気がついたら年明け早々のピッティウォモという生活を、もう12年くらい続けていました。しかもほぼ皆勤賞。
周囲を見渡すと、日本人エディターというジャンルにおいてはメンズプレシャスが誇るMr.クラシコ・矢部克已大先生の次くらいの古株になっていたわけで、感慨もひとしおです。といっても超スーパー方向音痴なので、未だにフィレツェの街で迷子になってしまうのですが・・・
子供のころに想像した2018年ってもっと「超未来」だったような気がしますが、実際のところ男の装いはまだまだクラシック。僕が生きている間には、銀色の全身タイツみたいなのを着なくて済みそうです。
2018年秋〜2019年冬にかけてのピッティウォモの提案も、もちろん未来派ではなく、今季に引き続き「英国調」がキーワードでした。
来季の秋冬はズバリ「英国調」がキーワード!
しかし、シルエットはさらにリラックス傾向で、80年代後半〜90年代のムードが強まってきたような気がします。ガッチガチではなくエレガントな空気感のある、ロマンティックな英国スタイル・・・。デコラティブなスリーピーススタイルとかはちょっと苦手な僕も、これなら乗れそうです!
英国調の流れでヘビーウェイトのフランネルやツイードが多く見られた今季のピッティですが、それとは違うベクトルで化繊の提案も多く見られました。
それもあんまりスポーティすぎない、ラグジュアリーなもの。今まではナイロンやポリエステル系のウエアを着る時って、シャビーに見えないよう合わせる素材に気を使ったものですが、素材の進化は著しい。
ヘルノのダウンなんて、ジーンズを合わせるだけでリッチに見えますからね。また、各メーカーは近年のご時世を鑑みて「非ダウン系中綿」の開発にも勤しんでいる様子。10年後には「ダウン」が「ダウン」ではなくなっている可能性もありますよ。
グレーフランネルのパンツに合わせたいヘルノの新作アウター
ハイテク素材を使ったラインに注目
あと、今回やたらと目に付いたのがレザーのブルゾンや、ムートンを使ったアウターです。ただしこの手の高級素材って大きな落とし穴があるので、買うときには注意が必要。トレンドに乗ってルーズや超ピタピタなど、極端なシルエットのものを買ってしまうと、速攻でタンスの肥やしになってしまうのです。皆さんが80〜90年代に「一生もの」という煽り文句に釣られて買ったムートンやレザー、まだ残っていますか? 僕が「ろくでなしBLUES」に憧れて中学生のときに買った「ニチワ」のランチコートは、いったいどこに行ったのでしょうか・・・。
そんな恥ずかしい過去を振り返ってみると、シルエットがタイト〜ルーズフィットへ移行する転換期とも言える今こそ、ムートンの買い時のような気がします。僕が特に気になったのは、懐かしのルッフォ! かつてセラファンあたりと並んで、高級レザーウエアの代名詞的ブランドとして鳴らしたものです。何年か前にいったん経営難でクローズしたのですが、近年復活を遂げ、このピッティにも再び出店を果たしたのです。
いわゆるコートスタイルもいいけれど、一番シビれたのはモッズコート型のムートン! けっこうなお値段になりそうですが、これは日本に入ってくるならぜひ購入したいです。
近年では珍しく、見ごたえのあるラグジュアリーな提案が目に付いた今回のピッティ。多少高価でも「上質で長く着られるモノ」という男の装いの本質が、市場で受け入れられるとよいのですが。