BMWアルピナ「B3」は、BMW「3シリーズ」をベースに、ドイツのアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社が仕立てたスペシャル・モデルである。モータースポーツでの活躍を旗印として徹底的に高性能を追究した「BMW M」とは違うアプローチで、高級かつ洗練された高速移動体を目指すのがアルピナの特徴だ。

運転技量を格上げするハンドリング性能

20インチの「アルピナ・クラシック鍛造ホイール」(写真)をはく。扁平サイズなのに乗り心地は驚くほどまろやか。
20インチの「アルピナ・クラシック鍛造ホイール」(写真)をはく。扁平サイズなのに乗り心地は驚くほどまろやか。

すでにドイツで生産が開始されている次期型BMW「M3」(480〜510ps)とは同じ基本構造のエンジンを用いているが、こちらアルピナB3は462psと少々ピークパワーが控えめだ。その6気筒エンジンの息吹は、これぞシルキー・シックスと呼ぶべき整然とした穏やかさ。一定速のクルージングでは、本当におとなしい。そうでありながら、いざアクセルペダルにこめる力を強めていけば、どこまでもアウトプットを高め続ける。その最大トルクは700Nm、最高速は303km/hに達するそうで、いずれも次期型M3の値を上回っている。

この強心臓を支えるサスペンションは、電子制御ショックアブソーバーを備え、しなやかに路面を捉え続ける。わずかな操舵をも見逃さず、ドライバーの意思通りにクルマが向きを変えるから、自分の運転が数段うまくなったような感覚を抱くだろう。4WDシステムとの組み合わせにより、多少ラフなアクセルワークにも挙動を乱すことは皆無だ。

独自のサスペンション・セッティングモードを装備

BMW Mモデルがサーキット走行を念頭に置いたキャラクターなのに比べ、アルピナモデルは「サーキットも走れる」ラグジュアリーGTとしての資質を持つ。
BMW Mモデルがサーキット走行を念頭に置いたキャラクターなのに比べ、アルピナモデルは「サーキットも走れる」ラグジュアリーGTとしての資質を持つ。

特筆すべきは、手元のスイッチで選択できるサスペンション・セッティングに通常の3シリーズにはない「コンフォート・プラス」モードが備わることだ。19インチもしくは20インチのタイヤはピレリにより専用開発されたもので、超高速に対応しながら微妙に路面からの衝撃を低減し、洗練された乗り心地を生み出す。

スポーツセダンとして世界屈指の高性能と、スムーズきわまる操縦性、乗員を決して疲れさせない快適性を高い次元でまとめ上げた逸品がBMWアルピナB3である。かつてBMW 3シリーズはコンパクトセダンに位置付けられるサイズ感だったが、いまでは4人の乗員に十分なスペースも提供してくれるから、これ一台でさまざまなシーンに対応できるはずだ。

その歴史はBMWの飛躍とともに

ボディサイドのラインを除けば、外観上で普通のBMWとの大きな違いは感じられない。アンダーステイトメントであることの心地よさを、ぜひあなたも体感してほしい。
ボディサイドのラインを除けば、外観上で普通のBMWとの大きな違いは感じられない。アンダーステイトメントであることの心地よさを、ぜひあなたも体感してほしい。

実はBMW M社(1972年創設)より早く設立(1965年)されたアルピナ社は、BMWドイツ本社がヨーロッパで存在感を高め世界へ羽ばたく過程を二人三脚で過ごしてきた。外部のチューニングパーツ・サプライヤーからBMWと初期段階から密接に開発を行なうコンプリートカー・メーカーに姿を変え、高性能サルーンの逸品を生み出し続けているのだ。

価格は4ドア・セダンの「B3リムジン・アルラッド」(アルラッドとは全輪駆動の意)が1229万円、5ドア・ステーションワゴンの「B3ツーリング・アルラッド」が1258万円。エントリーモデルであるBMW 318iと比べ倍以上もするが、日独の双方のカー・オブ・ザ・イヤーにおいて2020年の「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得した、世界の自動車の中でも稀有なパーフェクションを体験できるとすれば、リーズナブルな数字とさえ表現できる。

問い合わせ先

アルピナ

TEL: 0120-866-250

この記事の執筆者
自動車専門誌「カーグラフィック」編集部勤務を経て、輸入車ブランド、アパレルブランドのマネジャーを歴任。現在は独立してPR業務を営むかたわら、大好きな四輪・二輪の執筆活動にも勤しむ。