アストンマーティン初のSUV「DBX」が、いよいよ日本でデリバリーされることになった。一見してわかるアストンらしいスタイリングはもちろん、ディテールは英国車らしいつくりこみで、走りはスポーツカーそのもの。ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏がリポートする。
しっかりとキャラの立ったつくり
アストンマーティンと聞くと、心が躍る自動車好きにとって、じつに魅力的なモデルが日本で発売された。その名は「DBX」。2015年に計画が発表されていらい、ながく待たれていたスーパーSUVだ。
英国人はなぜこんなにクルマづくりがうまいのか。そう思うことがある。たとえばランドローバーとレンジローバー。それにベントレー。SUVひとつとっても、キャラクターがしっかり立っている。アストンマーティンDBXも、もうひとつの証左だ。
スポーツカーに情熱を注いできた英国の会社として、いかなるSUVを作るべきか。アストンマーティンの開発陣は、しっかり考えぬいて、このDBXを仕上げたのだろう。扇情的ともいえるスタイリングから受ける第一印象が、走りだして裏切られることはない。
しっかりした足まわりと、反応の速い操舵、そしてとにかくパワーとトルクのかたまりのようエンジン。後席をもったクルマに与えられる車名「DB」が示すとおり、アストンマーティンではGT的なキャラクターを設定しているものの、SUVのかたちをしたスポーツカーだ。
405kW(550ps)の最高出力と700Nmの最大トルクを持つ3982ccのV8ツインターボユニットは、メルセデスAMGが開発したもので、アストンマーティンはすでにDB11やバンテッジといったモデルに搭載しているため、チューニングの勘どころはよく分かっているはず。
メルセデスAMG GTでは(モデルの性格上)基本的におなじユニットでも470kWとパワフルであるいっぽう、SUVで比較するなら、GLS580 4MATIC Sportでは360kW。アストンマーティンのほうがはるかにチューニングは高いのだ。
SUVのかたちをしたスポーツカー
このクルマのよさは、さきに触れたとおり、走らせて楽しいこと。足まわりはしっかりしているし、ステアリングはクイックで、ダッシュ力もあればコーナリングでもすぐれた性能を発揮してくれる。
ドライブモードが備わっていて、「GT」モードは太いトルクを活かして、余裕の走りが味わえる。いっぽう、トランスミッションとダンピングの設定で、ともに「スポーツ」あるいは「スポーツプラス」を選択すると、より加速がするどくなり、車体のロールは抑えられる。まさにSUVのかたちをしたスポーツカーだ。
フルタイム4WDシステムには、電子制御されたセンターディファレンシャルギアが組み合わされ、走行状況や路面に応じて、前後のトルク配分を瞬時に変えていく。同様に、後輪は電子制御のリミテッドスリップディファレンシャルギア。片輪が多少滑っても、もう片方の駆動力をなるべく失わず、しっかり地面をつかまえて加速していく設定なのだ。
英国靴でおなじみの装飾がシートに
もうひとつの魅力はインテリアである。エクステリアは扇情的というか、抑揚がしっかり効いていて、かなりグラマラス。いっぽうで、内部はぜいたくな、もてなしの空間だ。
立体的な造型のダッシュボードのおかげでもあって運転席は機能的。いっぽう、後席はとても広びろとしていて、かなり居心地がよい。英国趣味もうまく採り入れられている。
とくに“ブローギング”といって、紳士靴のブローグと同様、パンチングの装飾をシートレザーの一部に施してあるのは、英国紳士靴を好む男の心に刺さる。斬新なスタイリング、ハイテクな技術、そしてトラディショナルなディテール。他に類のない仕上がりだ。
3060ミリと長いホイールベースを活かした、余裕ある室内スペースはDBXのセリングポイントである。たとえば、ベントレー・ベンテイガV8は2995ミリ、ランボルギーニ・ウルスですら3003ミリだ。
そのぶん、取り回しが心配になるものの、開発中には自社内に街中を模したコースを作り、使い勝手を検討したともいわれる。ステアリングのギア比も同様の目的で決められたと、開発総責任者のマット・ベッカー氏はオンラインのビデオで語っていた。
価格は2295万5000円で、装飾を中心としたさまざまなオプションが用意される。ちなみに、4リッターV8エンジンのライバルを探すと、ベントレー・ベンテイガV8(2142万8000円)、ランボルギーニ・ウルス(3068万1070円)、ポルシェ・カイエンターボクーペ(2063万円)といったものが思い浮かぶ。
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- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト