メルセデス・ベンツのコンパクトSUVである「GLA」がフルモデルチェンジ。日本では2020年6月25日に発売された。さっそく乗ったのは「GLA200d 4MATIC」。ディーゼルエンジン搭載の4WD車である。スタイリッシュであるばかりか、走りも楽しませてくれるよい出来のモデルだ。
はじめから都会で乗ることを意識したSUV
英国でレンジローバーやディフェンダーのようなクロスカントリー型4WDに乗るのがカッコよかったのは、ひとことでいうと“違和感”ゆえだ。本来なら街中でなく、カントリーサイドで乗るために開発されたモデルをあえて、というハズシ感覚がシーク(粋)とされた。
2代目になったGLAは、最初から都市生活者のために開発されたようなモデルだ。では、カッコよくないか、といえば、洗練性という魅力を身につけている。
洗練性とは、乗り心地を含めた走りと、デザインだ。
110kWの最高出力と320Nmの最大トルクを持つ1949ccのディーゼルユニットは、1.7トンのボディにも十分すぎる力を感じさせるものだ。2500rpmから上でもりもりと力を出す。
アクセラレーターを踏み込んでいくとき、トルクの落ち込みはいっさいなく、一気呵成(いっきかせい)に加速していく気持よさがある。ディーゼルエンジンとは思えないほどだ。
4つの車輪に駆動力を伝える8段オートマチック変速機は、ようするに、絶妙なシフトスケジュールで動くのだろう。シフトアップのときにパワーが途切れると感じる場面はなかったし、アクセラレーターを踏みこむとすかさずギアを落として反応してくるところが気持ちよい。
しかも意外なほど静かで、巡航時などはとくに、振動も騒音もかなり抑えられているため、ディーゼルエンジン車とは思えない。燃費はリッター16.5キロ(WLTC)と、こちらもディーゼルならではの魅力である。
現代のSUVに求められる要件をくまなくクリア
先代よりホイールベースが30ミリ延びたいっぽう、後席のレッグスペースは116ミリ広くなるなど、室内が広くなっている。それでも全長は4415ミリにとどまり、そもそも街中でも十分に使い勝手のよいことが考慮されている。
ドライブモードで「スポーツ」を選択すると、とくにダンピングがびしっと閉まり、ボディの揺れも少なく、ロールおさえめの足まわりと、精度の高いステアリングと、これまで書いてきたように反応のいいエンジンとが、絶妙なバランスを感じさせてくれるのだ。
スタイリングも洗練されている。全高は1620ミリとやや高め。着座位置は従来のGLAより97ミリ高くなっているという。視界のよい乗用車という、現代のSUVに求められる要件をしっかり守っているのだ。かつ、ボディはスムーズな曲面で覆われている。
ルーフの前後長は長めであるものの、後方にいくにしたがって、下に落ちていくラインを強調。ウインドウグラフィクスも後席がややコンパクトであるように見せているため、躍動感もある。じつはおとなっぽい乗りものなのだ。
安全装備も充実したのは、従来型とのおおきな違いといえる。メルセデス・ベンツ日本によると「Sクラスと同等のシステムを採用しています」となる。
具体的には、歩行者や車両の飛び出しを検知した場合をはじめ、先行車両や障害物を回避できない場合の自動緊急ブレーキによる被害軽減機能がひとつ。加えて、車線維持機能、斜め後ろの死角の車両との衝突回避を支援する機能などがあげられる。
現在、ラインナップはここでリポートした「GLA200d 4MATIC」のモノグレード。ただしAMGラインなどのオプションは用意される。価格は502万円だ。
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- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト