「おこがましい」というワードを使ったことはありますか? 「私が申し上げるのもおこがましいのですが…」などと使用しますが、意味はなんとなくわかるでしょうか。どんな相手に使えるのか、どんなシーンで使うべきなのか、ビジネス使用の「おこがましい」について詳しく解説します。

【目次】

他人のことを「おこがましい」と言うのはアリ?
他人のことを「おこがましい」と言うのはアリ?

【「おこがましい」ってどんな「意味」?】

■「おこがましい」の「意味」

「おこがましい」は造語のように聞こえるかもしれませんが、辞書にも記載されている正しい日本語です。『デジタル大辞泉』によると、

【1 身の程をわきまえない。差し出がましい。なまいきだ。】

【2 いかにもばかばかしい。ばかげている。】

という意味の形容詞です。「おこがましげ」と形容動詞にしても、「おこがましさ」という名詞としても使えます。

「私ごときがおこがましい」といった場合には、1の「差し出がましい」といった意味を表します。「おこがましい振る舞い」という場合は、「身の程をわきまえない」ということでしょう。ビジネスシーンでは、多く【1】の意味で使われます。「なまいき」にあたるのは自覚しているのですが、とへりくだった謙虚な姿勢を示す、クッション言葉として使います。

■「おこがましい」の漢字は難読レベル!

「おこがましい」を漢字にすると、「痴がましい」あるいは「烏滸がましい」となります。書くのも読むのも難しいので、一般的には平仮名「おこがましい」で表記します。

■「おこがましい」は『源氏物語』にも登場!

難しい漢字をあて、響きも古風な「おこがましい」は、漢字や外来語に由来しない日本独自の「大和言葉」。もともとの語形は「をこがまし」で、「をこ(馬鹿げている)」+接尾語「がまし」が付いた、馬鹿げていることを指す形容詞です。平安時代の『源氏物語』でも、紫式部は「愚かなこと、馬鹿げたこと、間抜けなこと」という意味で綴りました。現代では転じて「分をわきまえていない」「でしゃばっている」様子を表す形容詞として使われています。

■語源は古代中国に

語源は古代中国・後漢時代にまでさかのぼります。「烏滸(おこ)」とは水辺に集まるカラスのことで、黄河や揚子江に集まる騒がしい人々のことを揶揄した表現です。


【ビジネスでの「使い方」を「例文」から学びましょう】

■1:「身の程をわきまえない」「差し出がましい」「なまいき」という意味での例文

・私がこの場で発言するのはおこがましいかもしれませんが…

・スタッフにおこがましい態度がございましたこと、心よりお詫びいたします。  

・〇〇さんは取引先からおこがましい忠告を受けたと立腹している。

・自分で言うのもおこがましい限りですが、私は昨年度の最優秀賞をいただきました。  

・おこがましいとは存じますが申し上げたいことがあり、1分だけお時間いただけませんでしょうか。

■2:「馬鹿げている」「愚かである」という意味での例文

・同じミスを何度も繰り返すほどおこがましいことはない。

・この見積もり金額はおこがましいとしか考えられない。

ビジネスシーンで■2の意味として使用するのは、やはり正確には伝わりにくそうなので難しいかもしれませんね。


【 「おこがましい」は誰との会話で使える? 「使用上の注意」】

■誰との会話で?

通常は、取引先や上司など目上の人に対して使います。

部下や後輩など目下の相手に使うと、謙遜よりも嫌味と捉えられてしまうかもしれません。特にビジネスシーンでは、目下の相手には使用不可としたほうがいいでしょう。

■誰のことで?

基本的には自分のことをへりくだって言う際に使用します。他人のことを指す場合はネガティブな意味になるので注意が必要です。

■どんなシーンで?

話し言葉より書き言葉のほうが使いやすいので、取引先や上司に提案がある際にメールで使用してみては?

元来が古い言葉なので、会話で使用するのは古めかしさが際立ち、かしこまりすぎという印象を与えるかもしれません。ただし、スピーチや大勢の前での挨拶ならかしこまっていても不自然ではないので、「おこがましい」を使うチャンスかもしれませんね。


【 「おこがましい」の「類似語と例文」】

■「差し出がましい」

・差し出がましいとは存じますが

■「厚かましい」

・厚かましいお願いで恐縮ですが、ぜひともご検討くださいますようお願い申し上げます。

■「身の程知らず」

・身の程知らずと承知のうえで申し上げます。

■「不躾(ぶしつけ)」

・不躾とお気を悪くされるかもしれませんが、おうかがいしたいことがございます。

 

「おこがましいのですが…」というフレーズを、会話や発言のきっかけにする“クッション言葉”として使用することもできますが、頻繁に使用するのは嫌味にとらえられるかも。本当に謙虚な気持ちのときに限定して使用しましょう。

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日常会話では使う機会の少ない敬語や敬語表現こそ、正しい使い方を身に付けておきたいもの。本日はへりくだった表現である「おこがましい」について学びました。

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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館) :