男はつねにスポーツで自分を磨く。自動車でもスポーツカーという存在が、運転を通して、人生をゆたかなものにしてくれる。アウディジャパンが2021年11月に発表した「アウディRS3セダン」は、まさにクルマを操るスポーツの醍醐味を味わわせてくれる。
とにかく速くて仰天!
21年に4年ぶりのフルモデルチェンジを受けたRS3セダン。ベースはA3セダンとはいえ、スーパーGTシリーズ等に参戦するR8 LMS GT3 や、TCRジャパンシリーズのRS 3 LMS といったレーシングモデルの開発、生産も手掛けるアウディスポーツが開発を担当した。
エンジンはオールアルミ製の2.5リッター直列5気筒。最高出力は294kW(400ps)、最大トルクは500Nm を発揮する。私が乗るチャンスをもらったのは、富士スピードウェイでの本国仕様。セダンのイメージカラーであるキャラミグリーンに塗装された派手なボディがまたいっそう目を惹いた。
キャラミは南アフリカ共和国のジョハネスバーグにあるサーキット。F1でもよく知られているし、最近ではキャラミ9時間耐久レースでアウディ(R8 LMS)が活躍している。ほかに24時間レースにやはりR8 LMS GT3で参戦しているデイトナの名を冠した車体色も。スポーティな演出がうまいのだ。
抑揚がついたボディは、エンジンやブレーキ冷却や、スムーズな空気の流れによるダウンフォース効果などを狙い、空気の入口と出口を徹底的に考えぬいた形状をしている。ほっておいたら機能主義一辺倒になりそうなところ、官能性をちゃんと盛り込んであるのは、アウディデザインの実力の見せどころだろう。
日本にほとんどない貴重な個体ということで、富士スピードウェイはごく短い周回しか走れなかった。しかし私はびっくりした。とにかく速い。静止から時速100キロまで3.8秒で加速してしまうだけある。ちょっと前のスーパースポーツカーと同等の値だ。
「RSトルクスプリッター」を体験してみたい……!
加速しながらコースに入り、そこから第1コーナーに向けて加速をはじめると、あっというまに“こんな速くて曲がれるのか”と焦るぐらいのスピードが出る。しかし超強力な制動力を発揮するブレーキと、ロールを抑えた車体の設定と、正確なステアリングのおかげで、不安なく続くストレートでさらに加速してゆく、そのすばらしい感覚が味わえるのだ。
本来、新型RS3の特徴として、レーシー(レースカーのような)ドライブモードがあげられる。「RSトルクスプリッター」と名づけられたシステムは、左右の後輪間の駆動トルクを可変配分。たとえば、コーナリング時は(走行状態に応じて)外側の後輪のトルクを増加させ、ニュートラルな姿勢を維持。いっぽう、直進時にはリアの左右輪に均等にトルクを配分する。
エンジントルクを外輪の後輪に100パーセント回して、ドリフトを容易にする「RS トルクリア」と、セミスリックタイヤに対応しサーキット走行に適した「RS パフォーマンス」というモードも選択可能。サーキット走行を楽しむひとのために開発されたモデルといえる。
ただし、今回の試乗会では、このモードの仕様は禁止。日本仕様が入ってくるのを待たなくてはいけない。「ダイナミック」モードでも目がさめるような走りを体験させてくれるので、「RSトルクスプリッター」はすごいだろうなあ、と想像できる。
サスペンションシステムには、新開発されたダンパーとバルブシステムを採用。さらにオプションで「RSダンピングコントロールサスペンション」も選べる。
運転状況や「アウディドライブセレクト」がパラメター。選択されたドライブモードに合わせて、前後左右のサスペンションの4本のダンパーを、個別に連続的に調整する。アウディによると「これまで以上に幅広い可変幅を持って」いるのも特徴にあげられている。
スポーツアウディは健在だ。RS3セダンを手に入れたら、サーキットに出かけていって、“ひと汗”かきたい。価格は、RS3セダンが818万円。同時発売のRS3スポーツバックは799万円。発売は22年4月が予定されている。
【Audi RS3 Sedan】
全長×全幅×全高:4540×1850×1410mm
エンジン:2480cc5気筒
駆動方式:全輪駆動
最高出力:294kW@5600〜7000rpm
最大トルク:500Nm@2250〜5600rpm
価格:¥8,180,000
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- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト