スーパーカーやプレミアムサルーンのブランドを傘下に持つフォルクスワーゲンは、従来小型実用車を得意としてきた。それでも近年はラインアップを増やしつつあり、今秋からは新たなフラッグシップモデルとして、「アルテオン」を日本に導入した。最大の見どころは、4ドアクーペと呼ぶにふさわしい流麗なデインだ。同社のサルーン、パサートよりもひと回り大きいそのスタイリングはこれ見よがしなところがなく、長く乗っても飽きのこないフォルクスワーゲンの哲学に乗っ取ったもの。それでも、日本導入モデル(2グレード)はすべて専用の外装パーツを装着したRライン仕様ということもあり、なかなかアグレッシブだ。

さりげない「280馬力」の衝撃

おなじみのVW顔ながら、ワイドなグリルとヘッドライトで、力強い印象を受ける。
おなじみのVW顔ながら、ワイドなグリルとヘッドライトで、力強い印象を受ける。

 ドイツ車らしいフラットで気持ちいい乗り味も、「アルテオン」の魅力だ。日本導入モデルはすべて4WDで、路面状況を問わず安心して走れるのもいい。エンジンは2リッターの4気筒なのだが、試乗後に資料を読むと、最高出力が280馬力とあって驚いた。日本では1990年代まで、自動車メーカーが最高出力を280馬力までに自主規制していたことはご存知だろう。当時を知る世代としては、夢の数値だった「280」が、わずか2リッターの、しかもスポーツカーではないクルマがいとも簡単に達成していることに、時代の移ろいを感じ得ない。もっとも、エンジンのフィーリングはいたっておとなしい。マイルドにパワーを上乗せするターボの効果もあり、ドカンと炸裂するパワーを腕でねじ伏せるといった類のものではない。とにかく、すべてがスムーズで、ストレスフリーなのだ。

トランク部分はハッチ式で、いわゆる5ドアハッチバックなのだが、巧みなルーフエンドの処理により、クーペらしい美しさを表現している。
トランク部分はハッチ式で、いわゆる5ドアハッチバックなのだが、巧みなルーフエンドの処理により、クーペらしい美しさを表現している。

長く乗ってわかるVWの魅力

機能と操作性重視のコクピットは、VWのすべてのモデルに共通するもの。先進のインフォテイメントシステムやメーターパネル内に表示できるナビも備え、長く使っても不足を感じることはない。
機能と操作性重視のコクピットは、VWのすべてのモデルに共通するもの。先進のインフォテイメントシステムやメーターパネル内に表示できるナビも備え、長く使っても不足を感じることはない。

「アルテオン」は、あくまでもフォルクスワーゲンにおけるフラッグシップであり、ラグジュアリーな部分に重点を置くなら、ほかのブランドにもっとキャラの立ったクルマはある。ただ、クルマ選びが価格帯や車格だけで比較するべきではないことは、経験豊富な大人のドライバーならご存知のはず。「アルテオン」を選ぶ理由、それは、クリーンなデザインと(現時点での)最新の快適・安全装備を不足なく揃えた使い心地の良さにあり、しかも長い時間を共にするパートナーとして、じんわりと心に訴えかけてくる味がある。少なくとも、そのスタイリングにピンときたら、買って後悔することはないと保証する。

〈フォルクスワーゲン・アルテオン Rライン 4モーション〉 
全長×全幅×全高:4,865×1,875×1,435㎜
車両重量:1,700kg
排気量:1,984cc
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
最高出力:280PS/5,600〜6,500rpm
最大トルク:350Nm/1,700〜5,600rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:7AT(DSG)
価格:549万円(税込み)
■問い合わせ先 フォルクスワーゲン
TEL:0120・993・199
http://www.volkswagen.co.jp

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。