ロンジンが創業当時からこだわる「才色兼備」の在り方

ジュエリー&時計ジャーナリストの本間恵子さんが、2021年の新作ウォッチからおすすめアイテムをご紹介。今回、本間さんがクローズアップしたのは、ロンジン(LONGINES)とラドー(RADO)の白い時計です。

夏に向かい、白のタイムピースは装いのアクセントになるパワーアイテム。クラシカルな美しさを昇華させ続けるロンジン、モダンな美しさをハイテク素材で作り上げるラドー、それぞれのブランドの姿勢からタイムピースの魅力に迫ります。

まずはロンジンの歴史からたどっていきましょう。創立は1832年。オーギュスト・アガシが、ブランドの前身となるアトリエ「レギュル・ジュンヌ」を開いたことから始まります。後継者アーネスト・フランシロンがスイスのシュズ湖畔、レ・ロンジンに時計の部品から組み立てまで一貫製作する工場を建設。これがブランド名となりました。

19世紀末より小型ムーブメントの開発に成功し、コンパクトな腕時計やペンダントウォッチを製作。女性たちを夢中にします。

エレガンスを追求するもう一方で、歴史的な冒険家たちも支えます。1927年、世界初太平洋横断単独無着陸に成功したチャールズ・リンドバーグのその記録的飛行は、ロンジンによって公式に計測が行われました。美しさだけでなく、正確さを併せ持つタイムピースブランドとして世界中に知れ渡ったのです。

時代を経ても、その姿勢は変わりません。美しい時間を告げる…歴史に裏打ちされた革新と技術を時計づくりに注ぎ込むことが、このブランドが貫くポリシーです。

「ロンジンが長年追求しているテーマは、伝統とエレガンス。エレガンスはその人のアティテュード(ふるまいや態度、スタイル)に現れるものというモットーで時計づくりをしているメゾンです。ですからどのモデルにも気品がほのかに漂い、身につける人の仕草を優雅に演出してくれるのです」(本間さん)

ロンジンの最新「白いタイムピース」2選

■1:気品漂う「ラ グラン クラシック ドゥ ロンジン」

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クラシカルな表情ながら、4.5mm薄型ケースに現代的な機能性と心地よい着用感を宿して

ブランドの中でも不動の人気を誇るコレクション「ラ グラン クラシック ドゥ ロンジン」。1992年に発表された時から、コレクションの名前通りにクラシカルな美を追求してきた、だれからも愛されるタイムピースです。

ボディは4.5㎜と超薄型。ラグはストラップと文字盤をセンターにつなぐ仕様です。今回ピックアップしたホワイトストラップの時計は、マザーオブパールの文字盤のピュアな艶めきとともに、肌見せが多い夏の手元を上品に演出してくれます。

「ひと言で表すなら、“毎日気軽に楽しめるデイリーユースの上質ウォッチ”。ごくシンプルなデザインだからどんな着こなしにも難なく合わせられますし、飽きのこないクラシカルな顔立ちは流行に左右されることがありません。直径29㎜のフェミニンなサイズも好感度が高いですね」(本間さん)

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「ラ グラン クラシック ドゥ ロンジン」¥191,400 ●ケース:ステンレススティール ●ケースサイズ:直径29㎜ ●ダイヤル:マザーオブパール×ダイヤモンド ●ストラップ:レザー ●ムーブメント:クォーツ  (C)LONGINES

 ■2:心豊かな時間を届ける「ロンジン ドルチェヴィータ」

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柔らかなラインをまとったケースが優美さを演出

1997年にデビューした「ロンジン ドルチェヴィータ」は、時計における“エレガンス”を現代的に解釈したコレクション。女性の手首に映えるレクタンギュラースタイルを追求したデザインが特徴です。

今年の新作は、アールデコ時代を彷彿させる新デザインのセンターダイヤル&スモールセコンド、長めのブルースティール針、ストラップのインターチェンジブル仕様へ。取り上げたタイムピースはレクタンギュラーの繊細なケースにギョウシェが施され、サイドにダイヤモンドを配した白いモデル。優雅な佇まいが、イタリア語のコレクション名「ドルチェヴィータ」=「豊かな人生」と重なります。

「文字盤にフランケと呼ばれる彫りがほどこされていて、高級感があります。6時位置のスモールセコンド(秒針)もヴィンテージ感たっぷり。このモデルは夏らしいホワイトのストラップになっていますが、交換は自分で簡単にできます。他の色のストラップも揃えておけば、シーズンレスにフル活用できるはず」(本間さん)

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「ドルチェヴィータ」¥404,800 ●ケース:ステンレススティール×ダイヤモンド ●ケースサイズ:縦20.80×32㎜ ●ダイヤル:シルバーフランケ ●ストラップ:レザー(インターチェンジブル) ●ムーブメント:クォーツ (C)LONGINES

問い合わせ先

ロンジン カスタマーサービス

TEL:03-6254-7350

ハイテクセラミックのパイオニア「ラドー」の魅力とは?

ラドーの歴史もたどりましょう。

ラドーの前身、シュルップ・アンド・カンパニーがスイスに誕生したのは1917年です。そして1957年にムーブメント製造から時計製造へと転換、社名をラドーへ変更し、初のコレクション「ゴールデン ホース」を発表。
以降、独自のウォッチ道を歩き始めます。その最たるものが素材、ハイテクセラミックのタイムピースです。

1980年代に入ると、ラドーは、硬度に優れ、軽量で着用感もよく、傷がつきにくく、低アレルギーという条件を満たすハイテクセラミックに着目しました。レーシングカーのブレーキディスクや宇宙船の熱防護システムなど、高度な機能が求められる用途に使われる素材です。今でこそ、セラミックのウォッチを手がけているメゾンやブランドは多数ありますが、当時は画期的なチョイスでした。

「ハイテクセラミックの大きなメリットは、キズがつきにくいこと。ジュエリーと重ねづけしたいけれど時計がキズついてしまうことが心配、という人におすすめしたい素材です。またハイテクセラミックはとても軽く、なめらかで心地よい肌ざわり。汗をかく夏場は金属アレルギーも気になりますが、この素材なら安心してつけられます」(本間さん)

ラドーの最新「白いタイムピース」2選

■1:時計の概念を越えたシンプルモダンテイスト

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「トゥルー シンライン」というコレクション名どおり、5mmの薄さを誇る画期的なモノブロックケース。総重量はわずか83g!

アーティストなどを起用し、ドキッとするタイムピースを発表してきた歴史をもつラドー。今年は、世界的なトレンドリサーチャーのリドヴィッジ・エデルコートさんの「Less is more」(少ないほどよい)からインスパイアを受けた、シンプルで斬新なタイムピースを発表しました。

文字盤をじっと見つめることが「日々の喧騒から離れる冥想の時間」という発想に結びつき、ケース、針、文字盤は白、文字盤を覆う風防にも艶消しの白いサファイアガラスを採用しています。

「ミルクのような白い霧の向こうに時計の針が霞んで見える…というアイデアに驚かされました。時間に追われることなく、ゆったりした気持ちを取り戻さなくちゃ! という気持ちにさせられる哲学的なウォッチですね。時計の針にいたるまでオールホワイトでクールにまとめたデザインは、スタイリッシュな印象を与えてくれます」(本間さん)

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「トゥルー シンライン スティルネス」¥231,000 ●ケース:ハイテクセラミック ●ケースサイズ:縦43.3×横39㎜ ●ダイヤル:ホワイト ●ブレスレット:ハイテクセラミック ●ムーブメント:クォーツ (C)RADO

■2:唯一無二!ユニークなデザインのスクエアウォッチ

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針が覗く小窓にはサファイアクリスタル、ケースバックには金属アレルギーを起こしにくいチタンを採用

イタリア人とドイツ人のデザイナーが手がけた、ラドーのファニーフェイスなタイムピースです。3針が小窓からわずかに覗く時計は、他では見ることないデザイン。

時計を「どこまで遊ぶか」という議論があるかもしれませんが、このユニークさは、発売と同時にミニマム世代から絶大の支持を得ているそうです。素材のトップランナー的地位を誇るかのように、ハイテクセラミックをふんだんに使ったウォッチ。時計好きなら見逃す手はありません。

「遊び心たっぷりの不思議な存在感が魅力。かつて狩猟を愛する紳士たちは、激しい動きで風防ガラスが壊れるのを防ぐために、こんな文字盤カバー付きの懐中時計を身につけていたのです。それを現代風に再解釈したのがこのウォッチ。クールなアクセサリーを楽しむ感覚で気負わずにつけこなしたら、きっと視線が手元に集まるでしょう」(本間さん)

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「トゥルー スクエア フォルマファンタズマ」¥286,000 ●ケース:ハイテクセラミック ●ケースサイズ:縦44.2×横38㎜ ●ブレスレット:ハイテクセラミック ●ムーブメント:自動巻き (C)RADO

問い合わせ先

ラドー

TEL:03-6254-7330


以上、ロンジンの「ラ グラン クラシック ドゥ ロンジン」「ドルチェヴィータ」とラドーの「トゥルー シンライン スティルネス」「トゥルー スクエア フォルマファンタズマ」のタイムピースをお届けしました。

ウォッチへの愛情は一歩も譲らないほど深い2つのブランド。それぞれがクラシック、モダン、各々の解釈で美を提供する…。セレクトする立場になれば、究極の選択かもしれません。陽射しが眩しいシーズンにまとう白Tシャツの腕にはどちらの時計を? 確かな審美眼をもつ女性の本領発揮です。

※掲載した商品の価格は、すべて税込みです。

本間恵子さん
ジュエリー&時計ジャーナリスト
(ほんま けいこ)東京都出身。武蔵野美術大学を卒業後、某宝飾メーカーでデザイナーとして勤務し、その知識を生かしてジュエリー専門誌のエディターに転身。その後フリーランスとなり、国内外の見本市や展示会を取材して、モード誌やアートマガジン、新聞などに寄稿。トークショーやテレビコメンテーターなどをこなしながら、アンティークジュエリーの研究も行っている。夫は建築家。好きなもの:バンドデシネ、マンガ、美術史、トールキンの著作。

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この記事の執筆者
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WRITING :
菅野悦子
EDIT :
谷 花生