1974年に初代モデルが登場以来、コンパクトハッチバック車の世界的なスタンダードで在り続けてきたゴルフ。8代目となった現在も、その地位に揺るぎはない。そしてラインナップの中でひときわ注目度の高い存在と言えばスポーツモデルのGTI。最新の走りを味わってみた。
「GTIクラス」というカテゴリー
もしジョルジェット・ジウジアーロがゴルフのデザインを担当することがなかったら……。仮定の話をしてもあまり意味がないことを理解しながらも、最善の機能美を実現したゴルフが、果たして他のパッケージングやデザインを与えられても、こうして生き続けることができたのだろうか? ゴルフが世代交代するたびにそんな考えが浮かんでくる。
それほどまでに大きな影響力を持つゴルフであるが、もう1台、世界基準を作り上げたモデルといえば「GTI」である。エンジンやサスペンションをチューニングしたスポーツモデルは「ホットハッチ」などとも呼ばれ、これまた世界的な人気車となって「GTIクラス」というカテゴリーまで成立させてしまった。以来、ゴルフはコンパクトハッチバックとしてだけでなく、ホットハッチのスタンダードとして世界中のメーカーが目指す存在ともなった。
そして今、目の前には最新のGTIがある。相も変わらずのさりげなさである。これ見よがしのハデハデさやスポーツモデル押しの演出過多がないところも、ゴルフGTIの大きな魅力である。少し違うなと感じる点といえば強烈なストッピングパワーを発揮する赤いブレーキキャリパーがホイールの隙間から覗いている点ぐらいだろう。
剛性感の高さが分かるほどずしりとした手応えのあるドアを開けると、GTIにはもはや必須となった専用チェック柄のシートが現れる。シートバックは両サイドが高く、いかにもホールド性が高そうだが、手触りはソフトな素材のお陰でタイト感が薄れ、キャビンの仕立ても、やはりさりげない。
スポーツハッチの本質的な楽しさを凝縮
この、一見スポーツモデルには不釣り合いのような優しい感覚は、245P馬力の2L直列4気筒DOHCターボエンジンをスタートさせ、走り出してからも変わらず感じるのだ。これほど速く走ることを強要してこないスポーツモデルも珍しい。考え方を変えれば「ゆっくり走っていても刺激を感じながら走れるから、激走など不似合いともいえる。
そのくせ、いざ自らの精神に鞭を入れ、アクセルをいつもより深めに踏み込むと、極上ともいえる切れ味の走りを披露してくれる。加速でもブレーキングでもコーナリングでも、いかなる時でもスポーツカーとしての心地いい刺激をドライバーに与え続けてくる。そして、腕さえあればスーパースポーツだって追い回せそうな感覚を発信してくるのである。ただただ扱いやすく安全に、ストレスフリーで確実に速いのである。この味つけも歴代GTIが守り続けてきた愛すべき感覚であり、マイルストーンで在り続けてきた秘密なのである。押し出し感を求めるなら選択肢には入らないかもしれないが、スポーツハッチの楽しさの本質を知りたい、味わいたい、そして内燃機関本来の味を試したいなら、選択の最右翼にくるだろう。
【フォルクスワーゲン・ゴルフGTI】
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,295×1,700×1,465mm
車両重量:1,430kg
駆動方式:2WD
トランスミッション:7速AT
エンジン:4気筒DOHCガソリンターボ 1,984cc
最高出力:180kw(245PS)/5,000~6,500rpm
最大トルク:370Nm/1,600~4,300rpm
車両本体価格:¥4,660,000〜
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- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター
- PHOTO :
- 篠原晃一