一眼レフカメラを首から下げて、そこかしこで写真を撮る男たち・・・。かつて、海外の観光地では、日本人旅行客のそんな光景が見られた。では、今はどうか。実のところ一眼レフがスマホに変わっただけで、何も変わっていない。あらゆる場所で、あらゆる対象に向けて、老いも若きも写真を撮りまくっている。もはやそれは、記録のためというよりも、撮影することで「そこに行った感」を満足させているだけではないか。スマホ撮影を全否定するつもりはないが、大人の男なら、特別な時間、特別な場所、特別な人を撮るのにふさわしいカメラを持つべきだ。所有する楽しさも味わえる名機を、ここに紹介する。
フィルム式ヴィンテージカメラ
本当に価値のあるものを、長く使い続ける。そんな主義を貫き通すには、カメラも機械式に限る。20世紀の半ばに黄金期を迎えたフィルムカメラの名機たちはしっかりと整備すれば、現在でも十分に活躍してくれる。しかも、最新のデジタルカメラに勝るとも劣らない豊かな階調の写真を撮ることができる。それだけでなくその使い手を、知的な存在として演出してくれるのだ。中古市場で比較的容易に手に入る点も魅力である。
『ライカ 』の 中の 『ライカ 』と 呼べる20 世紀のマスターピース
現在も『ライカ』を代表するシステム名として継承されている『M』の初号機で、1954年に発売開始された。イニシャルのMは、ドイツ語のメスズハー(距離計の意)を示し、正確無比なピント合わせを可能とするファインダーシステムの優秀さは他に類を見ない。ファインダーの視界には、写真として切り取られる範囲が鮮明にブライトフレームで示され、周囲の状況と同時に観察できる。刻々と変化する状況の中で瞬時に構図を決めて撮影する、スナップショットの技法を発明したアンリ・カルティエ=ブレッソンをはじめとする、数々の写真家が愛したカメラとしても知られている。
極めて上質な写真が撮影できる 中判一眼レフの王者
ライカ判の35mmフィルムよりも大きなロールフィルムを用い、6×6cmの正方形で世界を切り取るスウェーデン製の一眼レフカメラ。写真の500C型は1957年に登場。シャッターはレンズ側に装備されており、フラッシュ撮影時の高速シンクロを可能とする。交換レンズは旧西ドイツのカール・ツァイス製で魚眼から超望遠まで用意された世界最高峰のシステムカメラだった。汎用性の高さと驚くべき高画質を持つことから、一流フォトグラファーの証となる機材として憧れられていた存在。標準レンズの『プラナー80mm F2.8』とウエストレベルファインダーを組み合わせると思いのほかコンパクトだ。
プロフェッショナルにも愛用された二眼レフの定番
世界中のカメラメーカーが追いかけ続けた二眼レフの基準、それが『ローライフレックス』だ。『ハッセルブラッド』と同様ロールフィルムを用いる6×6フォーマットで、フィルム装塡は独自の精巧な機構によるフルオートマット式なので素早く失敗なく行える。大型のクランク操作でフィルム巻き上げとシャッターチャージを行う。シャッター音は極めて静寂であり、ウエストレベルファインダーでカメラの上から覗き込むようにして撮影するので被写体への威圧感が少ない。3.5Fのレンズは『プラナー75mm F3.5』。『ハッセルブラッド』用より5mm短いので微妙に画角が広い。
超高画質デジタルカメラ
いわゆるプロ仕様のデジタル一眼レフとは毛色の異なる、引き締まったフォルムのボディに最先端の技術を凝縮したモンスターカメラ。フルサイズ以上の撮像素子サイズを持ちミラーレスタイプで超高画質を実現する未来志向の機種を使いこなす。これが21世紀風のダンディズムだ。
スウェーデン製の中判デジタルカメラ
中判デジタルとしては驚くほどコンパクトなスタイリングにまとめられたレンズ交換式ミラーレス一眼カメラ。画質的に有利とされるフルサイズよりさらに大きな撮像素子(43.8×32.9mm)を搭載しながら操作性にも優れる。設計・デザイン・製造すべてをスウェーデンで行っている。
各種のライカレンズで撮影可能なミラーレス一眼
SLとはドイツ語でシュピーゲルロスすなわちミラーレスを表す。フルサイズの撮像素子を持ち、専用設計のライカSL用レンズに加え、マウントアダプターを介してレンジファインダー機であるライカMシステムや35㎜一眼レフのライカRシステムのレンズを装着して撮影することも可能な万能機だ。
高画素フルサイズをコンパクトボディに凝縮
35mmフィルムカメラの1コマと同じフルサイズの撮像素子を持つ、ミラーレス一眼の嚆矢として登場した『α7』シリーズには、純正のソニーおよびツァイス銘の優秀なレンズが用意されている。通のあいだでは『α7』にマウントアダプターを介して『ライカ』のレンズで撮るのがトレンドだ。
日常使いできるオートマチックカメラ
ここに登場する4種類のデジタルカメラはいずれも本格的なデジタル一眼レフに採用されているのと同じAPS-Cサイズの撮像素子を搭載する実力派だ。その姿は威圧的でなく、スタイリッシュ。それぞれ独自の個性を発揮しているのは外観だけでなく操作性や撮影結果にもキャラクターがある。あなたの相棒としてふさわしいのは、どのモデルだろうか?
光学式と電子式を備え切り替え可能なファインダー
世界で唯一のハイブリッドビューファインダーは、光学ファインダーと電子ファインダーをレバー操作ひとつで切り替えられる。光学ファインダーの右下隅に小型電子ファインダーを表示するエレクトロニックレンジファインダー機能も搭載。優秀な描写性能の交換レンズも豊富に用意されている。
変わらぬスタイルが魅力の広角専用コンパクト機
2005年の登場以来、そのスタイルを変えずに進化し続けているのが『GR Digital』シリーズだ。コンパクトなボディにはズームレンズではなく、あえて高性能な単焦点の広角レンズを搭載して画質を追求するというコンセプトは健在。前機種から撮像素子をAPS-Cタイプへと大型化させ、『GRⅡ』ではWi-FiとNFC機能も追加されたが基本的なフォルムやサイズ感はキープされている。
操作性を重視したミラーレス一眼
カメラに顔を近づけ覗いて撮れる電子ファインダーを搭載した、一眼レフのような容姿のミラーレス一眼。一眼レフと比較するとボディも交換レンズもコンパクトなサイズ感で、持ち運びのストレスが軽減されている。操作性やオートフォーカスの反応のよさも追求されている。
独自のスタイリングと個性的な描写力
突飛なフォルムだが意外なほどホールドしやすいボディに、一般的なデジタルカメラに使用されている撮像素子とは原理の異なるFoveonセンサーを搭載。コンパクトなボディから想像できない解像力の高い画像を撮影できる。画角は35mm換算で45mmの単焦点標準レンズを固定装着。超広角のDP0、広角のDP1、中望遠のDP3も用意されており、好みの画角から選べる。
以上、フィルム式カメラ、好感度カメラ、オートマティックカメラの3種類を紹介しました。被写体によって使い分けることで綺麗で独創的な写真が撮れますが、まずはこだわりの1機を選んでみてはいかがでしょうか。
※参考価格はすべて編集部調べです。※2016年冬号掲載時の情報です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2016年 冬号ラグジュアリーカメラ名機列伝より
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- クレジット :
- 撮影/唐澤光也(パイルドライバー/静物)スタイリスト/大西陽一(RESPECT)文/ガンダーラ井上 構成/山下英介(本誌)