クラシックなジェントルマンスタイルを踏襲し、コリン・ファースの次世代を代表する俳優ベネディクト・カンバーバッチ、典型的なジェントルマンスタイルの担い手マシュー・グッド、知的な雰囲気とロックな雰囲気を併せ持ち、独特の摩訶不思議な魅力があるビル・ナイ。現代のジェントルマンの姿はどうあるべきなのか?3人のスタイルから考察する。
英国俳優随一のアカデミックな個性派/ベネディクト・カンバーバッチ
![ベネディクト・カンバーバッチ/1976年、イングランド、ロンドン生まれ。俳優一家に育ち、名門ハーロー校時代に演劇を始め、ロンドン音楽演劇アカデミー卒。大英帝国憲章CBE受勲、代表作はBBCテレビシリーズ『シャーロック』(2010年~)、映画『イミテーション・ゲーム』(2014年)等多数。](https://precious.ismcdn.jp/mwimgs/a/d/720mw/img_ad12ea1a28a0667d77d55dff12aa9488696255.jpg)
大ヒットTVシリーズ『シャーロック』の主人公、探偵シャーロック・ホームズや、映画『イミテーション・ゲーム』のアラン・チューリングなど、ベネディクト・カンバーバッチが演じるのは名門パブリックスクール卒という本人の出自と相まって、逸脱した頭脳ゆえに周囲から理解されない天才が多い。
特に、映画『イミテーション・ゲーム』では第二次世界大戦中、暗号解読を成し遂げ、英国を勝利に導いたにもかかわらず、終戦後に当時違法だった同性間性行為により訴追され、強制的な薬物治療の最中に自殺した非業の生涯を描く。惜しくも受賞は逃したが、圧倒的な演技力が際立った本作は高い評価を受け、アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされた。クラシックなジェントルマンスタイルを踏襲し、コリン・ファースの次世代を代表する俳優のひとりだ。
今最もスタイリッシュな紳士を演じる名脇役/マシュー・グッド
![マシュー・グッド/1978年、イングランド、デヴォン州生まれ。俳優。ウディ・アレン監督『マッチポイント』(2005年)で頭角を現し、『シングルマン』(2009年)、テレビシリーズ『ダウントン・アビー』(2014年)、『ザ・クラウン』(2016年~)ではエミー賞にノミネートの実力派。](https://precious.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/720mw/img_7e1af863e59dafb5d6c18a531a083151134248.jpg)
この映画で、同じ暗号解読チームでありながら対立する役を演じたのがマシュー・グッドだ。カンバーバッチとグッドは名門大学出身の秀才の役が多いがその個性は対照的である。最近ではネットフリックスの『ザ・クラウン』で、マーガレット王女の夫を演じて話題となった。
ヒュー・グラントの得意な役柄は憎めない二枚目だが、グッドは堂に入ったウェルドレッサーぶりでスーツの着こなしもまったく隙がない。首が長く、なで肩で長身だから英国貴族や王族役も難なくこなし、嫌味なまでの二枚目ぶりを発揮する。ヒュー・グラントの次世代、典型的なジェントルマンスタイルの担い手だろう。
年齢を経てなお輝く個性派俳優の代表格/ビル・ナイ
![ビル・ナイ/1949年、イングランド、サリー州生まれ。俳優。『ラブ・アクチュアリー』(2003年)で英国アカデミー助演男優賞、『ナターシャの歌に』(2005年)でゴールデングローブ賞を受賞。『無実はさいなむ』(2018年)主演、最新作は『ミナマタ』(2021年公開予定)と活躍中。](https://precious.ismcdn.jp/mwimgs/0/5/720mw/img_05e7d97e737d8b75a0a9eda2548ac954141926.jpg)
最後は唯一無二の個性を発揮する俳優ビル・ナイの登場だ。映画『ラブ・アクチュアリー』で売れない元ロック・シンガー役を熱演。トレードマークは横向きVサインにややずれた眼鏡。世間の常識では格好悪いことが格好よく、一見、普通の吊るしのようなスーツを着ることが強烈な個性になるという高等技術をもっている。知的な雰囲気とロックな雰囲気を併せ持ち、独特の摩訶不思議な魅力はビル・ナイだけのものだ。
以前、ロンドンのピカデリーを夜中に歩いていたら、黒いチェスターフィールドコートを着た、見覚えのある人物が向こうからやってきた。なんとビル・ナイその人だった。映画のイメージと寸分変わらない。あれが彼のスタイルなのだ。
彼らに共通するのは強烈な個性をもち、それを独自のスタイルへと昇華していること。これこそがこれからのジェントルマンの在り方だ。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2021年春号
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- PHOTO :
- Getty Images
- WRITING :
- 長谷川喜美(ジャーナリスト)