スポーツカーブランドとして名を馳せるポルシェのなかで、経営面での貢献度が最も高いのがミドルクラスSUVのマカンだ。実際、同車の2021年の販売台数はポルシェ全体の約3割を占めるほどで、誕生から10年近く経ったいまでも売り上げ台数は右肩上がりを続けているというから恐れ入る。そのマカンも次期モデルは電気駆動に方針転換するようだが、純内燃機を搭載する現行型はますます熟成の度合いを高めていた。
トップグレードの濃厚な味わい
マカン人気の源はやはり、兄貴分のカイエンよりもややコンパクトで扱いやすいサイズを実現しているところだろう。またいっぽうではポルシェが手がけるSUVらしく、走りのパフォーマンスが高いレベルにあることも支持率の高さにつながっているのは間違いない。今回、マカンの最高峰であるGTSグレードに試乗し、改めてその思いを強くした。
GTSは2015年にラインアップに追加された上級グレードである。心臓部に収まる3ℓV6ツインターボエンジンは当時のトップモデルであるマカンターボに次ぐ出力を誇り、足回りには専用チューニングが施された。そして昨年のマイナーチェンジではエンジンを2.9ℓV6ツインターボに置き換えながら出力を440PSにまで向上。あわせてターボグレードが廃され、GTSが名実ともにトップグレードに押し上げられたというわけである。
その最新型GTSは専用スポーツサスペンションが奢られ、加えてブラックアウトされたホイールなどによって精悍さが増した。インテリアではドライバーの正面にタコメーターを配置し、アルカンターラを用いたステアリングホイールを採用するなど、スポーツカーもかくやと思わせる仕立てとなっている。
SUVの概念を超えるスポーティな走り
スターターを押してエンジンを目覚めさせると、911のように野太く迫力のあるエグゾーストノートを響かせる。走り出して最初の角を曲がるときにひと切り、ステアリングを操作してみると、がっちりとした剛性感や応答遅れのないノーズの動きに思わず笑みがこぼれた。その造りの精緻さや強力なブレーキのタッチはSUVというジャンルの鈍重なイメージとは一線を画すものであり、すべての所作が紛れもなくポルシェなのである。
そのうえでGTSらしさを感じるのは、足回りの動きの上質さ。スポーツサスペンションは専用セッティングで固められてはいるものの、路面からの突き上げは角が丸められていて不快感はない。加えてボディ上屋の無駄な揺れはしっかりと抑えられているため、背の高いSUVにありがちな乗員の体が左右に揺さぶられるような不安感はない。V6ツインターボは約2トンのボディの重さを感じさせず、豪快かつ息の長い加速を続けてくれる点にも驚かされる。SUVスタイルでありながらも、この一台にポルシェのスポーツカー作りの真髄がぎっしりと詰まっている印象で、すべてのパフォーマンスを高次元で見事にバランスさせているのがGTSグレードなのである。
【ポルシェ マカンGTS】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,730×1,920×1,600mm
車両重量:2,020kg
駆動方式:4WD
エンジン:2,894cc V型6気筒ツインターボ
最高出力:324kW(440PS)/5,700〜6,600rpm
最大トルク:550Nm/1,900〜5,600rpm
車両本体価格:¥11,880,000
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- TEXT :
- 桐畑恒治 自動車ライター
- PHOTO :
- 篠原晃一