「レッドウィング」において、『アイリッシュセッター』の源流となる6インチのラウンドトウブーツは、1905年の創業当時から製造されていた定番モデルのひとつ。その後、1940年代後半には、くるぶしをかかとから包み込む一枚革とするシームレスバックを取り入れ、足当たりの柔らかさを改善。1953年にはそれ以降のワークブーツのスタンダードにもなった、トラクショントレッド・ソールを世界で初めて男性用のブーツに採用するなど、時代に即したアップデートを繰り返す。猟犬のタグが付いた『アイリッシュセッター』は、1980年代に日本で誕生。そして、当時展開されていたモックトウブーツ♯875の派生シリーズとして、『アイリッシュセッター』のみで使われていたレザーをラウンドトウのブーツに採用したのが、本稿で紹介するモデルのオリジンである。その後、意匠はそのままに様々なレザーのバリエーションが追加される中で、ブラックレザー製のモデルを藤原ヒロシ氏が雑誌で紹介したことをきっかけに空前の大ブレイク。写真のモデルは、まさしくその1990年代当時の『アイリッシュセッター』を再現すべく新たに開発されたものである。

現代のスタイルに馴染むラウンドトウのシルエット

ブーツ¥42,790(レッドウィング・ジャパン)

本モデルを語る上で欠かせないのが、レザーの染め方とタグのデザインである。というのも、2000年代初頭に本国レッドウィング社の方針から、アイリッシュセッターのシンボリックなタグが外され、レザーもしっかりと芯地まで染め上げるマイナーチェンジが行われていた。

90年代当時の復刻となる本モデルでは、タグの復活はもちろん、履いていく内に黒い塗膜の下から茶色いレザーが顔を覗かせる「芯茶」のブラックレザーを忠実に再現するために、新たに開発されたブラック・クロンダイク・レザーを採用。当時と同じような履き込むほどに経年変化を味わうことができる。なお、個人的な記憶を遡ると、その当時はモックトウとラウンドトウの人気を比較するとやや前者に分があったようにも思えるが、現代のスタイルやトレンドに照らし合わせるとラウンドトウの方がより今っぽく見えてくるではないか。

ボリュームのあるモックトウは、デニムとの相性こそ抜群だが、いささか主張が強いためボトムスが限定されるきらいがあった。その点、ラウンドトウであれば、デニムだけでなくクリースの入ったスラックスやミリタリーのトラウザー、クロップド丈のパンツなど、合わせるボトムスを選ばない汎用性の高さも魅力だ。

タフなルックスでありながら、意外と上品なパンツと合わせてハマるのも優しい印象のラウンドトウならではといえよう。もちろんワークブーツらしい野趣溢れる面持ちではあるが、ステッチやソールにコントラストカラーを使うことでぐっとモダンな印象に仕上げている。決して懐古主義に終始しないエバーグリーンな魅力は、当時を知らない世代にも伝わることだろう。

※掲載商品の価格は、税込みです。

問い合わせ先

レッドウィング・ジャパン

TEL:03-5791-3280

この記事の執筆者
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PHOTO :
島本一男(BAARL)
WRITING :
佐藤哲也
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