この一枚は、グローブ・トロッターの広告にも使われている有名な写真だ。シルクハットにいかにも仕立てがよさそうなオーバーコート、左手にステッキ、そして右手にグローブ・トロッターのアタッシェケースを携えている。ふと、疑問に思うのだ。ウィンストン・チャーチルはなぜグローブ・トロッターを選んだのか、あのケースには何を入れていたのか。メンズプレシャスにて『お洒落極道』を連載していた、バーマン・エッセイストの島地勝彦さんがこの疑問に答えてくれたので紹介する。

ウィンストン・チャーチルはなぜグローブ・トロッターを愛用したのか?

ウィンストン・チャーチル/1874年生まれ、イギリスの政治家、軍人、小説家。第一次世界大戦時に海軍大臣、第二次世界大戦中、首相職に就いた。1953年にノーベル文学賞を受賞。

「ようこそ、サロン・ド・シマジの本店へ。私はね、自称チャーチル狂なんです。ほら、見てごらんなさい。壁にその写真が飾ってあるでしょ。革製の鞄があたりまえだった時代に、紙でつくった鞄を持っているのだから、チャーチルは新しもの好きだったのでしょう。グローブ・トロッターは今でこそ英国の象徴ですが、創業は1897年。まだ歴史も浅かった頃です。色は紺だね。海軍の色として選んだ可能性は大いにある。なかには葉巻がごそっと入っていたはず。彼はチェーンシガースモーカーでね、1週間に100本も吸っていたそうだ。ほら、よく見てごらんなさい。ステッキと一緒に葉巻を持っているではないですか。手帳やペンなんかと一緒に、本も入れていたでしょう。彼はノーベル平和賞ではなく、文学賞を受賞しているんです。本の虫だったに違いない。グローブ・トロッターとは世界旅行者の意味。彼もそのひとりだったのだね」

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