俳優・鈴木亮平さん
衣装協力/ジョルジオ アルマーニ ジャパン
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鈴木亮平さん
俳優
(すずき・りょうへい)1983年、兵庫県出身。2006年に俳優デビュー。07年『椿三十郎』(東宝)で映画初出演。連続テレビ小説『花子とアン』(14年/NHK)でヒロインの夫を演じて話題となる。2015年はドラマ『天皇の料理』』(TBS)や映画『俺物語!!』(東宝)で注目され、大河ドラマ『西郷どん』(18年/NHK)、『テセウスの』(20年/TBS)、『レンアイ漫画』』(21年/CX)、『TOKYO MER〜走る緊急救命室』』(21年/TBS)など話題作に多数出演。映画『孤狼の血 LEVEL2』(21年/東映)では第45回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞はじめ多くの賞に輝く。2023年は映画『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(東宝)が4月28日(金)公開予定。

浩輔の気持ちがわからないときも、そのままに演じました」鈴木亮平さん

――インタビューVol.1では、映画の魅力や役づくりについてお聞きしました。悩みながら丁寧につくりあげた作品の試写をご覧になったときの印象はどのようなものでしたか。

“自分が演じた浩輔って、こういう表情をしているんだ”とか“このシーンではこんなことを考えているのかな”と、すごく新鮮に見ることができました。というのも、今回演技に関しては特にプランを立てずに撮影にのぞんでいたからなんです。監督がドキュメンタリー調の撮り方を求めていることは、初回リハーサルのときから感じられました。これはもう、何も計算せずに僕が浩輔としてその場にいたときに、周りはどのように反応するのか、それに対して浩輔はどう反応するのか、ということだけに集中してやっていこうと、構えずにカメラの前に立ちました。むしろ何かを狙ったり表現しようとするとOKが出ないんですよ、監督から(笑)。

たとえば、恋人である龍太(宮沢氷魚)のお母さんの妙子さん(阿川佐和子)から病気を告白されたシーンでは、「このとき、浩輔がどういう気持ちになっているのかがわからない」と監督に相談すると、「浩輔もわかっていないんです。だからそのままでいい。わかっていない感じでお願いします」と返ってくるんです。

――映像の質感にフィルムのような空気感があったり、カメラワークにライブ感を感じたりしましたが、それらもリアルを追求する試みからだったのですね。原作に込められた息苦しさや胸の痛みのようなものを映し出そうとしてドキュメンタリータッチを求めたという、監督からの言葉もありました。

それで、ちょっと面白いなと感じたのが、例えば、浩輔の妙子さんへの愛情って、すごく美しい愛の表現とも取れるじゃないですか。でも、同じことをエゴイスティックな観点で捉えてみると、浩輔はセクシュアリティを含めた自分のすべてを理解してはもらえないまま、母が逝ってしまった。ゲイである本当の自分は認めてもらえないままだったという、その1点の承認欲求を満たすために妙子さんに愛情を注ぎ込みたいと思った、というふうにも捉えられるじゃないですか。そう考えると愛とエゴというのは、本当に裏表なんですよね。

俳優・鈴木亮平さん
愛とエゴというのは、本当に裏表なんですよね。(俳優・鈴木亮平さん)

たとえば、自分の目の前で愛しい人が死んでしまうかもしれないとき。自分の命を捨ててでも相手を守りたい。それは自己犠牲の美しい愛とも捉えられるけれど、逆説的に見ると自分が何もせずに相手を死なせてしまったら、そのあとの自分の苦しみのほうが嫌なのかもしれない。そもそも、相手を助け“たい”と思う気持ちは「I want」ですからね。そこはエゴとも言えるんですよね。

――お聞きしていると『エゴイスト』というタイトルがいっそう深みをもって響いてきます。

何を「本当の愛」と呼べるのかはわかりません。全ての愛は身勝手な独りよがりのエゴにすぎないのかもしれない。でも、エゴが相手の幸せを願う方向に向かうということ自体が、人のもつ美徳なのかもしれないと思います。

「この映画を観たときに自分は何を感じるのか、自分自身の発見にもつながると思います」鈴木亮平さん

――さまざまなテーマが織り込まれている今作ですが、共演の宮沢さんや阿川さんとはどのように撮影を進められたのでしょうか。

撮影を始めたときから、今回はお芝居に関しては何かをつくっていくというスタンスは良しとされない現場であると解釈していたので、役者同士で話し合うことはなくて、氷魚くんとは撮影中、ほぼ作品とは関係ない話ばかりで盛り上がっていましたね(笑)。

役者同士で何かを特別に打ち合わせることもなかったですし、台本に書かれているセリフも、ほとんどその通りにはしゃべっていないんですよ。たとえば、初回のリハーサルは浩輔が龍太と一緒に妙子さんのところへ挨拶に行くシーンだったんです。映画では浩輔が挨拶しに来て、ご飯を食べるところから始まっていますけれど、リハーサルでは「その前をやります」と。現場で監督からは「妙子さんに頼まれて龍太が調味料を買いに出かけてしまいます。妙子さんと浩輔ふたりきりになったとき、どういう会話をしますか。はいっ(パチンと手を打つ)」と説明されていきなりスタートする感じなんですよ。

俳優・鈴木亮平さん
氷魚くんとは撮影中、ほぼ作品とは関係ない話ばかりで盛り上がっていましたね(笑)。(鈴木亮平さん)

――鈴木さんと阿川さんの会話のシーンは本当の雑談のようで、緊張と緩和の波が伝わってくるようでした。

台本には細かいことは何も書かれていなくて、監督が「じゃあ、こういうこと聞いてみてください」といきなり振ってきたりするんです。「妙子さんから“浩輔さん、職場でモテるでしょう?”とか“女の子いっぱいいるんじゃないの? まわりに”って言われたときに浩輔はどう反応しますか?」という感じで、常にその場で何かを試されるような感じなんですよね。役者は本当にその人物のことを理解しきって、なりきっていないとついていけないような撮影でした。

セリフを覚えていっても現場で変わってしまうし、変わったセリフをそのまま言ってもOKが出ない。何かしら少しハプニングめいたことが起きないとOKを出してもらえないんです(笑)。でも我々がちゃんと本番で対応できるように、監督はきちんと準備の時間をリハーサルなり準備期間でとってくださったので、みんなが同じ方向を向いて、良いものが作れたのだと思います。

――Vol.1でお話しされたように、セクシュアリティなどLGBTQ+にまつわる表現については専門の方から細かい指導を受けながら繊細につくりあげていき、対象的にそれ以外のシーンはドキュンメントな手法で展開されたという、コントラストのある撮影現場だったんですね。

そうですね。松永監督が上手いなと思うのは我々役者の演技を最終的にソリッドに削ぎ落としてくれるところですね。1回終わったら「いいですね、すばらしいです!」と絶対にほめてくれるんですけれど、何回もそれをくり返して、「最後にちょっとだけ、この話が終わったらすぐにこっちの話題に移るという感じで、ちょっと短くしてみましょう」という感じの指示が出されます。俳優が自由に即興で演技をすると、どうしても長くなったり、余分な要素も多くなってしまうので、そこを最後に削いでくれるんです。ただし、それでOKが出ることもありますが、やっぱり出ない場合もあり(笑)。“嘘をつかなくていい”という意味では、役者にとって非常にやりがいのある理想的な現場でした。

俳優・鈴木亮平さん
。“嘘をつかなくていい”という意味では、役者にとって非常にやりがいのある理想的な現場でした。(鈴木亮平さん)

――観てくださる方に、この作品を通して伝えたいメッセージはどのようなものになるでしょうか。

人によって、刺さるポイントがすごく異なる作品ではないかと思っています。試写の感想を聞いても、龍太の母親との関係性がすごく刺さると言ってくださる方もいれば、浩輔と龍太の関係性が刺さったという方もいますし、交際していく中でのふたりの経済力や社会的格差の描き方がものすごく刺さったという声もありました。この映画を観たときに、自分はどこに何を感じるんだろうというのを、それこそ高山さんのように自己観察しながら自分自身に対する新たな発見をしてもらうこともできるんじゃないかなと思います。

――確かに、複雑にからみあう多様なテーマが、違和感なく静かにとけあっているような印象がありました。

恋愛映画のように見えるかもしれませんが、実はそうでもなかったりしますよね、テーマという意味では。


鈴木亮平さんへのインタビューVol.03は作品の公開日である2月10日公開予定! 作品と合わせてぜひチェックください!

■― 愛は身勝手。― 映画『エゴイスト』2月10日ロードショー!

■あらすじ
14 歳で⺟を失い、⽥舎町でゲイである⾃分を隠して鬱屈とした思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仕事が終われば気の置けない友人たちと気ままな時間を過ごしている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである⺟を⽀えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。自分を守る鎧のようにハイブランドの服に身を包み、気ままながらもどこか虚勢を張って生きている浩輔と、最初は戸惑いながらも浩輔から差し伸べられた救いの手をとった、自分の美しさに無頓着で健気な龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の⺟も交えながら満ち⾜りた時間を重ねていく。亡き⺟への想いを抱えた浩輔にとって、⺟に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし彼らの前に突然、思いもよらない運命が押し寄せる――。

■原作:高山真「エゴイスト」(小学館刊)
監督・脚本:松永大司
脚本:狗飼恭子
音楽:世武裕子
出演:鈴木亮平/宮沢氷魚/中村優子/和田庵/ドリアン・ロロブリジーダ/柄本明/阿川佐和子 ほか
配給:東京テアトル
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映画『エゴイスト』公式サイト

PHOTO :
高木亜麗
STYLIST :
臼井崇(THYMON Inc.)
HAIR MAKE :
宮田靖士(THYMON Inc.)
WRITING :
谷畑まゆみ