ラグジュアリーマガジン『Precious』では、4月号から新連載『現代の紳士たち』がスタート! 本連載では毎号、現代において第一線で活躍する男性を取り上げ、その人ならではの考え方や魅力に迫っていきます。
初回である今回お話を伺ったのは、俳優の竹野内 豊さん。竹野内さんは、4月からスタートする月9ドラマ『イチケイのカラス』(フジテレビ系)で、11年ぶりに主演を務めます。俳優として活躍し続けてきたなかでの葛藤や、作品への向き合い方について語ってくださいました。
恋愛ものは、できるだけやりたくないと思ってきた(俳優・竹野内 豊さん)
佇まいのきれいな人だ。言葉を選びながらゆっくり語るときも、ふと微笑む仕草にも、漂う雰囲気がある。23歳で俳優デビュー以来、第一線で活躍し続けてきた。この春、11年ぶりだという月9ドラマ『イチケイのカラス』(フジテレビ系)に主演する。
「今まで連続ドラマ化してこなかった刑事裁判官という職業を描く物語だと聞いてすごく興味を持ちました。単なる裁判ものではなく、被告人それぞれの人生と向き合う、人間ドラマというところにも惹かれましたし、自分が演じるのは、奔放で型破りな裁判官。なかなか面白いヤツですよ」
いつも作品に入るとき、役を演ずるという姿勢は持たないようにしているという。「どう演じようとつくっていくのではなく、現場に入ってから共演者たちとのやりとりで生まれる、瞬間の、その刹那の感情を大切にしたいんですよね」
だが、そういう取り組み方は近年からで、「実は長い間、葛藤の連続でしたよ」と意外なことを口にした。
「20、30代の頃は特にひどかったです。自分の役柄はこうだと枠を決め込んでいて。例えば監督から『こうしてみようか』と要望があっても、はみ出ない。結構、頑固なんです(笑)。変えてしまうことで、自分で思う人物像と違うものになってしまうという怖れや、感性が否定されているような気がして……反発心もありました。今思えば狭量だったのですが」
それは人知れぬ苦悩となって、澱のように「溜まっていった」という。
「まわりからは順風満帆に見えていたでしょうし、贅沢な悩みだったかもしれない。でも自分は決して器用ではないし、ソツなく何でもこなせる役者ではなくて。違うと思いながら、これからもこんなふうに続けていくのかと思うと、不安もプレッシャーも鬱積して、かなり苦しかったですね」
『冷静と情熱のあいだ』(01年)といった、珠玉の恋愛映画にも主演、評価を受けたが、本人は「できるだけ、恋愛ものも避けてきた」という。それは彼なりの、内側の"戦闘"だったのかもしれない。役者としての本質を見てほしいという思いが強かった。
「都会的とか、カッコイイとか言われ……、女性人気があることも、表面的に見られているようで、当時は嫌でした。『自分がやりたかったことは本当にこれだったのか?』って、自身に対する失望感がすごくあった。偏って流されていくことは避けたかったんです。高校生のころから映画に夢中になりましたけど、やはり深く人間を描く作品が好きでしたし、そういう仕事をしていきたかった」
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- PHOTO :
- 秦 淳司(Cyaan)
- STYLIST :
- 島津由行
- HAIR MAKE :
- ヤダチハル
- MODEL :
- 竹野内 豊
- EDIT&WRITING :
- 水田静子、小林桐子(Precious)