前編に続く、旅に適したスーパーカー「マクラーレンGT」で出かけた贅沢なクルマ旅は、復興の願いを込めていざ熱海へ。
ドライブ先でゆっくり骨休めをし、翌朝ふたたびステアリングを握って帰宅する計画だ。全道程クルマ移動ならソーシャルディスタンスも万全。滞在先にはプライバシーが保てる「お忍びの宿」を選び、湯と美食を贅沢にむさぼる。閉塞した日常が続く現状において、心身の健康を保ちつつ生業のパフォーマンスを上げるにも、時にはこんな息抜きの時間を持つことが必要だろう。
極上ドライブの先に訪れた桃源郷。その内部の様子をご紹介しよう。
周囲と非接触で羽を伸ばせるスモールラグジュアリーホテル
2021年7月の土石流災害復興への願いを込めて、今こそいざ熱海へ。 ルートは復旧活動中のエリアを避けつつ、ドライブコースとしても満足度の高い箱根ターンパイク、伊豆スカイラインを疾走して熱海入りした。
向かった先は、数々の名店を手がけてきた美食の殿堂「HIRAMATSU」のオーベルジュ「THE HIRAMATSU HOTEL & RESORT 熱海」。
京都・金閣寺や光悦寺の茶室を手がけた数寄屋造りの名匠、木下孝一棟梁によって建てられた別荘をそのまま活かしつつ、階下に居心地の良い洋客室を増築したスモールラグジュアリーホテルだ。
そのエクスペリエンスは火照った体を冷やす1杯のシャンパンから
到着してまず通されるのが、海を一望する絶景のダイニング。高天井の和室に洋風の調度品が配されたほっとできる空間だ。一息つくこの瞬間に供される1杯の冷えたシャンパンが、ロングドライブで熱くなった体に滲みわたり、一気に緊張感から解き放たれる。日帰りドライブなら、帰宅するまでありつけないお楽しみだ。ノンアルコール派にはアラン・ミリアの濃厚なフランス産フルーツジュースが用意された。のっけから期待に応えてくれる。
オーベルジュで過ごす日のクライマックスはディナー。夕暮れまでの時間は部屋でまったり過ごし、日頃の疲れを癒したい。
客室は新たに増築された、モダンで落ち着いた雰囲気の洋室。これとは別に、かつての別荘の居室を利用した特別な和室2部屋も用意されている。いずれも客室に湯殿を備えているので、好きな時間に周囲と非接触で熱海の温泉を味わうことができる。
こうしたプライベート重視の「お忍びの宿」は、パンデミック禍のキープディスタンスにも一役買ってくれる。
熱海の湯と美食の贅を尽くして、そのまま眠りにつく至福
熱海の温泉といえば、文豪たちも愛した名湯だ。太宰治、谷崎潤一郎、三島由紀夫など錚々たる顔ぶれが並ぶ。自分だけの部屋でその名湯に浸かってゆったりと身を清め、ディナーのテーブルにつくと、海の幸、山の幸に富む地元食材をふんだんに使ったフレンチのお皿が、まるで物語のように次々と展開されていく。
小粋なアミューズグールにワクワクし、宝石のような前菜に目を奪われ、意外な食材の合わせ技にハッとする、といった具合に。
ベースはフランス料理だが、スペイン風やイタリアン、和食のエッセンスも取り込んだ幅の広さと、濃厚すぎずに素材が引き立つ味わいが印象的。一緒にテーブルを囲む人との語らいを楽しみながら味わえる、洗練された軽快さがとてもいい。
料理を通して、料理人と対峙するだけでなく、ともに食した人との会話や笑顔もろとも舌が記憶する、その絶妙なバランスこそ「幸福なディナー」だと思う。
デザートの後、コーヒーとプティフールの頃には、帰るのが億劫になるほどの満腹感。
「もう動きたくないー」となるグランメゾンのフルコース終盤。レストランならここからお会計、帰りの手配、帰宅のための移動、となるわけだが、ここではそれら全部不要で、ターンダウン済みのベッドに潜り込むのみ。
控えめにいって、オーベルジュ、最高すぎやしませんか?
極上のクルマ旅が生業へのモチベーションに
ぐっすり眠った翌朝は、海を眺めながら朝食を。
その頃には、体の芯までリフレッシュした自分自身にも、同行者の顔に浮かぶ晴れやかな表情にも、充足感を覚えることだろう。
この特別なエクスペリエンスは、スモールラグジュアリーならではの行き届いたサービスがあってこそ。グランメゾンより密接で、伝統的旅館よりもフランク。その心地よいホスピタリティに、リピーターが絶えないことも頷ける。それこそ自分の別荘代わりとする顧客も多いそう。
帰路のドライブは、あなたの気分次第で、コンフォートモードでクルーズするもよし、スポーツモードでアグレッシブな走りとエグゾーストサウンドを満喫するもよし。
十分に骨休めした後の極上ドライブは、明日のモチベーションを高めてくれるはずだ。
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- TEXT :
- 林 公美子 ライター