高級車の世界において圧倒的な存在感を示すのは、いまも昔もメルセデス・ベンツSクラスであることにかわりはないだろう。威風堂々としたスタイルに、常に余裕をもたらす動力性能と快適性を兼ね備えて世界中のエグゼクティブに支持されてきたからだ。その最新モデルを試す。
デジタル志向を強めた新世代フラッグシップ
W223と呼ばれる現行Sクラスは2020年に発表、翌年から日本に上陸し、すでに多くのユーザーに愛用されている。ラインアップはガソリンが3リッター直6および4リッターV8ツインターボのS500とS580、ディーゼルが3リッター直6ツインターボのS400dという3タイプでそれぞれにショートボディとロングボディが用意される。基本ユニットは先代からのキャリーオーバーながら、全車4輪駆動となるほか、ガソリンモデルには48Vバッテリーやスタータージェネレーターを用いたマイルドハイブリッドが組み合わされるのが特徴だ。
現行型は前後のライトまわりが薄くすっきりしたデザインになったためだろう、全体的に涼しげな印象を受けるようになった。もっとも、グリル自体は大型化されており、押し出しの強さは健在。印象を大きく変えたのはインテリア、特にコクピット周りのレイアウトである。従来型は水平線のように横方向に広がりのある有機的な造形だったが、新型はメーターが12.3インチモニターに置き換えられ、センターコンソールには12.8インチの大画面ディスプレイが据えられるなど、デジタル志向が強まった。そこにはナビゲーション機能はもとより、空調、エンターテインメント系の機能装備が集約されるほか、最新の音声認識機能などからなるMBUXも備わる。
ウルトラスムーズな回転フィールと扱いやすさ
動きだしてからの振る舞いにはまったく隙がない。試乗車のS400dが搭載する直6ディーゼルツインターボユニットは、ガソリン車と比べてもまったく遜色ない静かさを保ち、もちろん無粋な振動も伝えてこない。強大なトルクを発生するディーゼルユニットとあって、ストップ&ゴーを繰り返すようなシーンでのドライバビリティは高く、回転フィールはウルトラスムーズの一言に尽きる。そんな洗練された振る舞いは乗り心地も同じことが言え、標準装備のエアサスペンションは路面の凹凸などなかったかのようにやり過ごし、とろけるような乗り味を提供し続けてくれる。リア・アクスルステアの採用で走行安定性や低速域での取り回しの良さに磨きがかかり、ボディの大きさを感じさせないほどの扱いやすさにも目を見張る。
今世代でも全方位にわたってのレベルアップは著しく、その高いパフォーマンスでドライバーはもちろん全乗員に高い満足度を提供し続けてくれるのがメルセデス・ベンツSクラスというクルマ。エグゼクティブカーかくあるべしの姿勢は、最新世代でも微塵も揺らいでいない。
【メルセデス・ベンツS400d 4MATIC】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:5,210×2,130×1,505mm
車両重量:2,090kg
駆動方式:4WD
エンジン:2,924cc 直列6気筒ツインターボ
最高出力:243kW(330PS)/3,600〜4,200rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1,200〜3,200rpm
価格:¥13,380,000
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- TEXT :
- 桐畑恒治 自動車ライター
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- 尾形和美