雨宮塔子さん「52歳、これからの覚悟」──坂東眞理子さんとの対談を終えて
坂東さんとの対談で、これまでの半生を振り返りながら、プレシャス世代への金言をいただいた雨宮さん。90分にも及ぶ、いわばとても貴重な特別講義を終えて思うことは? 改めて今、確信した自身の「覚悟」を語っていただきました(※これまでの対談は、記事末にリンクあり)。
「“覚悟しなくちゃいけない” とご自分に言い聞かせるつもりで、『女性の覚悟』を書かれたと知り、驚いた」
東大卒のキャリア官僚として女性政策に携わり、その立案をリード。この日本において、「働く女性」の未来を切り開き続けていらっしゃる坂東先生。イメージどおり、凛とした佇まいにはごく自然に知性が漂い、まさにご著書のタイトル『女性の品格』を体現されている方だった。
これほどのキャリアを誇る女性なのに、お話しさせていただくなかで、優しくこちら側に降りてきてくださる包容力も。『女性の覚悟』も、“覚悟しなくちゃいけない” とご自分に言い聞かせるつもりで書かれたとおっしゃっていた。
坂東先生でさえ今もなお、さまざまな覚悟をされようとしている。「覚悟」とはエレガントに生き抜いていくための、しなやかな鎧(よろい)なのかもしれない。
「今は子供たちの帰ってくる場所である自宅(写真右)だけれど、ふたりの子供たち(写真左)の未来の形によっては、そこがパリである必要がなくなることも。自分をここに縛りつける理由もないのかもしれない」(雨宮さん)
「渡仏、離婚とさまざまな覚悟をして今にいたる? いや、思えばすべて覚悟もせず、冒険を続けてきただけのように思う」
30代目前に退職し、渡仏。パリで結婚、出産し、そして離婚を経験した。ふたりの子供たちと暮らしていた40代半ばに報道番組のキャスターのオファーをいただき、子供たちを残し日本へ。現在は再びパリを拠点にしている。
坂東先生は私たち50代こそ新しい場所へと「越境」するべきとおっしゃっていたけれど、この点に関しては私は若い頃からフットワークが軽かったようだ。
今回の企画も、私がさまざまな覚悟を重ねてきたのでは? ということでお声がけいただいたのだが、振り返ってみるとそれは「覚悟」というレベルではなく、ただ冒険を続けてきただけのように思う。或いは、必要に迫られての選択の結果。それが今、私が立っている現在地だ。
「今、手にしている有形なものはすべて手放してもかまわない。私が重ねてきた冒険の落とし前をつけるのは、私しかいない」
そんな私でも、少しは大人になったのか、知らないうちに諸々の覚悟を決めていたようだ。愛する家族とのこれから、仕事への向き合い方やスタイル。坂東先生とお話させていただくなかで、私の現在の「覚悟」をひとつずつ再確認していった。
例えば思いきって購入し、現在暮らしている自宅。ここを維持するためにパリにとどまるのではなく、その時々で柔軟でありたいと思う。
そう、今、手にしている有形なものは、すべて手放してもかまわないという「覚悟」。私が重ねてきた冒険の尻拭いを子供たちや他の人にさせるわけにはいかないから。でもきっとなんとかなる。いや、なんとかさせる! 坂東先生にいただいた金言とは違い、根拠などないのだけれど。
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- 洞澤佐智子(CROSS OVER)
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