坂東眞理子さん×雨宮塔子さん “この先” を生き抜く「覚悟」の金言
320万部を超えるベストセラーとなった『女性の品格』から16年。その著者、坂東眞理子さんが、50歳からの人生に不安や迷いをもつ女性たちへのエールとして、2022年に上梓した『女性の覚悟』が話題を呼んでいます。
長寿社会の日本、老後が長くなった現代において大切なのは、私たち女性がさまざまな「覚悟」をもち、強くしなやかに生き抜くこと──キャリア女性の大先輩である坂東さんがしたためたこのエッセイに深い感銘を受けたという雨宮塔子さんが、「より具体的なお話をうかがいたい」と、この対談が実現! プレシャス世代代表として、50歳からの人生を明るく照らし出す金言の数々を授けていただきました。
人生100年時代。折り返し地点を過ぎたばかりの50歳からをエレガントに生き抜くためのマインドを教えます(対談第1弾は記事末にリンクあり)。
「覚悟」の金言5:自分を甘やかす!
坂東:年賀状なんかも、私くらいの歳になると、「もう歳をとりましたから、これで失礼します」っていうようなご連絡を結構いただくようになるんですよ。
雨宮:「年賀状仕舞い」、近年聞くようになりましたね。
坂東:きっとね、元旦までに間に合うように、年末の忙しい時期に書かなきゃいけないと思うから負担になるんで。思い出したときに書けばいいんだ、1月20日になってもいいんだと。
雨宮:私なんて、例年「寒中見舞い」でしたもの(笑)。
坂東:それでいいのだ(笑)!それでいいのですよ。
雨宮:いただいたらやはり必ずお返事したいと思うのですが、それは会社員時代にラジオ番組をご一緒させていただいていた永六輔さんの影響かもしれません。毎週リスナーの方たちから多くのお葉書が届くのですが、永さんはすべてに直筆でお返事を書かれていたんです。
坂東:そんな方とお仕事をご一緒させていただいた経験は、雨宮さんにとってかけがえのない無形資産になりましたね。でも永さんはきっと、すべてのお便りに返事を書こうと思ってらしたと思うけど、毎日「今日中に」とは思っていらっしゃらなかったと思うの。最初に自分で設定するハードルを高くしすぎないことは、何事においても案外大切なんです。
雨宮:ときには自分を甘やかすことも必要でしょうか?
坂東:もちろん、最後までやるって覚悟はしておかなければいけないけれど、やれるときにやる程度でもいいのではないかと、私は思います。
「覚悟」の金言6:家族とは人間(じんかん)距離をとる!
雨宮:人間関係といえば、いちばん近い「家族」に対するストレスを抱えている─―具体的にいうと、テレワークが普及したり、或いは定年退職を迎えたりして、夫の在宅時間が長くなって苦痛を感じている女性も多いようです。子供が巣立って夫婦ふたりきりの生活になったら、リアルに離婚したくなったとか。
坂東:よくわかります(笑)。私はね、そんなお話を聞くと、「ぜひ人間距離をとってください!」と言っています。人の間の距離ね! やっぱりあんまりいつもいつも一緒にいるとね、ロクなことないですから(笑)。
雨宮:それは夫以外の家族──子供や親などに対しても同じでしょうか?
坂東:そう、身近な存在ほど、人間距離がとれていないとぶつかってしまう。それもつまらないことでね。夫や子供、親に精神的に依存することから卒業しなくてはね。先ほどのお話に戻ってしまうけれど、これからは、視点を広げる時期なんじゃないかと思うんですね。
雨宮:例えば社会問題に目を向けたりでしょうか?
坂東:そう、私たちの周りには本当にいろいろな社会課題があるわけです。例えば環境問題。なるべくゴミを減らす活動だってやりだしたらキリがないですよね? 或いは貧困に苦しむシングルマザー、子供、若者、孤立した高齢者の方たちを助ける、サポートすること。私たちがやれること、やるべきことっていうのは、山ほどあります。自分の家庭やテリトリーに縮こまっている場合じゃないんですよ。
「覚悟」の金言7:「見た目」は確かな資産
雨宮:『女性の覚悟』のなかで先生は綺麗事だけではなく、「見た目も重要な無形資産」と書かれていて、ストレートに心に響きました(笑)。
坂東:50代の女性が「20代に見られたい!」というのは、それこそハードルが高すぎて諦めるべきです(笑)。でも、例えば洋服でも「このほうがちょっとスタイルよく見える」とか、5歳ほど若く見られるようにちょっと心を配るとか、そういった「ちょっと」を諦めないことが大切だと思います。
雨宮:先生は今日もちゃんとヒールの高いパンプスを颯爽と履いていらして! すみません、私なんてコンバース履いてきてしまい、どうしましょう。
坂東:いや、通勤はスニーカーなんですよ。大学へ来てから履き替えるの。そういえばコロナ禍になってメンズコスメがとても売れだしたらしいですよね。それまではロクに鏡も見なかった男性たちが、オンライン会議が増えて否が応でも自分の顔を直視することになって(笑)。
雨宮:私もテレビに出演して不意に抜かれていたのを、オンエアで見てびっくりしますが、それと一緒ですね(笑)。
坂東:年齢を重ねるにつれ、表情はとっても大切になっていくから。特に口角は上げるように意識して。あとは姿勢ね! 例えば求人でも「50歳以下」って書いてあったとしてもね、あれは「あんまりヨボヨボの人は採りたくないよ」っていう表明にすぎなかったりするもの。いきいきした人なら結構、採用してもらえることもあるんですよ。
「覚悟」の金言8:根拠ある脳天気になる!
雨宮:こうして先生とお話しさせていただいて、いろいろな覚悟を新たにしましたが、次にやってくるであろう試練、親との別れや介護について、少しお話をうかがってもいいでしょうか。
坂東:私自身は、結果的には母は最期まで家にいて、ほとんどいわゆる介護の負担なしに見送ることができたんです。でも本当は、母が80代半ばあたりの頃から、「もし母が倒れたら、私は仕事と介護を両立できるんだろうか」ってハラハラしていました。ちゃんとやれるという自信がなかったから。
雨宮:先生が自信がなかったのはなぜですか?
坂東:有料老人ホームというのは、自分には手が届かないほど高いんじゃないかと思っていたの。それから、母が納得して入所してくれるかどうかわからなかった。いろいろなことを心配するだけで、ちゃんと調べたり対応策をとってなかったんです。
雨宮:でも、たいへんお忙しくていらっしゃったでしょうし。
坂東:忙しいからというのは言い訳で、調べようと思えばいくらでも調べられるわけ。やっぱりちゃんと本気になって、「もし倒れたら施設に入ってもらうんだ、その場合にはこうするんだ」っていう覚悟をするべきだったのに。今となっては反省することばかり。
雨宮:漠然と不安がっていないで、必要な情報は得て、具体的なプランを立てておくべき、ということですね。
坂東:でもね、出産や子育てと同じで、「私にできるんだろうか」といろいろなことが不安だったとしても、その事態に直面する前のほうが心配で、実際産まれたらやるよりほかないのでやれるんですよね。何事においても「案ずるより産むがやすし」。プレシャス世代の方には、「楽観的」になる覚悟もぜひしていただきたいですね。
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