1970年代にスーパーカーブームが日本を席巻した。当時、小学6年の私は、展示イベントが開催された晴海ふ頭の会場まで、小型カメラを持って幾度となくスーパーカーを見に行った。特に、漫画『サーキットの狼』でしか見たことのないロータス『ヨーロッパ』の低い車体を見たときは、卒倒しそうだった。とにかく名車ぞろい。

デ・トマソ『パンテーラ』、フェラーリ『ディノ』、ランチア『ストラトス』……、トヨタ『2000GT』のデモ走行も見事だった。メーカーと車名の違いをあまり区別できない少年期だったが、ランボルギーニに限っては正確に暗記。とびっきりの車種がラインアップされ、写真を撮るのに必死だった。『ミウラ』『イオタ』『カウンタック』。この3台は、ランボルギーニにおける最高傑作だと思っている。デザイン、色、レーシングカーさながらの運転席……、今も当時の記憶がよみがえるほど衝撃に満ちていた。

あれから45年。ランボルギーニへの憧れは露ほども変わっていない。

エッジの効いたスタイリングは、数あるスーパーカーのなかでも随一

唸るような爆音を背に痺れる走りを体感

〝ランボルギーニ〟のエッジの効いたスタイリングは、数あるスーパーカーブランドのなかでも随一。エンジンがキャビンの後ろにあるため、ノーズは極限まで低い。ボンネットの下には100Lの荷室空間が設けられている。
ランボルギーニのエッジの効いたスタイリングは、数あるスーパーカーブランドのなかでも随一。エンジンがキャビンの後ろにあるため、ノーズは極限まで低い。ボンネットの下には100Lの荷室空間が設けられている。

そしてついに最新の『ウラカンEVOスパイダー』を試乗することができた。ノーズからテールに繫がるシャープな車体や、ハニカム模様をアクセントにしたデザインは、モダンに進化した『カウンタック』のようだ。走り始めてわかったのが、レッドゾーンは8500回転から。ということは、エンジンをブンブンに回せる。アクセルペダルをグッと踏み込むと、唸るような爆音でスピードを上げる。これは痺れた。都心の道の比較的急なカーブでは、ステアリングに合わせて地面にへばりつくように曲がる。これなら、飛ばしたいという気持ちをこらえても、レーシングコースでしか味わえない感覚が、日常的な公道で楽しめる。

オープンで走ったときの感覚が不思議だった。多くのクルマは風を感じ爽やかだが、『ウラカンEVOスパイダー』は違う。開けても、屋根がまだある感覚。オープンカー本来の狙いをあえて超越したものなのか……。いやいや、どんなスタイルになっても動じない、肝が据わったダンディな男のようなクルマである。(文・矢部克已(本誌エグゼクティブファッションエディター))

ランボルギーニ『ウラカンEVOスパイダー』

ボディサイズ:全長4,520×全幅1,933×全高1,180mm
車両重量:1,542kg
エンジン:V型10気筒
総排気量:5,204cc
最高出力:470kW(640ps)/8,000rpm
最大トルク:600Nm/6,500rpm
トランスミッション:7速DCT(AT)
価格:¥32,827,602(ランボルギーニ カスタマーセンター)※税抜

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2020年秋号より
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篠原晃一