ジャケットの仕立てに比べ、製作時間が短いシャツはより早く完成する。前のめりでどんどん作業し、完成した後も変更箇所の直しがすぐにできる。それゆえ、シャツ作りは性に合っていると言う、南祐太さん。

1983年生まれの南さんは、服飾専門学校を卒業後、千葉の実家で服を作っていた。近所にシャツ工場があることを知ったのがシャツ作りのきっかけだ。3年ほど働き、シャツの縫製をひと通り習得し、生産全体の管理を任された。2007年に独立。オーダーメイドのシャツ職人の道を歩みだす。

カジュアルも得意、渾身のキューバシャツ

2年前に誕生したモデル。映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』から着想を得たデザインは、開襟のゆったりとしたシルエットがもち味。前身頃のプリーツ、カフや後身頃のギャザー使いが秀逸だ。素材はアイリッシュリネン。
2年前に誕生したモデル。映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』から着想を得たデザインは、開襟のゆったりとしたシルエットがもち味。前身頃のプリーツ、カフや後身頃のギャザー使いが秀逸だ。素材はアイリッシュリネン。

まず始めたのが、都内の有名シャツ専門店の下請け。その店のデザインやカッティングの基準に従って既製シャツを作り、オーダーメイドのシャツも引き受けるようになる。下請けの仕事を続けるなかで、かねてから夢に描いていた自分のブランドを立ち上げる決心がついた。

東京・三宿のハンカチ専門店でのトランクショーのほか、自宅を改装したショップ兼アトリエでもオーダーを受け始めた。2016年には日本橋にアトリエを構え、オーダーシャツを扱う生地商を介して、三越伊勢丹日本橋店でのトランクショーにも広がった。

袖口のふくらみを綺麗に表現する、実に細かいカフ部分のギャザー。
袖口のふくらみを綺麗に表現する、実に細かいカフ部分のギャザー。
キャプション右
生地をつまんで、1本1本縫製してプリーツを作るかなり微細な仕事。ポケットのプリーツと前身頃のプリーツをぴったりと繫げる。

南さんにとってのオーダーシャツとは、注文主の要望に徹底的に応えること。シャツのデザインをより魅力的にするうえ、シャツに対する不満をビスポークで解決するのが重要。自分の型にはまったものではなく、話し合いから生まれるシャツを考えるのが職人の仕事だと言う。それだからか、南さんのインスタグラムは作ったシャツがすぐにアップされるため、過去の写真を振り返ると、時代に合わせてどんどんシャツの形が変化しているのがわかる。

Shop Data

※営業時間などの詳細は、店舗HPなどでご確認ください。

<出典>
MEN'S Precious春号「この服とスタイルで生きていく!」
【内容紹介】竹野内 豊/この服とスタイルで 生きていく!/「変える」シャツ「、変えない」シャツ/「グレージュ」カジュアル/21世紀の「真名品」/ラグジュアリー・カー&ウォッチ/紳士の名品肌
2021年3月4日発売 ¥1,230(税込)

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この記事の執筆者
TEXT :
MEN'S Precious編集部 
BY :
MEN'S Precious2021年春号より
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PHOTO :
小池紀行(パイルドライバー)
STYLIST :
四方章敬
EDIT :
矢部克已(UFFIZI MEDIA)