人と交わらないことをよしとするニューノーマルライフ、鬱々としがちではあるが、どんな状況下にあろうとも自分のご機嫌くらいは自分でとらねば。
その術を知っていること、持っていることも、紳士の嗜み。
心身の健康維持のために骨休めが必要とあらば、感染対策を万全にしたうえで極上のグランドツーリングカーに乗り、走りと湯と美食の贅を尽くすのはいかがだろう。
行き先はルートアクセスのよい「お忍びの宿」がいい。ドアtoドアのクルマ旅かつ、客室に湯殿を備えたプライベート重視の宿なら、道中でも滞在先でも周囲と非接触で羽根を伸ばせる。ドライバーといえど、夜にはお酒に酔いしれるのも一興だ。
復興の願いを込めて、一路「熱海」へ向かう
メンズプレシャスでもお馴染みの名車「マクラーレンGT」に乗り、ロングドライブに出かけてきた。行き先は熱海。痛ましい土石流災害の捜索・復旧が未だ続くさなか...と思案したが、今こそ熱海の旅館やホテルに滞在することが復興支援になる、と迎え入れられた。もちろん感染対策に加え、復旧活動や生活道路への配慮は欠かせない。熱海ドライブの定番、熱海ビーチラインや国道135号線は避け、箱根ターンパイク→伊豆スカイラインの山道コースを駆けることに。このルートは自動車メーカーの試乗コースにもよく使われる有名なワインディングロードだが、割と空いているので走りやすくおすすめだ。
いつまでも乗り続け、どこまでも走っていたくなる、その理由とは
F1マシンのコンストラクターがルーツのマクラーレン。ドライビングパフォーマンスに特化したレーシングカー由来のラインナップが並ぶなかで、もっともオンロード指向であるのがこの「マクラーレンGT」だ。V8ツインターボ、620馬力のハイスペックでマクラーレンらしいパフォーマンス性能を備えながら、ショックのない滑らかなギア変速や、路面の障害を心地よく吸収するサスペンションなど、長い旅路を快適に走るためのグランツアラーらしいセッティングがなされている。
ゴルフバッグや旅行鞄などを収納できる、570Lものラゲッジスペースを有し、室内は、上質なレザーを敷き詰めたスポーティシックな仕上がり。洗練されたインテリアデザインは淑女をエスコートするにも喜ばれるし、女性にステアリングを譲ってもサマになる。
マクラーレン オーナーやモータージャーナリストなど、実際にマクラーレンのクルマを操った人々が口を揃えるのは「いつまでもどこまでも乗っていたくなるクルマ」だということ。
運転していて楽しいうえに疲れにくいのだ。
これは720Sなどよりハイパワーなレンジのモデルにも共通するマクラーレンの特性である。ドライバーが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、人体に負荷がかかりにくい設計が緻密になされている。これこそレーシングコンストラクターのDNAなのだろう。
そのマクラーレンが長距離を快適に走るためにつくった「GT(グランドツーリング)」は、もう「疲れ知らずなスーパーカー」と言っていい。
だから、いつまでも乗り、どこまでも走って行きたくなる。
経験値はさほど高くない私も、同様の感想を持った。東京ー熱海間をほぼノンストップで走っても、まだ飽き足りない。目的地が近づくにつれ、安着の喜びより残念な気持ちの方が強かった。夢中になって読み進めた小説の、結末を迎えてほしくない気分と似ている。ずっとこの世界に浸っていたい、というような。
意表をつくほどの運転しやすさ
ブランドイメージやクルマのルックスから、いかにもテクニックを求められそうなイメージがあるが、実はとても運転しやすい。
シートに腰を沈めてみると、予想以上に車内が明るく開放的。長すぎないノーズでフロントの見切りがよい上に、ガラストップルーフのおかげで頭上や後方にも視野が広がっている。視認性の高さはドライバーに安心を与える。どんな場面においても「周りがよく見えてる」って大事なこと。よく見えて車両感覚が掴みやすいから「横幅結構あるけどぶつけちゃわないかしら」といった不安はさっさと払拭され、堂々とステアリングを操れる。
アクセルワークはペダルに伝えた意のままを体現してくれ、スムーズな加速の立ち上がりはうるさすぎることなく格別の心地よさ。正直に打ち明けると、ブレーキの遊び幅に減速のタイミングがすぐには掴みきれず、最初は戸惑った。一方、そのおかげでクルマを痛めつける急ブレーキには一度も陥らなかった。
ブレーキングのグラデーションの厚さは法定速度を超え、レース級の速度で走らせた際にはさらに生きてくるものなのだと思う。運転しやすく広く門戸をひらいているとはいえ、簡単に攻略し尽くせるクルマではない、ということなのかもしれない。
私はハンドルもパワートレインもノーマル(コンフォート)モードで走り、それで充分にエキサイトしたのだが、上級者にはスポーツモードやトラックモードなど、更なるディープな世界もある。
気ままなだけでもストイックなだけでもない、リラックスした高揚ドライビングを味わわせてくれる一台だ。
極上ドライブの先のスモールラグリュアリーホテルという桃源郷
都内を優雅にクルーズし、箱根ターンパイクから伊豆スカイラインを意気揚々と駆け抜け、下りのワインディングに熱中していたら、あっという間に目的地にたどり着いてしまった。
目的地はフレンチレストランを筆頭にイタリアンや和食、ブライダルまで美食の世界を楽しませてくれる「HIRAMATSU」の宿泊施設、「THE HIRAMATSU HOTEL&RESORT 熱海」。
門を抜け、静寂の森に包まれた小径に足を踏み入れると、ドライブの終焉に沈んだ気分が一気に盛り上がる。
極上ドライブの先には、これまた極上の素敵な世界が待っていた。
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- TEXT :
- 林 公美子 ライター