独フォルクスワーゲンが、電気で走るEV「ID.4」を2020年9月24日に発表した。VWといえば、「ビートル」(41年)や「ゴルフ」(74年)と、ベーシックカーの分野でマイルストンを打ち立てた実績を持つ。ピュアEVの「ID.シリーズ」も、新時代のモビリティの道標になる可能性がある。
アメリカではオンライン予約にオーダー殺到
ID.4(アイディーフォー)は、2020年9月から一部地域でデリバリーがはじまったハッチバック「ID.3」についで送り出された(日本での発売は未定)。特徴は、SUVスタイルにある。
知っておいていただきたいのは、フォルクスワーゲンは「2025年を目安にラインナップの大幅な電気化」を謳っていること。電気自動車へのシフトを明確に打ち出している。
欧州委員会は、CO2排出量について、2050年までに、1990年のレベルから、少なくても55パーセントに引き下げる必要がある、とした。これまでは40パーセントだったものを、さらに厳しくする内容を2020年9月に発表したのだ。
カリフォルニア州も、2035年までに州内で販売されるクルマにゼロエミッション(排ガスを出さない)を義務づけると、9月23日に発表した。
大きな市場で加速する脱内燃機関の動きを見ながら、フォルクスワーゲンが力を入れてきたのが、新世代の電気自動車計画なのである。VWは「MEB」という電気自動車専用のプラットフォームを開発。ID.3も、今回のID.4も、リアモーター+後輪駆動+パウチ型のバッテリーという、この組み合わせを使う。
ID.4は、ドイツと、米国と、中国で生産され販売される。ニュースによると、米国で始まったオンライン予約では、はやくも限定で発売される予定の上級車種は売り切れたとか。
ヘッドランプでコミュニケーション⁉︎
ID.4の特徴は「比較的コンパクトな車体に、(VWのSUVである)ディグアンなみの広い内装。それに最大520キロの航続距離」と、オンラインで行われたジャーナリスト向けの発表会で、ID.4のプロダクトマネージャーを務めるアナ・カタリナ・ミュラー氏は語った。
ID.4に注目したいのは、メーカーが環境問題解決(あるいは罰金回避)のために開発した“ガマン”車ではない、ということだ。
ひとつはインテリア。シンプルさがきれいなダッシュボードには、大きな液晶画面を使ったインフォテイメントシステムがそなわる。昨今のVWのコンパクトSUVに通じる楽しい色づかいだ。
エクステリアで特筆すべきは、「IQ.ライト」の採用という。LEDを使ったヘッドランプを使い、ドライバーとのコミュニケーションに役立てるのだ。キー(あるいはキーがわりのスマートフォン)を持った人間が近づくと、ヘッドランプの複雑な明滅で、人間でいえば“こんにちは”とか“いらっしゃい”あるいは“さようなら”といった“表情”を作るそうである。
デリバリーが開始されるのは、ドイツをはじめとする欧州のいくつかの市場が2021年年初からという。北米と中国がそれに続く。価格は、限定車「ID.4 1st(ファースト)」が4万9950ユーロ、やはり限定でフル装備の「ID.4 1st MAX」が5万9950ユーロ(この2車種によるラインナップはドイツ向け)。
こののち、4WDも含めて、グレードが増えていく可能性も。ID.4のベースモデル(3万7000ユーロ)も予定されている。日本での販売については「まだ先になってしまいます」と、ドイツのセールス担当者は語った。
- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト