プジョーの最上級サルーン「508」のラインナップに第3のモデルとして加わったのがプラグインハイブリッド(PHEV)。先行したガソリン、ディーゼルとは違った、プジョー流ならではの味わいとは?
「文化に乗る」感動を今!
「輸入車に乗るということは、その車が生まれた国の文化に乗るということ」。
モータージャーナリストの徳大寺有恒氏が、生前によく口にしていた言葉だ。確かに2000年代を迎えるまでは、その意味がとてもよく理解できた。アメリカ車は大味だが大らかで丈夫、イタリア車は情熱的にして刹那的、イギリス車は歴史に根ざした風格が命、ドイツ車は全身に行き渡る質実剛健さで勝負し、日本車は上質であるが画一的などなど、色々なイメージで語られてきた。そして今回のプジョーを筆頭としたフランス車といえば、高いファッション性としなやかな乗り味が生命線などといわれてきた。良くも悪くも強烈な個性が輸入車の大きな選択枝であった。
ところがプロダクトのグローバル化が叫ばれるようになってくると、中庸さこそが正義のようになり、強烈な個性もずいぶんと希釈されてしまったように感じる。良くいえば不足もなく、余分のところもなくバランスよく仕上がっているプロダクトは、世界共通の価値として、どこでも通用する。一方で徳大寺氏がいっていた「文化に乗る」という感覚は薄れてしまった。輸入車を選択する行為が、「ただブランドを買う」ということにしかならないという人までいる。
そんな感覚を心のどこかに抱きながら、「508GTハイブリッド」に対した。ちなみに今回のハイブリッドが加わったのを機に、508のグレードはガソリン車もディーゼル車も、すべて「GT」に統一された。最近のプジョーデザインは個性を取り戻し、エクステリアデザインはエレガントで都会的、ファッション性もかなり高くなっている。508GTの伸びやかなサルーンとしての佇まいは、ドイツ車やイギリス車や、そして日本車とも確実に違った存在感を取り戻しているように見えた。
走るほどに忘れかけていたフランス車らしさを感じる
さて、新投入のPHEVで走り出してみた。これまでの508といえば、プジョーならではのしなやかな走りに似合うのは、少しばかりザラつきを感じるディーゼル車よりもスムーズにふけ上がるガソリン車だと思っていた。だが、いざ経済性のことを考えれば、やはりディーゼル車は魅力的でもあった。
そんな迷いの中に登場してきたのが4種類の走行モードを備えたハイブリッド車だった。電気のみで64km(WLTCモード)を走行できる「エレクトリック」モード、エンジンとモーターを最適に組み合わせながら走行する「ハイブリッド」モード、切れのいいスポーツ走行を楽しめる「スポーツ」モード、そしてハイブリッドモードのままプジョー初となる電子制御アクティブサスペンションのセッティングを、フランス車らしい快適な乗り心地を保つ「コンフォート」にセットできるモードである。
どのモードも「しなやかな足を生かす」という基本を大前提にセッティングされていた。なかでもコンフォートは、体が覚えている「プジョーの味」をたっぷりと味わうことができたのだ。ここにハイブリッドのほどよいスムーズネスが生きてくるのだから、プジョーを選択する理由がしっかりと見えてくるのである。サルーンとして居住性を選ぶのであれば他にも候補はある。しかし、その居住空間での上質な居心地と乗り心地のバランスの良さを求めるなら最右翼にくる存在だろう。
【プジョー508 GTハイブリッド】
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,750×1,860×1,420mm
車両重量:1,790kg
駆動方式:2WD
トランスミッション:8速AT
エンジン:4気筒DOHCガソリンターボ 1,598cc
最高出力:133kw(180PS)/6,000rpm
最大トルク:300Nm/3,000rpm
モーター最高出力:81kw(110PS)/2,500rpm
モーター最大トルク:320Nm(32.6kgm)/500~2,500rpm
車両本体価格:¥6,406,000〜
問い合わせ先
- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター
- PHOTO :
- 篠原晃一