ベーシックなスナックを想像して『オンラインスナック横丁』の『みのたけ』のページをのぞくと、少し面食らうだろう。実店舗は週に1〜2回だけの営業、しかもスナックなのに昼だけしかオープンしていない。
昼スナックは未経験と話す二宮さんは、いざ久保マスターが待つ店へアクセスする。
’50〜2000年代の貴重なオールドパーに出合える
なぜ二宮さんが『みのたけ』に惹かれたのか。彼女はウイスキーが好きで、この店が年代もののオールドパーを揃えているとあったからだ。
二宮さんがその旨を伝えると、久保マスターはおもむろにオールドパーのボトルをこちらに向けた。
もともと久保マスター自身オールドパー愛好家で、30年ほど前からよく飲んでいたそうだ。趣味で収集していたオールドパーが大量になったので店を開いたと話す。
驚くのはその提供価格だ。通常50年代のオールドパーはショットで¥5,000〜7,000が相場。この店は大切にコレクションしていたウイスキーであるはずなのに1杯¥2,500と、かなりリーズナブルな設定になっている。
「このオールドパーは本当においしくて、飲むとみんなの目が輝き出します。だからたくさんの人に味わってほしいんです」
そう久保マスターは笑うが、それにしても良心的価格すぎないか。ますますこの店のスタンスが謎めく。
スモールビジネスを通して自分らしい生き方をしてほしい
そもそも久保マスターは、高級レストランの支配人やバーテンダー、居酒屋の接客から飲食系バイヤーや企画などを担当してきた飲食業界のエキスパート。
現在はフリーランスのコンサルタントやマーケターを生業にしている。『みのたけ』はクライアントの店が定休日に間借りして開店しているため、週に1〜2回の営業となっている。
本業があるため、趣味の延長線としてオールドパーを良心的価格で提供できるのは納得できる。それでもだ、本業があるにも関わらずなぜ店をしようと考えたのか。そこには店名にヒントがある。
貧富や情報、思考力の格差が極端になり、価値観の同質化と同調圧力の強くなった日本社会は、オーバードライブでバランス機能を失っている。この状況が続くと揺れ戻しでプレッシャーの少ない社会を求める人が増えるのではないか。そう考えた久保マスターは、一人でも多くの人が自分らしい人生を表現できるようサポートをしたい、とスモールビジネスを応援する『身の丈ビジネス倶楽部』を発足する。
発足した背景には、家庭に入った女性の存在があった。大いに可能性を秘めた人たちばかりにも関わらず、自己肯定感の低さなどから自信を持てない様子をもどかしく感じ、そこを打開したい熱い思いを久保マスターは抱いている。
「彼女たちに自分たちにはポテンシャルがあると感じてほしい。そこで主婦たちと気軽に楽しくおしゃべりできる場を設けたい、と主婦が訪れやすい昼にスナックを始めました」
会話を通じて主婦たちに“身の丈”に合ったスモールビジネスを展開したいなどの目標ができれば、それを全面的にバックアップしたいと久保マスターは続ける。
だから店名は“身の丈”に合ったビジネスから夢を掴んでほしい、と『みのたけ』の由来を教えてくれた。
「思いつきの夢でもいいんです。悶々と考え込むよりも一歩踏み出すことが大事。やりたいことは絶対できると信じています」
一人でも多くの人が目標に向かって歩いてほしいとの久保マスターの熱意を反映して、この店は『オンラインスナック横丁』の中でも最安値の価格設定になっている。
「小さな子どもがいてストレス発散ができないと嘆く女友達に、このお店を紹介したい」
と話す二宮さんに感想を尋ねた。
「オールドパーからマスター自身の話、夢は叶うといった強いメッセージまで、話題が豊富で思わず延長したくなったほど(笑)。オールドパーを飲みに実店舗にも遊びに行きたいですね」
実店舗には久保マスターへ相談するために、20〜40代の女性一人客もよく顔を出すという。オールドパーを味わいに、久保マスターとの会話を楽しみに、コロナ禍が終息したら実店舗にも足を運んでほしい。
【みのたけ】
問い合わせ先
- みのたけ TEL:090-8345-0823
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オンラインスナック横丁料金/マスターとマンツーマン60分¥2,000、グループ貸切60分¥4,000〜
オプション/延長30分ごとに¥1,500〜【実店舗情報】
住所/東京都新宿区新宿2-5-8 4F
営業時間/毎週月曜、第2・4日曜13:00〜18:00
メニュー/オールドパー ショット80年代¥900〜、クラフトコーラ各種¥900〜
※新型コロナウイルス感染症の状況により、一時休業中。
※新型コロナウイルス感染症の状況により、営業時間等が変更になる場合があります。
- TEXT :
- 津島千佳 ライター・エディター
- PHOTO :
- 小倉雄一郎(小学館)