装いの秩序をもう一度取り戻すべき転機にある、現代の紳士たち。その上で、改めて再評価されるべきキーワードこそが「クラシコイタリア」だ。それは1990年代に隆盛を極め、いつしか形骸化していった言葉かもしれないが、その奥深いものづくりや気高いスタイル哲学の本質に、当時の私たちはまだたどり着けていなかったのではないか?  

 幸いにも、現代の「クラシコイタリア」スーツの選択肢は多い。初めての方も久しぶりの方も、袖を通せばきっと、ため息が出るだろう。動きやすさと美しさ、伝統を継承しながら時代のエッセンスをも取り込む懐の深さを、今こそ堪能していただきたい。

チェーザレ アットリーニ(左)とダル クオーレ(右)

写真左/まるでシルクのようなタッチのスーパー180’sウールを使ったベージュの生地には、春らしい華やぎと軽快さが充満。こちらはそんな上等な生地と、チェーザレ アットリーニの丁寧なつくりが融合した、極めて完成度の高い一着だ。やや幅広のラペルやフラップのない両玉縁のポケットなど、ため息がでるほど美しい。スーツ¥560,000(伊勢丹新宿店〈チェーザレ アットリーニ〉)シャツ¥72,000・チーフ¥12,000(タイ ユア タイ 青山〈タイ ユア タイ〉) タイ¥16,000(ビームスF 新宿〈フランチェスコ マリーノ〉) 靴¥152,000(エドワード グリーン 銀座店) 時計¥2,625,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)
写真右/ナポリらしいハンドメイド感とモダンなシルエットを兼ね備えた、個性派サルトの既製スーツ。主張するステッチ、高いゴージ、太めのラペル、優雅にカーブしたフロントカットなど、その個性は健在。さらにパンツはかなり細く、ネイビー無地ながらどこかデザイナー的な美意識を漂わせている。スーツ¥450,000(バーニーズニューヨーク カスタマーセンター〈ダル クオーレ〉)シャツ¥23,000〈オリアン〉・チーフ¥9,000〈ルイジ ボレッリ〉/以上ビームスF 新宿 タイ¥16,000(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店〈ホリデー&ブラウン〉) 靴¥76,000(ヴァルカナイズ・ロンドン〈クロケット&ジョーンズ〉) 時計¥940,000(ソーウインド ジャパン〈ジラール・ペルゴ〉)

決して時代に媚びないブリオーニの「ローマンスタイル スーツ」

ホワイトカラーのシャツにボルドーのネクタイを合わせて、ストイックさと甘さを兼ね備えたコーディネート。スーツ¥675,000(ブリオーニ ジャパン)シャツ¥62,000・タイ¥28,000・チーフ¥9,600・サングラス¥88,000(ブリオーニ ジャパン) 時計¥835,000(ジャガー・ルクルト)

 現代の観点からいうと決して細身のシルエットとはいえないが、そのローマらしい優雅なシルエットこそがブリオーニの魅力。首から肩にかけてのなだらかなカーブや、パンツとの一体感、手縫いによる趣はまさに芸術だ。スーパー150’sのウールにシルクを15%混紡した生地も、無地グレーながら実に豊かな表情を描き出している。

スティレ ラティーノ(左)とルカ グラシア(右)

写真左/洗いをかけた厚手のコットンを使った、カジュアルな着こなしにもってこいのスーツ。サイドアジャスタ付きの1タックパンツという、今季のトレンド要素が盛り込まれている。そんなモダンなデザインながら、着心地はナポリ仕立ての本格派、という点がこちらのすごさ。さすがは名門アットリーニ家の長男によるブランドだ! スーツ¥220,000(ビームスF 新宿〈スティレ ラティーノ〉)シャツ¥33,000(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター〈ルイジ ボレッリ〉) タイ¥15,000(シップス 銀座店〈ステファノ ビジ〉) チーフ¥6,000(ストラスブルゴ〈ニッキー〉) 靴¥190,000(リングヂャケットマイスター 青山店〈サンクリスピン〉) 時計¥2,600,000(ジャガー・ルクルト)
写真右/ナポリで3代続くファクトリー、「サルトリア・グラシア」がはじめてつくった既製スーツ。コバのダブルステッチに代表される、ナポリスーツならではのよい意味で土着的なハンドクラフツ感を楽しめる一着だ。とても幅が広く、しかも長い打ち出しや、ワンプリーツなど、パンツのディテールにも見応えあり。この値段は安い! スーツ¥198,000(伊勢丹新宿店〈ルカ グラシア〉)シャツ¥24,000(ビームスF 新宿〈マリア サンタンジェロ〉) タイ¥15,000(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店〈ニッキー〉) チーフ¥7,000(ストラスブルゴ〈ニッキー〉) 靴¥140,000(トゥモローランド丸の内店〈バシュー〉) 時計¥800,000(ゼニス)

キートンのロングセラー、「KB」モデル

スーツ¥550,000(キートン 銀座店)シャツ¥56,000・タイ¥29,000・チーフ¥20,000(キートン 銀座店) 時計¥2,800,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)

 ナポリらしいやわらかな風合いと、端正さを兼ね備えた仕立てで、世界中のエグゼクティブから愛されるナポリの名門ファクトリー「キートン」。エクスクルーシブの超高番手ウールをすべて手縫いしながらも、ここまで美しく仕立てる技術には脱帽だ。美しいなで肩が魅力のロングセラー、「KB」モデル。

カルーゾ(左)とベルヴェスト(右)

写真左/近年急激にその実力と評価を高めている、パルマのファクトリーブランド。千鳥格子のウールを使ったプレーンな3つボタンスーツは、今やこの値段のイタリア製スーツでは考えられない総毛芯仕立て! 手縫いで仕上げたラペルのフラワーホールや大見返しによる仕立てなど、抜群の高級感を誇っている。スーツ¥134,000(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店〈カルーゾ〉)シャツ¥25,000〈エリコ フォルミコラ〉・チーフ¥10,000〈フラテッリ ルイージ〉/以上ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 タイ¥17,000(ストラスブルゴ〈ニッキー〉) 靴¥240,000(ジョン ロブ ジャパン) 時計¥980,000(ソーウインド ジャパン〈ジラール・ペルゴ〉)
写真右/北イタリアのパドヴァのファクトリーブランド「ベルヴェスト」。トレンドへの柔軟さを持ち味とするこちらが今季つくったのは、なんと1970年代のアーカイブから着想を得たモデル! 極太のピークドラペルや、4つボタンのダブルというデザインは迫力満点だ。ライトグレーにオレンジの縞が入った生地も、実に個性的である。スーツ¥298,000(八木通商〈ベルヴェスト〉) シャツ¥50,000(タイ ユア タイ 青山〈タイ ユア タイ〉) タイ¥18,000(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店〈フィオリオ〉) チーフ¥13,000(リングヂャケットマイスター 青山店〈ドレイクス〉) 靴¥230,000(ジョン ロブ ジャパン) 時計¥1,175,000(IWC)

フィレンツェ流の仕立てを見事に再現した「リべラーノ&リべラーノ」 のスーツ

スーツ¥430,000(ザ ソブリンハウス〈リべラーノ&リべラーノ〉)シャツ¥36,000・タイ¥18,000(ザ ソブリンハウス〈リべラーノ&リべラーノ〉) 時計¥3,590,000(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)

 今や世界的人気を誇るフィレンツェのテーラーによる、既製スーツ。やや大きめの肩、ラペルからフロントにかけての曲線的なカッティング、ダーツのない前身頃など、その美意識を見事に再現している。イタリアらしい玉虫色の生地「ソラーロ」との相性も抜群だ。

サルトリア チャルディ(左)とデ ペトリロ(右)

写真左/ナポリ伝統の技術が惜しみなく注ぎ込まれた、有名サルトリア「チャルディ」の既製スーツ。コンパクトな胸や高い位置で絞り込まれたウエストなど、ダブルブレストを若々しいムードに進化させている。生地はドーメル社が復刻した伝説のモヘア生地「トニック」。パンツのサイドアジャスタにいたるまで、色気あふれるスーツだ。スーツ¥480,000(伊勢丹新宿店〈サルトリア チャルディ〉)シャツ¥62,000(ストラスブルゴ〈フライ〉) 靴¥152,000(エドワード グリーン 銀座店) タイ¥30,000(マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン) チーフ¥4,000(フェアファクスコレクティブ〈フェアファクス〉) 時計¥2,850,000(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
写真右/ナポリの老舗サルトで修業したモデリスタ(パタンナー)による、新興ファクトリーがつくったスーツ。重厚に見えがちなバンカーストライプの高番手生地を、半毛芯仕立てによってうまく軽快に見せている。ナポリスーツならではのやわらかなムードと現代的なシルエットを融合させた、とてもバランスのよい一着だ。スーツ¥138,000(ストラスブルゴ〈デ ペトリロ〉)シャツ¥32,000(ストラスブルゴ〈バルバ〉) タイ¥28,000(タイ ユア タイ 青山〈タイ ユア タイ〉) チーフ¥12,000(トゥモローランド 丸の内店〈ブレック〉)靴¥115,000(リングヂャケットマイスター 青山店〈エンツォ ボナフェ〉) 時計¥1,925,000(ヴァシュロン・コンスタンタン)

 イタリア伝統の技術が惜しみなく注ぎ込まれた「クラシコイタリア」のスーツ、いかがだろう。美しく体に沿う快感を味合わずして、紳士の装いは語れない。

※価格はすべて税抜です。※2017年春号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
MEN'S Precious編集部 
BY :
MEN'S Precious2016年春号 新しき「クラシコイタリア」スーツ伝説より
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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クレジット :
撮影/熊澤 透(人物)唐澤光也(パイルドライバー/静物)構成/山下英介