今月のアスリート王子:松井千士選手(25歳)…ラグビー選手

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写真:長尾亜紀/アフロ

"細マッチョ"から"ゴリマッチョ"へ。ラグビー松井千士選手の五輪へかける熱き思い!

50メートルを5秒7で走る俊足の持ち主にして、モデルさんと見間違ってしまうような華のあるルックス。25歳で7人制ラグビー「セブンズ日本代表」のキャプテンを務めている松井千士(ちひと)選手は、どの角度から見ても絵になるラガーマンです。

けれども、何よりの魅力はラグビーに懸ける情熱の深さでしょう。意志の強さは、ここ最近になって体重を約5キロも増やしたことからも伝わります。元々は「食べても太らないのが悩み」と話していた"細マッチョ"の松井選手。

けれども、7人制で戦う五輪の金メダルを獲得するには、ポジションによって役割が大きく分かれる15人制ラグビー以上に強靭なフィジカルが必要と考えたと言います。とにかく体重を増やさなければならないという覚悟で、88キロへと大増量に成功。

「今までは、セブンズの大会に出るときは83~84キロだったのですが、いまは88キロにウエイトアップして、それでもスピードが落ちないように体を慣らしているところです」

同志社大学時代に日本代表に選出され始めた5年前と比べると約10キロも体重が増加しており、本格的な「ゴリマッチョ」へと変貌中なのです。

五輪への思いがこれほどまで強いのはなぜか。理由は2016年のリオデジャネイロ五輪にあります。快足のトライゲッターとして鳴らし、リオ五輪の代表候補にもなった松井選手ですが、ぎりぎりのところで12人のメンバー入りを逃しました。

けが人などが出たときに交代するためのバックアップメンバーとしてブラジルに行きましたが、現地では選手村に入れず、試合もスタンドから観戦したのみ。ともに汗を流した仲間たちがメダルまであと一歩の4位になった姿を複雑な思いで見つめました。

だからこそ、東京五輪では自分が活躍したい。その思いが高まり、昨シーズンまではサントリーの社員選手でしたが今シーズン移籍したキヤノンイーグルスとはプロ契約を交わしています。

「五輪に懸ける思いは強いです。2016年に代表から落ちた悔しさもあって、やはり何かを懸けてやらないとダメだと思いました。ただ出るだけでは満足できません。メダルを獲って、自分自身も活躍して世界で注目されるプレーヤーになりたいと思っています」

サントリー時代は仕事のあとに練習をしていましたが、プロになってからは武器である快足に磨きをかけるため、元陸上競技選手であるトレーナーをつけてスピード強化に取り組んでいると言います。

「2021年7月まではセブンズに特化して、東京五輪で結果を残し、その後は、キヤノンでアピールして、2023年のワールドカップに向かって勝負したいです」と熱く語ります。

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写真:長尾亜紀/アフロ

2019年ワールドカップで世界を驚かせる圧巻の走りを見せ、このほど医学の道に進むためにセブンズを引退した福岡堅樹選手からは「僕より速い」と太鼓判を押されています。

「福岡さんが『俺よりも速い』とおっしゃったことで、ファンの方からの期待やハードルが高くなりましたね。逆にすごく楽しみ。五輪でスピードを見せたいです」

フィギュアスケートの羽生結弦選手や米メジャーリーグの大谷翔平選手など、日本が誇るスーパーアスリートを何人も輩出している1994年生まれのひとりでもある松井選手。熱いロマンと固い決意を胸に、この先もっと華やかなラガーマンになっていきそうです。

Athlete data

松井千士選手
ラグビー選手
(まつい ちひと)1994年11月11日、大阪府大阪市生まれ。3歳上の兄の影響で、小学校1年生でラグビーを始め、大阪の常翔学園高校で日本一に輝き、高校日本代表、U20日本代表で活躍。同志社大学時代には7人制(セブンズ)と15人制の日本代表に選出された。15人制では2015年のアジアラグビー選手権で日本代表としての初キャップを刻む。2017年から3年間在籍したトップリーグの「サントリーサンゴリアス」から今季は「キヤノンイーグルス」に移籍し、プロとして活動している。身長183センチ、体重はここ5年で10キロ増えて88キロ。好きな曲はMrs.GREEN APPLEの『僕のこと』で、試合の前には必ず聴いている。
矢内由美子さん
スポーツライター
(やない ゆみこ)取材歴25年のスポーツライター。オリンピック種目などをカバー。日本スポーツプレス協会会員。
この記事の執筆者
TEXT :
Precious編集部 
BY :
『Precious11月号』小学館、2020年
美しいものこそ贅沢。新しい時代のラグジュアリー・ファッションマガジン『Precious』の編集部アカウントです。雑誌制作の過程で見つけた美しいもの、楽しいことをご紹介します。
WRITING :
矢内 由美子(スポーツライター)
EDIT :
宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)