人と交わらないことをよしとするニューノーマルライフ、鬱々としがちではあるが、どんな状況下にあろうとも自分のご機嫌くらいは自分でとらねば。

その術を知っていること、持っていることも、紳士の嗜み。

心身の健康維持のために骨休めが必要とあらば、感染対策を万全にしたうえで極上のグランドツーリングカーに乗り、走りと湯と美食の贅を尽くすのはいかがだろう。

行き先はルートアクセスのよい「お忍びの宿」がいい。ドアtoドアのクルマ旅かつ、客室に湯殿を備えたプライベート重視の宿なら、道中でも滞在先でも周囲と非接触で羽根を伸ばせる。ドライバーといえど、夜にはお酒に酔いしれるのも一興だ。

復興の願いを込めて、一路「熱海」へ向かう

行き先は復興応援の願いも込めて熱海へ。2021年7月頭の土石流災害以来通行止めと なっていた国道135号線は一旦開通したが、捜索復旧活動の邪魔にならぬようロード プランにはぜひご配慮を。熱海市公式ウェブサイトの交通情報が参考になる。
行き先は復興応援の願いも込めて熱海へ。2021年7月頭の土石流災害以来通行止めとなっていた国道135号線は一旦開通したが、捜索復旧活動の邪魔にならぬようロードプランにはぜひご配慮を。熱海市公式ウェブサイトの交通情報が参考になる。

メンズプレシャスでもお馴染みの名車「マクラーレンGT」に乗り、ロングドライブに出かけてきた。行き先は熱海。痛ましい土石流災害の捜索・復旧が未だ続くさなか...と思案したが、今こそ熱海の旅館やホテルに滞在することが復興支援になる、と迎え入れられた。もちろん感染対策に加え、復旧活動や生活道路への配慮は欠かせない。熱海ドライブの定番、熱海ビーチラインや国道135号線は避け、箱根ターンパイク→伊豆スカイラインの山道コースを駆けることに。このルートは自動車メーカーの試乗コースにもよく使われる有名なワインディングロードだが、割と空いているので走りやすくおすすめだ。

いつまでも乗り続け、どこまでも走っていたくなる、その理由とは

熱海城から初島を望む。
熱海城から初島を望む。

F1マシンのコンストラクターがルーツのマクラーレン。ドライビングパフォーマンスに特化したレーシングカー由来のラインナップが並ぶなかで、もっともオンロード指向であるのがこの「マクラーレンGT」だ。V8ツインターボ、620馬力のハイスペックでマクラーレンらしいパフォーマンス性能を備えながら、ショックのない滑らかなギア変速や、路面の障害を心地よく吸収するサスペンションなど、長い旅路を快適に走るためのグランツアラーらしいセッティングがなされている。

ゴルフバッグや旅行鞄などを収納できる、570Lものラゲッジスペースを有し、室内は、上質なレザーを敷き詰めたスポーティシックな仕上がり。洗練されたインテリアデザインは淑女をエスコートするにも喜ばれるし、女性にステアリングを譲ってもサマになる。

バケットシートもサイドシルも上質なレザーで包まれたスポーティシックな内装。人 間工学に基づいて設計されたシートは、位置の前後や座面の高低だけでなく、ラン バーサポートで腰のホールド具合を微細にカスタマイズができるため、あなたが細 マッチョだろうが、ぽっちゃりだろうが完全にフィットし、正しいドライビング姿勢 に導いてくれる。正しいドライビング姿勢が保てると、体への負荷は少ない。
バケットシートもサイドシルも上質なレザーで包まれたスポーティシックな内装。人間工学に基づいて設計されたシートは、位置の前後や座面の高低だけでなく、ランバーサポートで腰のホールド具合を微細にカスタマイズができるため、あなたが細マッチョだろうが、ぽっちゃりだろうが完全にフィットし、正しいドライビング姿勢に導いてくれる。正しいドライビング姿勢が保てると、体への負荷は少ない。
デザイン性だけでなく、室内を明るく、視認性を高めるにも機能するルーフトップガラス。景色 の移ろいを全方位から体感することができ、パンセンジャーの楽しさも増し増しだ。
デザイン性だけでなく、室内を明るく、視認性を高めるにも機能するルーフトップガラス。景色の移ろいを全方位から体感することができ、パッセンジャーの楽しさも増しましだ。
ハッチタイプのトランクにはゴルフバッグも収納可能。ボンネット下にも収納スペー スがある。
ハッチタイプのトランクにはゴルフバッグも収納可能。ボンネット下にも収納スペースがある。

マクラーレン オーナーやモータージャーナリストなど、実際にマクラーレンのクルマを操った人々が口を揃えるのは「いつまでもどこまでも乗っていたくなるクルマ」だということ。

運転していて楽しいうえに疲れにくいのだ。

これは720Sなどよりハイパワーなレンジのモデルにも共通するマクラーレンの特性である。ドライバーが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、人体に負荷がかかりにくい設計が緻密になされている。これこそレーシングコンストラクターのDNAなのだろう。

そのマクラーレンが長距離を快適に走るためにつくった「GT(グランドツーリング)」は、もう「疲れ知らずなスーパーカー」と言っていい。

だから、いつまでも乗り、どこまでも走って行きたくなる。

経験値はさほど高くない私も、同様の感想を持った。東京ー熱海間をほぼノンストップで走っても、まだ飽き足りない。目的地が近づくにつれ、安着の喜びより残念な気持ちの方が強かった。夢中になって読み進めた小説の、結末を迎えてほしくない気分と似ている。ずっとこの世界に浸っていたい、というような。

意表をつくほどの運転しやすさ

手づくりで希少性のあるスーパーカーゆえ価格的ハードルはもちろんあるが、運転に ついては意外にも一見さんお断りでは全然ない。女性に運転席を譲って、あなたは パッセンジャーシートで悠然と、というドライブスタイルも楽しめそう。
手づくりで希少性のあるスーパーカーゆえ価格的ハードルはもちろんあるが、運転については意外にも「一見さんお断り」では全然ない。女性に運転席を譲って、あなたはパッセンジャーシートで悠然と、というドライブスタイルも楽しめそう。

ブランドイメージやクルマのルックスから、いかにもテクニックを求められそうなイメージがあるが、実はとても運転しやすい。

シートに腰を沈めてみると、予想以上に車内が明るく開放的。長すぎないノーズでフロントの見切りがよい上に、ガラストップルーフのおかげで頭上や後方にも視野が広がっている。視認性の高さはドライバーに安心を与える。どんな場面においても「周りがよく見えてる」って大事なこと。よく見えて車両感覚が掴みやすいから「横幅結構あるけどぶつけちゃわないかしら」といった不安はさっさと払拭され、堂々とステアリングを操れる。

アクセルワークはペダルに伝えた意のままを体現してくれ、スムーズな加速の立ち上がりはうるさすぎることなく格別の心地よさ。正直に打ち明けると、ブレーキの遊び幅に減速のタイミングがすぐには掴みきれず、最初は戸惑った。一方、そのおかげでクルマを痛めつける急ブレーキには一度も陥らなかった。

ブレーキングのグラデーションの厚さは法定速度を超え、レース級の速度で走らせた際にはさらに生きてくるものなのだと思う。運転しやすく広く門戸をひらいているとはいえ、簡単に攻略し尽くせるクルマではない、ということなのかもしれない。

私はハンドルもパワートレインもノーマル(コンフォート)モードで走り、それで充分にエキサイトしたのだが、上級者にはスポーツモードやトラックモードなど、更なるディープな世界もある。

気ままなだけでもストイックなだけでもない、リラックスした高揚ドライビングを味わわせてくれる一台だ。

極上ドライブの先のスモールラグリュアリーホテルという桃源郷

木々が生い茂る庭園の先に歴史ある数奇屋造りが見えてくる。
木々が生い茂る庭園の先に歴史ある数奇屋造りが見えてくる。

都内を優雅にクルーズし、箱根ターンパイクから伊豆スカイラインを意気揚々と駆け抜け、下りのワインディングに熱中していたら、あっという間に目的地にたどり着いてしまった。

目的地はフレンチレストランを筆頭にイタリアンや和食、ブライダルまで美食の世界を楽しませてくれる「HIRAMATSU」の宿泊施設、「THE HIRAMATSU HOTEL&RESORT 熱海」。

門を抜け、静寂の森に包まれた小径に足を踏み入れると、ドライブの終焉に沈んだ気分が一気に盛り上がる。

極上ドライブの先には、これまた極上の素敵な世界が待っていた。

美しく美味しいホテル内の様子は後編でお披露目しよう。

THE HIRAMATSU HOTEL&RESORTS 熱海
THE HIRAMATSU HOTEL&RESORTS 熱海
マクラーレンGT●全長 4,685 mm x 全幅 1,925 mm x 全高 1,215 mm 車両本体価格¥ 26,950,000 (税込)
マクラーレンGT●全長4,685mm x 全幅1,925mm x 全高1,215mm 車両本体価格¥ 26,950,000(税込)

問い合わせ先

マクラーレン・オートモーティブ

この記事の執筆者
女性ファッション誌、ビューティ誌を中心に執筆活動を行ったのち、しばしの休眠を経て現場復帰。女性誌時代にクルマ記事を手掛けていたこともあり、またプライベートではライフステージの変化に合わせて様々な輸入車を乗り継いできた経験を生かし、クルマを核とした紳士のライフスタイル全般に筆を執る。