名品こそが備える「使う視点」の哲学に触れて
エルメスのカシミア製ブランケットとクッション
楢や欅、銀杏。黄色く色づいた葉が日差しを浴びながら、はらはらと落ちていく。エルメスのカシミア製ブランケットやクッションといえば、まるで季節が移ろっていくようにゆっくりと、職人が伝統的なジャカード織機で手織りする工芸品である。色と線が美しく重なり合う新しいデザインは、1929年の自社広告ポスターに着想を得て『Hドラポー』と名付けられた。1 枚のブランケットには約2kgのカシミア糸を使い、羽根のように軽く仕上げられているのだ。素肌が喜ぶようなそのやわらかさと温もりの虜になる。
ロロ・ピアーナのクラシックコート
厳しい冬の洗礼ともいえる冷たく手強い風。服従する人々を尻目に歩く男の外套は、伝統的なアルスター。ロロ・ピアーナの最もクラシックなコートだ。幅広のラペルを備えたダブルブレストのロングレングスタイプで、その佇まいは威風堂々としている。表地にはレインシステムによる撥水加工が施され、裏地にはカシミアファブリックをあしらい、この時季の風雨さえものともしないのだから当然であろう。由緒あるプリンス・オブ・ウェールズチェックの風格がそれを物語っているようだ。
優雅な時を刻むブレゲ『マリーン アラーム ミュージカル 5547』
静かな好日は、まさに天からの恵み。ゆったりとした気分で、スタートを切る。その始まりを告げるのが『マリーン アラーム ミュージカル 5547』。3時位置のサブダイヤルで設定した時間を、透き通るように軽やかな音色で知らせてくれる、アラーム機構を搭載しているのだ。海洋時計というブレゲのルーツを象徴し、海の世界に光を当てた『マリーン』コレクションの上位モデルで、9時位置には第二時間帯表示ダイヤルまで備えている。彼の地へ馳せる想いは旅情を搔き立て、日常にあっても優雅な時を刻むのだ。
ブルネロ クチネリのカシミア×コットン製のスエット
日中の時間が短くなるからか、どこか慌ただしい気分になる師走の週末。だがそれでも寛ぎのひとときに変わりはない。身を委ねるには自由な時間を満喫するためにブルネロ クチネリがつくったカシミア×コットン製のスエットが理想だ。トップスは襟やそで、すそに、パンツはドローストリング付きの腰にリブを配し、暖かさとリラックス感は満点。しかも、テーラードライクなチョークストライプ柄で驚くほど洗練して見えるのだ。そしてウールにシルクとカシミアを混紡したダウンベストを重ね着すれば、防寒対策も万全のグッドスタイリングが完成する。
ティータイムを上品に変えるディオールのティーポットとカップ
液体がカップに落ちると、テーブルの上を香りのいい湯気が漂う。小雪がちらつくほど冷え込む日は、体を芯から温める紅茶に手が伸びる。直線と曲線がつくるどこか高貴なモチーフが描かれたティーポットやカップは、1955年にクリスチャン・ディオール氏が発表した定番コレクションだ。そして2020年、彼に所縁のある場所やモノに着想を得て特別に調合された紅茶が3種のフレーバーで登場。古くからフランスに伝わるリモージュ焼きの陶器は雪のように白く、特別な水色を美しく際立たせるのだ。
ジョルジオ アルマーニのネイビージャケット
やわらかな日差しの下で暖を取る。この季節は日向と聞いただけでほっこりとした気持ちになれる。では、そんな陽だまりでまどろむような着心地が味わえる服があるといったら信じてもらえるだろうか。それがジョルジオ・アルマーニ氏も愛用する、このダブルブレストのネイビージャケットである。厳選された最高級カシミアのジャージー素材による一枚仕立てで、肌触りや着たときに感じる温もりは見た目からも想像できよう。体を存分に甘やかす服ではあるが、ボタンを留めれば端正な印象にも着られるのでご安心いただきたい。
グレーフランネルで仕立てたボッテガ・ヴェネタのスーツ
葉をまとわぬ木々の凜とした佇まい。グレーフランネルで仕立てたボッテガ・ヴェネタのスーツには、どこかそれに通ずる美しさがある。暮らしに必要なリアルクローズを提案する『ワードローブ01』コレクションで、そこに過度な装飾はない。特筆すべきはリラックステーラリングという手法で気楽さとエレガンスを同居させた点だろう。ゆったりしたシルエットにはほどよい緊張感もあり、それが着る者をそっと飾り立ててくれるのだ。その静かな主張に気高さや力強さがにじんでいる。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2021年冬号より
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- PHOTO :
- 川田有二
- STYLIST :
- 菊池陽之介
- HAIR MAKE :
- MASAYUKI(the VOICE)
- MODEL :
- Daisuke
- Interior coordination :
- 水澗 航