洗練されたデザインで、近年とくに注目を集めているボルボ。そこには、ボディサイズや価格で上下関係を明確にするドイツ車とは異なる、明確な仕立ての哲学があった。今年日本導入予定のXC40、そして2017〜2018日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したXC60を中心に、北欧デザインの最新事情をモビリティジャーナリストの森口将之氏がリポートする。
プラットフォームの一新で洗練を増したボルボ・デザイン
ボルボのアピールポイントと言われたら、多くの人はまず安全性を思い出すだろう。しかし最近、それに並ぶ勢いで注目されているのがデザインだ。
ボルボは昔から北欧デザインを積極的に取り入れてきた。北欧は長く暗く厳しい冬に直面することからインテリアにこだわる。そんなライフスタイルを自動車に取り込み評価されてきたのだが、現行XC90以降の車種は洗練の度合いが飛躍的にアップしたような気がする。
何が理由なのか。生まれ故郷のスウェーデンで、2017〜2018日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したXC60のデザイナーに理由を聞くと、エクステリアでまず重要だったのはプラットフォームの一新だったという。
従来のボルボはフォード・グループに属していた頃に開発したプラットフォームを使っており、デザイン面の制約が大きかった。専用設計に移行したことで、フロントオーバーハングが短く前輪とキャビンが離れた、スポーティかつプレミアムなプロポーションが実現できたそうだ。
プロポーションは同じプラットフォームを用いたXC90、小型車用プラットフォームを使った新型車XC40と似ているが、それ以外は独自のデザインを織り込んでいることもエクステリアの特徴だろう。
キャラクターの違いをデザインで明確にする
ここでデザイナーが話題にしたのは靴だった。セダンやワゴンを含めた90シリーズは革靴、60シリーズはスウェード靴、40シリーズはスニーカーをイメージしているという。つまりキャラクターの違いを出している。
たしかにXC90と比べると、XC60はサイドウインドー後端のキックアップを明確にし、ボディサイド下側に抉りを入れ、フェンダーにプレスラインを追加するなど、車格にふさわしい躍動感を高めている。XC40はさらにメリハリをつけた処理にしている。
フロントマスクも差別化を図っている。新世代ボルボのアイデンティティであるヘッドランプ中央のトールハンマー(北欧神話の雷神が持つハンマー)をグリルまで伸ばし、トールハンマーの高さでグリルに折れ線を付けている。細部までこだわった造形だ。
リアでは伝統の縦長コンビランプが目につく。XC60ではランプの下端を水平に伸ばすことで、XC90に比べて幅の狭い車体に広がり感をプラスしている。一方XC40ではリアのライセンスプレートをバンパーに移動することで、クラシックな雰囲気を醸し出している。ルーフを塗り分けた2トーンカラーともども、カジュアルな遊び心が伝わってくる。
単純な上下関係には仕立てていない!
インテリアデザインも基本は統一している。インパネ中央の縦長ディスプレイ、運転席前の2つの丸型メーターなどだ。このうちディスプレイは音声操作も可能で、シンプルながら使いやすさに定評がある。それもそのはず、この部分は情報機器部門と共同で進めたそうで、スイッチを少なくしつつ操作のしやすさを追求したそうだ。
そのうえでXC60は、インパネ上側はXC90に似た落ち着いたラインながら、下は上下にメリハリをつけることでアクティブな雰囲気を出している。XC40は太いシルバーのラインを貫くことでスポーティかつクールに見せている。革靴・スウェード靴・スニーカーという違いがここにも反映していた。
ドアトリムは3車種とも、1本の線をひと筆書きのようにカーブさせることで一体感を出しているが、ラインの描き方は車種により違っていて、落ち着いた印象のXC90と比べるとXC60やXC40はここでもメリハリが効いている。加えてXC40はセンターコンソールも水平ではなく、アクセントをつけているという特徴もある。
ブランドとしての統一感を出しつつ、車種ごとのキャラクターに合わせた差別化も行う。ライバルのジャーマンプレミアムのような単純な上下関係に仕立てないところに、今のボルボ・デザインの奥深さがある。
■問い合わせ先
ボルボ・フリーダイヤル TEL 0120-55-8500
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