普段、何気なく使っている「ご無沙汰しております」と「お久しぶりです」の違いをご存知ですか? どれくらい連絡していなかったら、「ご無沙汰」と言えるのでしょうか。今回はそんな、知ってるようで知らない「ご無沙汰しております」の基礎知識を復習しましょう。

【目次】

「ご無沙汰しております」を勘違いしていない?
「ご無沙汰しております」を勘違いしていない?

あなたは勘違いしてない?「ご無沙汰しております」の基礎知識

「ご無沙汰しております」は、ビジネスシーンだけでなく、日常でもよく使われる言葉です。まずは、正しい意味をチェック!

 ■「ご無沙汰しております」の「意味」

「ご無沙汰しております」は、「無沙汰」という名詞の頭に相手への敬意を表する「ご」をつけ、さらに「しております」という謙譲語+丁寧語から構成された言葉です。

「無沙汰」には、「沙汰=本来しなくてはならないこと」を充分にしないこと、おろそかにすること、なまけること、といった意味があります。

本来であれば、連絡したり、安否を気にかけたほうがよいとわかっていた相手であったにもかかわらず、自分の忙しさにかまけ、挨拶もしないまま時間が経ってしまった……「ご無沙汰しております」は、こんな反省の気持ちをにじませつつ、長い間連絡をしなかった非礼をお詫びする表現なのです。

「お久しぶりです」と意味合いは似ていますが、「ご無沙汰しております」は相手への敬意を表した言い回しであり、反省の気持ちも込められるため、ビジネスシーンには、よりふさわしい挨拶と言えます。

 ■目上の人に対して使っても大丈夫?

「ご無沙汰しております」は正しい敬語表現ですから、目上の方にも問題なく使うことができます。電話やメール、手紙や年賀状など、幅広いシーンで活用可能です。

 ■「久しぶり」とは、具体的には何か月?

感覚に個人差はありますが、だいたい3か月以上会っていなかったり、連絡を取っていなかった場合に使うのが一般的とされています。

ビジネスシーンほか、手紙や年賀状でも使える「例文」4選

  ■1:「ご無沙汰しております。以前○○のキャンペーンでご一緒させていただきました××です」

久しぶりに連絡を取る相手が、あなたのことを覚えているとは限りません。まずは「自分の所属」や「いつ、どこでお世話になったのか」等、相手があなたのことを思い出す手がかりとなる情報を伝えましょう。挨拶もせず唐突に用件を伝えるのは失礼です。

  ■2:「一昨年1月に○○でお世話になりました。以来、大変ご無沙汰しており、申し訳ございません」

そもそも「久しぶり」になったのは、自分が連絡をおろそかにしたせいです。意識的ではないにせよ、相手との関係を軽んじてしまった部分はないでしょうか。その反省を込め、まずはお詫びをしてから用件を述べましょう。

  ■3:「大変ご無沙汰しておりましたが、お変わりありませんでしょうか」

誰かと久しぶりに連絡を取る際には、少々緊張するものですね。お詫びの気持ちに相手への気遣いを添えて、「お変わりありませんか」「お元気ですか」のひと言を付け加えましょう。

■4:「本当に長い間、ご無沙汰しております。○年前、△△の件でお世話になりました□□と申します」

半年から1年以上も期間が空いてしまった場合は、「久しくご無沙汰しております」あるいは「大変ご無沙汰しております」など、いくつか表現を覚えておくと便利です。

「ご無沙汰しております」と言われたときの正しい「返事」「返信」の仕方は?

「こちらこそ、ご無沙汰しております」と、まずはあなた自身もご無沙汰していたことをお詫びしましょう。久しぶりに連絡をしてきた相手も、少し緊張しているはずです。「お変わりありませんか」あるいは「こちらこそ、ご無沙汰しており申し訳ありません」、「こちらこそ、ご無沙汰しており失礼いたしました」など、ひと言添えることで、お互いの気持ちが近づき、コミュニケーションが円滑に進みます。

「ご無沙汰しております」を使う際の「注意点」は?

ビジネスメールでは、冒頭「お世話になっております」と挨拶するのが習慣ですが、「お世話になっております」と「ご無沙汰しております」は、単に並べては使用しません。「お世話になっております。久しくご無沙汰しており、申し訳ございません」といった使い方で、お詫びの気持ちと、お世話になったことへの感謝を表現することができます。

同じ「ご無沙汰」を使った表現に、「随分、ご無沙汰でしたね」といったものがあります。こちらは、相手が長い間連絡をしてこなかったことを、軽く非難するニュアンスを伴う表現です。目上の方にはもちろん、立場が同じくらいの人に対しても、あまり口にしない方が無難です。もしも自分が言われてしまった場合は、「大変申し訳ございません」と、非礼を詫びましょう。

また、久しぶりの再会で「ご無沙汰しております」と言われて不快になる人は少ないとは思いますが、「なんだか表面的な挨拶だな」と感じてしまう人はいるようです。手紙やメールではなく、直接、お目にかかった場合には、「久しぶりにお目にかかれて嬉しいです」と、会えたことに対して喜びの言葉を添えると好印象です。

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いかがでしたか? 普段、何気なく使っている「ご無沙汰しております」は、相手に対する非礼を自覚し、詫びる気持ちを込めて使われる表現なのです。この言葉を使う側も、使われた側も、相手を思いやる気持ちでやり取りができたらいいですね。

この記事の執筆者
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