アルファロメオ初のSUVとして登場したステルヴィオ。2.0ターボエンジンを搭載し、高性能モデルに与えられるヴェローチェの称号を冠したモデルが、忘れかけていたクルマの楽しさを思い出させてくれた。その楽しさとは果たしてどんな物だったのか?
エモーショナルなビートを奏でるアルファロメオ
ワインの世界で「マリアージュ」というフランス語をよく耳にする。本来は結婚、結婚式、結婚生活という意味であり、英語のマリッジと同じ。さらに料理の世界では、食べ物や飲み物の組み合わせの相性がよく、その融合が新たに魅力的な世界を創り出すというようなときに使われる。フランス料理にこだわることなく、世界各国の料理とワインの組み合わせが絶妙なときによく使われるようだ。
クルマの世界にも色々なマリアージュが存在する。たとえばニューモデルの個性とブランドイメージのマリアージュだ。誕生したクルマがイメージどおりであれば、双方の関係に齟齬を来すことはない。イタリアきっての名門であるアルファロメオは、古くから走ることを、そしてイタリアンデザインを純粋に楽しむ存在として、その筆頭にあり、期待にそぐわぬ車たちを世に送り出してきた。
それは今も変わりはないのだが、一方でスポーツセダンのジュリアからも、このステアリングを握っているSUVのステルヴィオからも、電動化の香りがしてこない。それどころかドライバーズシートから見える丸型のアナログメーター、エンジンの音や振動も、最速モデルに与えられる“ヴェローチェ”というイタリア語ですら、最新のハイブリッドやEVの味を知ってしまった身にとっては、すべてがどこか古くさく感じてしまうのである。
エンジン車独特の感覚が細胞レベルで奮い立たせる
ところが少し走り出してみると、ある感覚の変化というか、走りから得られる外的要因に五感が反応していることに気が付く。電動車の走りに比べれば、どこかザラついた印象の加速感も減速感も、シフトチェンジごとに速度が上がっていく感覚も、すべてがエンジン車の持つ独特の感覚として、体や精神を喜ばせてくれることが分かるのだ。
サステナブルだとか、環境だとかを叫んでいても、この細胞に刻み込まれた内燃機関の振動や音のへのオマージュを抱いていることは否定できないのだ。この忘れかけていた心地よさは、電動車が幅をきかせる前の、あの芳醇なる内燃機関の世界であった。そしていま、我々はこの世界観と絶縁しようとしていることが急に惜しく感じたのである。
ひょっとしたらアルファロメオにとっても、これが最後の純粋なエンジン車となる可能性がある。となれば、純粋にアルファロメオがアルファロメオであったことを楽しむ最後のチャンスかもしれない。中でもステルヴィオQ4はSUVとしての実用性や4WDならではの対応力の高さがある。
さらにエンジン車として可能な限り、環境に寄り添うことも考えている。当然だが、サステナブルな世界を否定していないことは理解できるはずだ。このように時流に対するエクスキューズをひとつでも多く付けられれば、ステルヴィオとのマリアージュは、そうとうに快適なものになると思う。
【アルファロメオステルヴィオ2.0ターボQ4 ヴェローチェ】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,690×1,905×1,680mm
車両重量:1,810kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速AT
エンジン:4気筒OHCガソリンターボ1,995cc
最高出力:206kw(280PS)/5,250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2,250rpm
車両本体価格:¥7,200,000
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- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター
- PHOTO :
- 尾形和美