ウォッチ&ジュエリージャーナリストの岡村佳代さんによる連載コラム「おしゃべりトゥールビヨン」の第2回。時計やジュエリーに関するいろいろなおしゃべりが、「清く」はないかもしれないけれど、楽しく美しく、「トゥールビヨン」のように回っていくコラムです。岡村さんのジャーナリスト魂とユーモアにあふれた、時計にまつわる「おしゃべり」をお楽しみください。
結局、自民党が圧勝した第48回衆議院選挙でしたが、私は普通の国民としてとは別の目線で選挙の行く末を見守っていました。
この連載の第1回目は、小池百合子東京都知事が愛用している時計にフォーカスをした流れで、同時に書いた2回目のテーマは「女性政治家」。原稿は上がって、写真素材などを集めている間に、いきなり永田町に「解散風」なるものが吹き荒れて選挙戦に突入。とりあえず、選挙後まで原稿を温存することになった次第です。
この短期間で、あれだけ人気が高かった小池都知事がこんなことになってしまうとは、夢にも思いませんでしたが、ある意味、小池都知事の存在もあって割と盛り上がった先の選挙戦。女性政治家たちの悲喜こもごもも、印象的でしたね。
それにしても2017年は、女性代議士が何かと世間の注目を集めた1年でした。
本連載が始まったこともあって、改めて政治家先生たちの腕時計が気になりだし、「ウォッチウォッチング」を続けていた私なので、落選しちゃった「このハゲ―――!」の方とか、グリーン車で手つなぎ爆睡の参議院議員先生(そんなこともありましたっけ感)などがご愛用されている時計もわかっちゃったのですが、ご紹介するのはそれぞれのブランドのPRの方たちに、なんだか申し訳ない気がするので控えます。
時計は、特に女性にとっては「道具」であると同時に「装飾品」でもあるから、そのセレクトによっては好感度にも影響が出てくることを計算されているのでしょうか? 小池都知事同様、オメガ、それも「コンステレーション」をしている女性代議士がチラホラ見受けられました。
一方で当選回数が多かったり、大臣経験があったりする、知名度全国区の女性代議士先生たちの腕時計のセレクトはわりとフリーダムです!
「私調べ」ではありますが、女性政治家でもっとも腕時計のバリエーションが豊富な「腕時計番長」は、稲田朋美前防衛大臣でした!
近年、もっとも愛用されているパートナーウォッチは、フランク ミュラー。もっともアイコニックな樽型の「トノウ カーベックス レディース」のステンレススチールモデルのようです。
そのほかにも、若干気合いを入れたドレスアップシーンでよくつけている、ホワイトストラップの華奢なスクエア形ウォッチ(ピアジェの「ミニ プロトコール」とお見受け!)や、稲田前防衛大臣にしてはやや地味な印象を受けるブラックストラップ×ゴールドのラウンド形ウォッチなど、シーンやファッションによって時計のおしゃれを楽しんでいらっしゃる模様。また、ジュエリーではヴァン クリーフ&アーペルのアイコン、「アルハンブラ」がたいそうお気に入りの様子で、ネックレスだけでも、色(素材)やタイプ違いで4~5種類のバリエーションを持っているのを確認しました。
個性的なファッションセンスでしばしば注目されてきた稲田前防衛大臣ですが、ラグジュアリーブランドがかなりお好きなようですね。
さすがに選挙戦中は、それらの、「ひと目でわかる!」的な、ブランドの商品を身につけるのは封印していたようですが。
そういえば、ヴァン クリーフ&アーペルの「アルハンブラ」のネックレスといえば、今回の選挙でも早々と当確を出された、小渕優子衆議院議員も愛用されていましたっけ。その小渕さんが長年よくつけていらっしゃる時計は、カルティエの「タンク フランセーズ」。ステンレススチールのシンプルなモデルで、クオーツムーブメントのSMサイズのようです。カルティエのなかでも、小渕さん世代のキャリア女性の間でも根強い人気を誇る「等身大」のセレクトには、好感がもてますね!
同じカルティエでも、小渕優子さんより一世代お姉さんの片山さつき参議院議員は、「バロン ブルー ドゥ カルティエ」をセレクト。こちらも素材はステンレススチール、クオーツムーブメントの28mmで、ここ数年間ずっと愛用されています。片山さんくらい、女の、そして人生の年輪を重ねられた女性なら、その迫力で無垢のゴールドの時計も余裕でお似合いになられると思うけれど、頭のいい片山さんのことですから、国民の目もよく考慮されてのこのセレクトなのでしょうね。
こうしていろいろと「ウォッチウォッチング」を重ねてきたなかで、個人的にいちばんインパクトを受けたのが、野田聖子衆議院議員。ちょっと前に、ご主人のことなどで文春砲を浴びていらっしゃいましたが、今回の選挙でも圧倒的な強さで当選されました。政治家としてもキャリアを重ねていらっしゃるだけあって、「時計番長」稲田前防衛大臣に引けをとらないバリエーションをお持ちのようですが、近年はもっぱらルイ・ヴィトンの「タンブール」を着用されています。先日の選挙の開票速報番組で中継されていた「バンザーイ!」当選シーンでも、袖口にこの時計が光っていました。
腕時計でルイ・ヴィトン、しかもシックなブラウンのダイヤル&ストラップをセレクトするあたり、いい意味で無難に終わらせない、大人の女性の主張が感じられますよね! 早々に次期・自民党総裁選に出られると表明された野田総務大臣。時計選びのセンスからも、「自分の意志」というのが一本通った政治家なのでは…と、私は一目置きました。
こうなってくると、男性政治家の腕時計も気になって仕方がなくなってきたので、現在鋭意ウォッチング&リサーチを重ねていますが、あまり個性的でキャラだった時計のおしゃれを楽しんでいらっしゃる政治家先生は少なさそうです。
確かに、高価過ぎたり華美過ぎたりする腕時計している政治家先生って――嫉妬の対象になりそうだし、ちょっと信頼できない感じがしてしまいますものね。逆にリシャール ミルくらい突き抜けた時計道を歩んでいる先生がいたら、おもしろいから応援したくなってしまうかもしれないけれど。
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- TEXT :
- 岡村佳代さん 時計&ジュエリージャーナリスト