メルセデス・ベンツの豊富なラインナップの中でも最もぜいたくなモデル、「Sクラス」のクーペとカブリオレが新エンジン搭載。さらに運転支援システムなどが充実した最新モデルに、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオが、ロサンジェルスでいちはやく試乗した。

余裕あるサイズと贅沢なつくりは戦前からの伝統

1950年代のカレラパナメリカーナ・メヒコ公道レースに「300SL」で挑戦していた同社の歴史を踏まえた、「パナメリカーナグリル」がメルセデスAMGモデルに備わる。

 メルセデス・ベンツは高級車や高性能SUVで人気だが、もうひとつ、ぜいたくなクルマでも長い歴史を持つ。余裕あるサイズのクーペやカブリオレを戦前から手がけ、米国を中心に富裕層に愛されてきた。

 なかでも頂点に位置するのが「Sクラス」のクーペとカブリオレだ。現在のメルセデス・ベンツのラインナップでは「Cクラス」にも「Eクラス」にも同様にクーペとカブリオレを持つ。しかしサイズ的にも走りも装備も、トップクラスといえるのは「Sクラス」なのだ。

 2017年秋に、メルセデス・ベンツ「S560 4MATICクーペ」と「S560カブリオレ」、それにメルセデスAMGの「S63 4MATIC+クーペ」と同カブリオレは新エンジンを搭載した。

 ともに4リッターV型8気筒で、S560は従来の4.7リッターに代わり、S63は5.5リッターの代替となる。その理由は効率の向上。

「S560」は従来の335kW(445馬力)に対して345kW(469馬力)へとパワーアップ。「S63」は20kW(27馬力)アップして450kW(612馬力)になった。ともに燃費は8パーセントほど向上している。

フランク・ゲーリー設計のウォルトディズニー・コンサートホールと曲面や曲線がどこで通じる? と思わせるクーペ。

メルセデス・ベンツゆかりのL.Aをクルージング

カブリオレは暖かい海岸がもっとも似合うが、冬も温風が首元に出たりと万全の装備を持つ。

 試乗会が開かれたのは、メルセデス・ベンツのエレガントなモデルにふさわしいロサンジェルスだった。ハリウッドに代表される富裕層が主要な顧客だったので、歴史的にもゆかりのある場所なのだ。

 印象としては、ゆったりした気分で乗りたいなら「S560」シリーズ、とばすのも好きなら「S63 4MATIC+」というかんじだ。「S560」はクーペが4輪駆動の4MATICで、カブリオレが後輪駆動だったが、通常の走行では大きな差はかんじられない。

「S560」は700Nmものトルクがあるため、2000rpmも回さずに十分力強く走る。足回りは快適指向でややソフトめなので、「Sクラス」のセダンにも通じるテイストを感じる(シャシーは違うのだが)。

 このふわりと段差をこなす乗り味ゆえ、とりわけカブリオレはパシフィックコーストハイウェイのように海沿いを行く爽快な道によく合う。

「デジーノ」という内装オプション用のレザーシート(写真はポースレンという白系の色)。標準仕様のレザーよりも上質で、柔らかな肌触りだ。

「やりすぎない」大人のデザイン

座り心地のいいシートをはじめ、静粛性も高く快適なクーペのインテリア。

 いっぽうメルセデスAMG 「S63 4MATIC+」はクーペ、カブリオレともにワインディングロードでより輝く。パワフルであり回転マナーもスムーズなV8エンジンとともに、路面の状況に合わせて瞬時にダンピングを調整していくサスペンションシステムがドライブを楽しませてくれる。。

 カーブでの姿勢制御はびしっと決まり、直線に向けて加速するときの速さたるや、全長5メートル超のボディの大きさや重量はいっさい感じさせない。

 革の艶を活かしたインテリアの造型といい、居心地は抜群。ダッシュボードとシートの色づかいによって、イメージがだいぶ変わるからじっくり選択するのも楽しみになるだろう。

 最新の運転支援システムもぬかりなく搭載されている。道の屈曲に応じて速度コントロールを自動で行う「アクティブディスンタンスコントロール・ディストロニック」が注目だ。

 衝突安全や被害軽減など、ブレーキとアクセルを連繋させる数かずの安全装備は「Sクラス」セダンに準じる豊富さである。

 ちなみにカブリオレは基本的に2プラス2なのだけれど、スタイルのある乗り方は後席も使うことだ。後席にひとを乗せた3名乗車など、あくまでセダンベースのカブリオレをうまく使っているかんじがあって、とてもすてきだ。

「世間一般では英国車の“ブリティッシュネス”をよしとする傾向も見受けられますが、それに対して私たちは“パーフェクション”を前面に押しだしていきます」

 試乗会場でインタビューした開発責任者のディルク・フェッツァー氏はそう語った。

「このクルマのデザインが出来上がったとき、ラインなどが整理させすぎていて、少しシンプルすぎるのでは、という声も社内にありました。でも“やりすぎ”はすべてを壊してしまいます。それが私たちの美学です」

 日本への導入は2018年。くわしい時期などは2017年12月の時点で未定、と日本法人のメルセデス・ベンツ日本ではしている。

後席空間もぜいたくに仕立てられている。ひとりで運転しているときの、アウターやバッグ置き場としてだけでなく、ひとを乗せても(本来の使い方だが)ラグジュアリーに見えるのは、Lサイズのカブリオレならでは。
斜め後ろからの美しいスタイリングも、このクルマの魅力。66枚の有機ELを使ったリアコンビネーションランプ採用も新しい点。
マリブのレストランが試乗の中継地点だった。
この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。