歴史ある英国王室でも、ファッションのカジュアル化の波は否応なしに進んでいるが、そんな潮流にひとり抗う孤高の伊達男が存在する。その男の名はマイケル・オブ・ケントだ。ジョージ5世の孫、そしてケント公ジョージの次男である。彼のスタイルで目を奪われるのは、なんと言っても台襟の極端に高いシャツと、極太のネクタイ。そんな主張の強いVゾーンとタイトなダブルブレストスーツを組み合わせた凜々しい姿は、まるで20世紀初頭のダンディがよみがえったかのようだ。カリスマデザイナーのトム・フォード氏がスーツやタイづくりにおいて影響を受けたというのも、納得の迫力である。

極太タイが象徴する超クラシック志向

ロシア皇帝の風格を持つ孤高のダンディ

【マイケル・オブ・ケント】Michael of Kent/1942年~。ケント公ジョージの末子。現女王エリザベス2世のいとこにあたる人物だ。名門イートン校を卒業後士官への道を進んだ彼は、大佐の肩書きで除隊。その後は各慈善団体の支援や王室の公務に勤いそしむ。ロシア皇帝ニコライ2世(1868~1918年)の遠い親戚にあたり、その風貌が似ていることでも有名。ピンクのチェックが効いたスーツにピンクシャツを合わせ、手首にはオーデマピゲの時計。ただ者ではない風格だ。©Getty Images

'07年にサヴィル・ロウ協会がイタリアの服飾見本市ピッティ・ウォモに出展するときには、彼をイメージキャラクターとして同行させたというほど、英国ファッション業界からの信望も厚いマイケル・オブ・ケント。彼の誇張的なまでにクラシカルなスタイルは、とことんラフな格好が世に浸透した今だからこそ逆に輝き、際立ってくる。断言できることは、英国ファッションブームの象徴となるのは、マイケル・オブ・ケントだ。その凜々しさを見習って、英国クラシックの装いを楽しんではどうだろうか。

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