(ソースコード)を公開し、誰でも自由に扱ってよいとするものだ。

第二点は、安定した水資源の確保ができていない地域の生活水準を改善するコミュニティデザインの提案であること。浄化機能を備えた雨水タンクも設計に組み込むことが織り込まれている。

「デザインによる影響範囲を、地域の経済構造を変えるところまで広げ、さらに安全な飲料水の確保という人々の生活改善において重要な問題にも取り組むもの」

審査員のジーン・ギャング氏(建築・都市デザインで国際的に有名なスタジオ・ギャングの創設者兼パートナー)による評価の理由が、LEXUSの用意したプレスリリースで紹介された。

「Open Source Communities」は、「誰でも容易にアクセスできて低コストであるほか、地域で入手できる材料での建築を可能とするなど、サステナビリティに主眼をおいたプロジェクト」とされる。

「デザインによる影響範囲を、地域の経済構造を変えるところまで広げ(中略)単に雨水を貯めて安全な飲料水へと変える装置ではなく、経済によってコミュニティを活性化させる野心的なプロジェクトなのです」。上記ギャング氏の言葉だ。

2021年に向けて作品を応募中!

水資源の不足と汚染による病気の蔓延に悩む地方のために設計される建物はルーフを使って雨水をタンクに貯めたのち浄化を行う。
水資源の不足と汚染による病気の蔓延に悩む地方のために設計される建物はルーフを使って雨水をタンクに貯めたのち浄化を行う。
このユニットにより、病気を予防し、水を汲みに遠くまで出かける時間を節約し、さらに建設にあたっては地域に労働賃金を提供し、完成したあかつきには、(わずかな)利用料を徴収することで金銭的にうるおいをもたらすという。
このユニットにより、病気を予防し、水を汲みに遠くまで出かける時間を節約し、さらに建設にあたっては地域に労働賃金を提供し、完成したあかつきには、(わずかな)利用料を徴収することで金銭的にうるおいをもたらすという。

2013年に設立された「LEXUS DESIGN AWARD(LDA)」は例年、4月のミラノ・デザインウィークでの発表を常としてきた。同市内トルトーナ地区を中心に、会場えらびや設営などにもLEXUSチームの知見と審美観が表れ、訪れるのが楽しみとつねに来場者の評判も高かった。

あいにく、2020年は新型コロナウイルスによる感染症拡大の影響を受けて、デザインウィークは中止。LDAもオンラインでの発表となったのは、受賞者への晴れ舞台が用意されないことや、来場して実物を眼で見て、同時にLEXUSが毎回用意する斬新なインスタレーションを体験できないことなどの観点から残念しごくだ。

LEXUSは、現在「LEXUS DESIGN AWARD 2021」の応募を受け付けている。応募しめきりは10月12日(月)AM 6:59という。「デザインやテクノロジーの力で、豊かな社会とより良い未来を創造する革新的なアイデアを募集しています」とは主催者の言葉だ。

「Open Source Communities」を提案したケニアのBell Towerは、リスクマネージメント、インフォメーションテクノロジー、デザイン、プロジェクトマネージメントなどを専門とする。
「Open Source Communities」を提案したケニアのBell Towerは、リスクマネージメント、インフォメーションテクノロジー、デザイン、プロジェクトマネージメントなどを専門とする。
この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
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