CHANEL(シャネル)の2021年春夏コレクションは、華やかなパリコレクションのなかでも、ひときわ輝きが強い。シャネルを身に纏ったゲストたちを見るだけでも、十分にパリのゴージャスさを堪能できるほどの眩さだ。
とはいえ、今回は舞台はいつもの壮麗なグラン・パレであるものの、コロナ対策が取られ、席の距離を取った限られたゲスト数に抑えたコレクションであった。
シャネルの2021年春夏コレクションでは、映画の舞台セットに迷い込んだような壮大なセットが登場
ステージには、アメリカのハリウッドヒルズにそびえ立つ「HOLLYWOOD」のサインボードを思わせる巨大な「CHANEL」の文字がセットされ、映画の雰囲気が漂う。
ショーの前に送られてきたティザー動画はコレクションへの期待感を否応なく膨らませるファンタジーに満ちていた。オランダのフォトグラファーデュオである、イネス・ヴァン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディンが製作したティザー動画は、映画への愛と同時にシャネルを着こなした女優たちのエレガンスにも敬意を表したもの。
60〜70年代にかけて愛された、ロミー・シュナイダーやジャンヌ・モロー、アンナ・カリーナなどが出演した映画のカットをコラージュした構成は、今でもファンが多いカリスマ的な女優たちだけに、見るだけで心に響く幻惑的な魅力を放つ。
アーティスティック ディレクターの、ヴィルジニー・ヴィアールは「レッドカーペットでフォトコールに臨む女優たちの、その瞬間の姿です」と述べている。
時代を超えて愛されるシャネルのアイコンスタイルが多数登場
アイコニックなツイードのタイムレスなスーツやジャケットからスタートしたコレクションは「あの映画のあの場面で着ていたもの」と想像させるほど、シネマティックな雰囲気に満ちていた。
モノトーンの小花柄は、レッドカーペットに相応しく、光沢のあるスーツは「昨年マリエンバードで」に登場したドレスを思わせる。そして有名な「シャネル N°5」のデザインのトップスの数々も、マリリン・モンローを思い起こさせるものだ。
今季は、無地のツイードとともに、CCマークをカラフルにグラフィカルに遊んだ楽しい服も多くファンの垂涎の的になりそうだ。
スカーフなど小物にあしらわれた「CCマーク」スタイルも多数登場した。
夢が広がるユニークなアクセサリーたち
同時にシャネルといえば、バッグやアクセサリーも毎シーズン異なる表情を見せ目が離せない。カメリアをつけたアクセサリーや、ナノサイズのバッグ、クロスボディーでアクセサリー感覚で着こなしたコスチューム パールとチェーンのダブルストラップ使いのミニバッグなど、今シーズンも、欲しくなるものがいっぱいだ。
職人技術が生きた繊細なディテール
シャネル特有のサヴォアフェールの魅力もビジューボタンや、フェザー飾り、異素材のさりげないパッチワークなどで表現され、クチュールメゾンならではの凝った仕立てが、コレクションにいっそうの華やかさを添えた。
幅広いスタイルが提案された、圧巻の70ルック仕立て
黒と白のピュアな美しさもコントラストからトータルカラー使いまで幅広く登場した。
イブニングには、シャネル特有のシックでエレガントな白黒のモノトーン使いも多く、シネマの香りに酔いしれながら、リアルなシーンで、装う人を女優のように煌めかせるシャネルマジックの真髄を見せた。
これはあの映画でロミー・シュナイダーが着ていた、あのスーツかしら?と思い巡らせながら、謎解きのようにときめいた圧巻のコレクションであった。
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- TEXT :
- 藤岡篤子さん ファッションジャーナリスト
- PHOTO :
- (C)CHANEL
- WRITING :
- 藤岡篤子
- EDIT :
- 石原あや乃