ジャガーはなぜ高名なのか。戦後レースで活躍してきたからだ。なかでもよく知られたのは「Cタイプ」。当初はXK120Cと呼ばれたレースカーだ。1951年に発表されてその年のルマン24時間レースで優勝という偉業を誇る。
いまでも人気が高いのは、戦歴もさることながら、スタイルによるところも大きい。戦後、航空エンジニアを大量に雇いいれたジャガーカーズでは、速度を追求するために空力設計と、アルミニウムによる軽量ボディ開発にも力を入れた。結果、機能美あるいは、それを越えた審美性の高いCタイプが生まれたのだった。
当時の設計を徹底検証→再生産するジャガークラシック
現在、ジャガーの一部門であるジャガークラシックでは、2021年9月2日、70周年を記念して、Cタイプの「コンティニュエーション」を製造すると発表して話題になっている。
コンティニュエーションとは継続の意。自動車界では、おなじメーカーが製造を手がけ、かつて作られた最後のモデルの車体番号から連続した車体番号を与えたモデルなのだ。
ジャガークラシックでは、今回、オリジナルモデルを分解して、2000もの部品を再生産。たんに部品を見よう見まねで再現するだけでなく、オリジナルのCタイプを設計した名エンジニア、マルコム・セイヤーのノートを再検証したり、当時を知っていた技術者への聞き取りなどを行った。
Cタイプの3.4リッター直列6気筒エンジンも作られる。当時、装備されていたサイドドラフトタイプのウェバー40DCO3なる気化器も同様だ。気化器を一から作るなんて、驚くほどたいへんな作業だろう。
億単位の価値も当然のコンティニュエーション
ウェバー製の高性能の気化器は、当初の200英馬力(SUカーブレター)から220英馬力へ出力を上げることに貢献。ダンロップのディスクブレーキとともに、Cタイプは高性能でかつ信頼性の高いレースカーになったのだ。
当時は53台が作られ、うち43台が民間に販売されたという。コンティニュエーションが何台作られるのか。現時点での発表はない。おそらく注文状況しだい、ということか。日本円だと億単位の価格になるはずで、ビジネスとして成立するか見届けてみたい。
ボディ色は12色から選べ、ブリッジオブウィア社によるレザーの内装は8通りだそうだ。ということからしても、ジャガークラシックが考える台数は意外に多いかもしれない。これもまた英国のもつヘリティッジだ。いいものを作ると、ずっと価値が減じないのである。
- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト